歌舞伎を楽しむならここも見て! 歌舞伎の美しい道具たち
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歌舞伎を楽しむならここも見て! 歌舞伎の美しい道具たち

4月に新しい歌舞伎座がオープンしたり、市川海老蔵さんのブログの更新頻度が話題になったりと、最近何かと話題の歌舞伎。皆さん、歌舞伎を観たことはありますか? 観たことがある人もない人も、次に見る時にはぜひ着目していただきたいものがあります。それは、歌舞伎に使われる道具類。

 

道具類に注目していただきたい理由は、2つあります。1つ目の理由は、歌舞伎の道具類にはそれぞれ非常に細かい決まり事があり、それを知るとさらに歌舞伎が楽しめること。2つ目の理由は、歌舞伎の道具は大道具や小道具、衣裳やかつらまで、手抜きのないこだわりのある道具が使われていることです。舞台で輝く俳優の演技を下支えしているものが道具だと言っても過言ではないほど、徹底した美意識が道具類にも宿っているのです。

「道具に注目するとさらに歌舞伎が楽しめる」ということと、道具の「決まり事」や道具に見いだせる「美意識」を教えてくださったのは、フリーライターの田村民子さん。歌舞伎や能楽の職人の仕事や道具に魅せられて、歌舞伎などの伝統芸能で使う道具類を未来に継承する活動を行う「伝統芸能の道具ラボ」を主宰しています。

繊細な心配りで作られている道具

例えば、歌舞伎のかつらは、同じ俳優が同じ役を演じる場合でも作り置きをせず、公演ごとに新たに作ります。その理由は、頭のサイズが俳優の体重の増減などによって微妙に変わっていくから。約一ヶ月の興行期間中に俳優が最高の演技をできるよう、頭にぴったり合わったかつらを毎回準備しています。また、サイズの問題だけではなく、他の俳優との兼ね合いで微妙に形を調整するなど舞台全体のバランスを考えて、様々な配慮をもって作られています。このように、かつらひとつとってみても、俳優が最高の状態で観客の前に立てるように徹底した美意識をもって整えられているのです。

 

女方の髪飾りに注目して「決まり事」と「美意識」を感じよう!

歌舞伎の道具類の「決まり事」と「美意識」を感じるための方法として今回提案したいのは、女方の髪飾りに注目すること。歌舞伎の世界では、役柄によって「お姫様は、だいたいこういう着物でこんな髪型」というように衣裳や髪型に決まりがあってパターン化されています。女方の髪飾りも同様。役柄によって特徴的なものを使用しています。そして、その髪飾りからもしっかりと歌舞伎の美意識を感じることができます。

細工が美しい「花かんざし」

1.お姫様のかんざし=花かんざし

お姫様の定番のかんざしは、この「花かんざし」と呼ばれるもの。遠くからでもティアラのようにかつらに乗っているのが見えるので、舞台にこれを付けて出てきた俳優がいたら、その人はお姫様だとぱっとわかります。

花かんざしをよく見ると花の隙間に蝶が飛んでいます。しかも、この蝶には小さなバネが付けられていて、俳優が動くとわずかに揺れるのです。客席からはほとんど見えない部分にまでこだわっていることがわかる道具です。

花魁のかつら。ピンクと水色のふわふわした布が鹿の子

2. 花魁や町娘のリボン=鹿の子

かつらにフワッと柔らかそうなリボン状の布が付けられていることがあります。このリボン状の布は鹿の子というもの。鹿の子は花魁や町娘のかつらに付けられます。花魁は鹿の子だけでなく非常にたくさんのかんざしを付けているので、町娘とは見分けがつきます。

かつらに使う鹿の子は非常に軽いものでなければなりません。絞り染めの高度な技術が必要な大変貴重な布で、一時期製作ルートが途絶えていましたが、田村さんの働きかけにより、床山(かつらを結う職人)と京都の織り職人の協力で復元されました。歌舞伎に関わる人たちは小さなパーツも疎かにせず、徹底して伝統を守ろうとしているのです。

ちなみに紫色のリボンは、「病鉢巻(やまいはちまき)」と呼ばれるもので、その役が病気であることを表しています。

赤い鹿の子の上に乗せられているのが「すすきのかんざし」

3.田舎娘定番のかんざし=すすきのかんざし

銀色の一輪挿しのようなかんざしがかつらについていたら、その人は田舎娘です。田舎娘の場合、緑色の着物を着ていることも多いので、緑の着物を着ている人が登場したら、かんざしに注目してみてください。

このすすきのかんざし、植物のススキとは形は違い、タンポポのような形をしています。非常に細かくできており、花弁の一枚一枚が丁寧に作られています。こういった細部へのこだわり方は、観客に向けたものというよりも、役を演じる俳優に向けたものであり、俳優の演技を鼓舞する効果があるのかもしれません。

陰の存在であろうとする裏方や職人

女方の髪飾りだけを見ても徹底的にこだわっていることがわかるのですが、裏方や職人は、たとえ自分たちの仕事が注目したり誉められたりしても「俳優が映えなかったら意味がない」と語るそうです。裏方や職人は常に陰の存在であろうとしているのです。

しかし現在、裏方や職人が「陰の存在」に徹するが故に存在をあまり意識されることがなく、そのために継承者問題に悩まされたり、道具類の製作ルートが途絶えてしまいそうになったりしています。しかし、歌舞伎が今のまま高い芸術性を保ち続けるためには、俳優の輝きを支える裏方や職人、道具類の存在は欠かせません。

みなさんもこれから歌舞伎を見る時は今よりも少しだけ裏方や職人、道具類に注目し、それが俳優の輝きの下支えするものだと意識して歌舞伎を観劇してみてはいかがでしょうか。

 

取材協力、写真提供=伝統芸能の道具ラボ 田村民子さん

FelixSayaka

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