奈良元林院の雛菊さんに聞く、奈良の風土と地唄舞
「地唄舞」の伝統の担い手が東京にお越しになった貴重な機会、終演後の雛菊さんにお話をうかがいました。
−−雛菊さんはこれまで海外も含め、さまざまな場所で「地唄舞」を披露されてきたそうですが、今回、観世能楽堂の能舞台で舞われた感想をうかがえますでしょうか。
雛菊: 伝統と格式がありながらも新しく、進取の気性を感じる観世能楽堂で舞うことはとても新鮮で光栄でした。どの舞台で舞おうとも変わらない「雛菊の地唄舞」を披露することを胸に、いい緊張感をもって舞台に臨めました。
−− 奈良元林院の地唄舞の特徴を教えてください。
雛菊: 華美な表現を排し、抑制された動きで繊細な心理描写をするのが上方舞の特徴ですが、特に奈良元林院の舞は「自然態」を体現しようとする心のありようが根底にあるように思います。
−− その「自然態」の体現は、奈良の風土や歴史に由来するものなのでしょうか?
雛菊: 奈良は四季折々どの季節をとっても、いにしえからの風土が護られている日本のまほろばとしての魅力を存分に感じることができます。京都や東京とは違う奈良独特の地唄舞、「雛菊の地唄舞」はこうした風土に根ざしていると感じます。
−−奈良の長い歴史に立脚した「地唄舞」の伝統を受け継ぐ雛菊さんにとって、「私によくて、世界にイイ。」ことを教えて下さい。
雛菊: 「自然態」であること。
舞の表現・動作は、すべて日常の中から様式化されたものであり、その所作はごく自然で違和感なく動き出せるものだと理解できるようになって参りました。私なりに間違いのない表現ができる、そんな作品を積み上げながら前進してきた道が今日の舞台にもつながっています。自分のやるべきことを「自然態」でやり続けていくことが世界をよりよい場所に変えるのでないでしょうか。
−− 本日はありがとうございました。