世界での活躍を夢見て日本文化へ原点回帰
大谷: 先ほど展覧会のご紹介の中で、江戸時代のアヴァンギャルドなファッションとして、学生時代から今日まで遊女の研究をされているというお話が出ました。そこに注目された理由というものはあるんでしょうか。
舘鼻: 高校生の頃に、世界で活躍するようなファッションデザイナーになりたいと思ったんです。それでヨーロッパへの留学を夢見ていたんですけれど、考えを巡らせているうちに、自分の武器になるのは、自国の文化を学ぶことなんじゃないかと気づいたんです。
そこから日本の伝統的なファッション、つまり着物に興味を持ちました。着物についてしっかり学べるところはどこだろうと調べた結果、東京藝術大学の染織(工芸科)に行こうと思ったんです。
大谷: そうやってご自身の進路につながって行ったんですね。
舘鼻: はい、だから僕はファッションデザイナーになるために、デザインの勉強をしたわけではないんです。領域に区切りを設けるのではなく、未来を見据えて「いま自分がどういうことをしていくべきなのか」を考えて進んでいく、今のような活動スタイルが自分には合っているんだろうな、と思います。
大谷: 確かに、パリに留学してフランスのファッションをただ学ぶだけでは、そこに並ぶことはできても、それを越えることは難しいですね。
舘鼻: そうですね。自分にしかできないこと、日本人がやるべき新しいものづくりが何なのかを考えたとき、日本にもともとあるアイデンティティー、江戸時代のファッションの分野に於ける前衛的な要素を探っていった結果、花魁(おいらん)というテーマに行き着きました。