美食礼賛だけではない。『美味しんぼ』で食の安全性を学ぶ
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美食礼賛だけではない。『美味しんぼ』で食の安全性を学ぶ

©雁屋 哲・花咲アキラ/小学館・週刊ビッグコミックスピリッツ連載中

1983年、青年コミック誌『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)で連載がスタートした『美味しんぼ』(作/雁屋哲 画/花咲アキラ)。長期休載を挟むことはあったものの、現在まで30年間も続いている大作で、日本のグルメ漫画を代表する作品と言っても過言ではないでしょう。

物語の舞台は東西新聞社文化部。画家で陶芸家、そして稀代の美食家である海原雄山の息子であるグータラ社員・山岡士郎と優れた味覚を持つ新入社員・栗田ゆう子のふたりを中心に、食を題材にした様々なストーリーが展開されます。バブル景気で世の中が高揚していた時代から話題になっていたため、高級レストランや贅沢な食材などに関するうんちくが詰まっているイメージを持たれがちですが、実はそういった金満主義を否定。正しい食の有り方について発信してきた作品なのです。

©雁屋 哲・花咲アキラ/小学館・週刊ビッグコミックスピリッツ連載中

例えば第1巻の第2話「味で勝負!!」では、食の評論家たちが絶賛するフォワグラに対して、山岡は「もっとうまいものを食わせてやる」と言い放ちます。そして持参したのは鮟鱇の肝。それは自ら漁船に乗り込み、釣ったばかりの鮟鱇を船上でさばき酒蒸しした、いわゆる“アンキモ”。最初は嘲笑していた食通たちですが、その味わいの鮮烈さ、香りの豊かさにやがて言葉を失っていきます。そこで山岡は「深海の自然の中で育った鮟鱇の肝と、人間の小賢しい知恵で作った病的な肝臓とどちらがうまいのか?」と問いかけるのです。

©雁屋 哲・花咲アキラ/小学館・週刊ビッグコミックスピリッツ連載中

こうした食の本質を描く姿勢は一貫され、食の安全性について言及するテーマも多くなり、2008年春に発刊された第101巻は、ずばり「食の安全」というタイトルで、現代の食の危険性、それを改善するために努力を重ねている人々の姿が描かれています。

冒頭で中国野菜の残留農薬にも触れますが、そこには驚くべきデータが開示されています。(2002年の「北京週報」の記事には)世界の農民のひとり当たりの耕地面積の平均が0.25haに対して、中国のそれは0.1haであるという事実。ちなみに北海道を除く日本は、0.5ha以上と記されています。広い土地があるゆえ労働生産性が高く、安価な野菜を提供できると思ってきた人がほとんどではないでしょうか?ちなみに、筆者も恥ずかしながら、そのひとり。日本を含む世界が中国の野菜に求めたのは安さ。そしてそれに応えるためには大量の農薬を用い、土地の生産性を高めなければならない現実があったわけです。

©雁屋 哲・花咲アキラ/小学館・週刊ビッグコミックスピリッツ連載中

そして話は、国内で有機農法などに取り組む人たちの活動の報告へと展開していきます。有機を実践することで大地が蘇る。茶畑では、害虫と呼ばれている虫が、病気になってしまったお茶の木の葉をかじることで、その木の命を助けているケースなども紹介。人と自然の共生の大切さを訴えます。さらに例えばペットボトルのお茶を常用し、自ら茶を入れる機会が減ることで、茶道が衰退してしまうことまでも…食に利便性を求めていくことで、日本の大切な文化が失われていくことを憂いているのです。

ストーリーの中で何度も繰り返されているのは、危険な現状をもたらしたのは、「安い」「味が濃い」「見た目がきれい」といった消費者の欲望であるということ。つまり、問題のある食べ物を口にしているのは、消費者がその食べ物を望んできたからに他なりません。自分のカラダによくないものが、世界、いや地球にイイわけはありません。もっと意識を高く持って、食と接していきたいもの。このコミックはその一助となるのではないでしょうか。

とがみ淳志

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