人毛でも化繊でもないサステナブルな新素材。アデランスとスパイバーが新しい選択肢を提案
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人毛でも化繊でもないサステナブルな新素材。アデランスとスパイバーが新しい選択肢を提案

Spiberはゴールドウインと共同で、高機能スポーツウエアMOON PARKA(ムーンパーカー)の商品化も進行中。さらに、アパレル用の繊維素材から自動車用のドアパネルなども開発中だそう。合成タンパク質は、いまや世界中から注目されている基幹素材なのです。 Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

1968年の創業以来、頭髪に悩む人たちに寄り添ってきた企業「株式会社Aderans(アデランス)」と、次世代の基幹素材の開発を手掛けるスタートアップ企業「Spiber株式会社(スパイバー)」。そんな異業種同志がタッグを組み、新たな取り組みを始めました。めざすのは、多くの人々を幸せにする持続可能な社会。限りある資源に変わる、新しい素材の研究開発についてリポートします。

現在、鶴岡市の本社に発酵パイロットプラントを持つSpiber。今後2021年の稼働を目指し、タイ北部に世界初の人工合成タンパク質の量産プラントを建設予定。 Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

着目したのはクモの糸とタンパク質

Spiberは、次世代の基幹材料として期待されているタンパク質素材の産業化を目指し、2007年に設立されたスタートアップ企業。その始まりは、昆虫のクモの糸を人工合成するという研究からでした。

植物資源をベースに発酵プロセスで生産されるこの構造タンパク質は、ナイロンやポリエステルなどの化学繊維のように主な原料を石油に頼ることなく、繊維や樹脂など多種多様な素材への加工が可能なため、今後様々な産業分野での展開が期待されています。

そもそも、タンパク質とは20 種類のアミノ酸が鎖状に繋がった生体高分子であり、生命体を構成するもっとも重要な材料のひとつ。ほぼ無限に存在するアミノ酸の組み合わせパターンから様々な機能や特性を持ったタンパク質が進化の過程で生み出され、複雑で多様な生命システムを支えています。

タンパク質には酵素や抗体のように生理的な役割を果たすものと、細胞骨格やクモの糸のように構造的な役割を果たすものがあり、後者は一般的に「構造タンパク質」と呼ばれています。毛や爪などを構成するケラチンや、骨、皮膚などを構成するコラーゲンも構造タンパク質のひとつです。

Spiber が独自に開発を行う構造タンパク質は、ほぼ無限の組み合わせの中から目的に応じてデザイン・選抜され、微生物による発酵プロセスで生産されます。つまり、この独自の技術によって、多種多様な特性や形態の材料を設計することが可能となるのです。

アデランスグループは1968年の創業以来、「世界中の人々を笑顔にする」という経営理念のもと「最高の商品」「最高の技術と知識」「心からのおもてなし」の提供につとめているトータルヘアソリューション事業のリーディングカンパニー。(左)アデランスの津村社長(右)Spiberの関山代表。 Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

「人々の幸せに貢献」そんな両社の想いが一致

アデランスでは、人毛を使用したウィッグも制作していますが、より多くの人に活用してもらうべく、持続可能な毛髪素材の探求を続けていました。しかし本物の毛髪に近い繊維といっても、それはナイロンやポリエステル。もちろんその原料は石油です。今後100年を見すえ、枯渇資源に依存しない新たな選択肢を模索していました。

そこで、人工のクモの糸の開発で知られるSpiberに共働開発をオファー。「構造タンパク質素材の活用」という点で気持ちを一つにしたとともに、人の幸せ、喜びに貢献したいと願うお互いの姿勢にも強く共感し、今回の共同研究開発がスタートしました。共同研究開発では、Spiberが持つ構造タンパク質繊維技術と、アデランスが長年培ってきた総合毛髪開発力を組み合わせることで、新たな毛髪素材の創出に向けての研究が進められています。

人工毛髪の研究開発から生産まで一貫して行っていたアデランス。「じつは我々も10年以上前からタンパク質を原料にしたウィッグ素材の開発に取り組んできましたが、どうしても強度をクリアできなかった。そこでSpiberにオファーさせていただき、共同開発を進めることに」とアデランスの津村社長。 Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

「起業したばかりのころ、祖父と母が相次いで癌になり、母は抗癌剤治療で髪の毛が抜けて苦しみました。アデランスの津村社長からオファーを受けたときに、自分たちにもヘアドネーションのように何かできることがあるならと快諾しました」とSpiberの関山代表。 Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

現在、Spiberでは、独自の技術を用いて毛髪としての特性を満たすタンパク質を遺伝子レベルで設計し、微生物を用いた発酵プロセスにより原料となる構造タンパク質を取得。さらに、当該構造タンパク質を毛髪素材に最適な形状や物性となるように加工するための新たな繊維化技術の開発、そして製造条件の検討を進めています。

一方、アデランスでは、これまでの毛髪開発の知見を基に、得られた構造タンパク質繊維に対して毛髪のような風合いや特徴を付与するための加工や染色、カール付けなどを行い、製品としての評価を進めています。

このように、様々な研究が進行中ですが、今後も両社の技術と知見をさらに集結し、2年後の商品化を目指しているそうです。

記者 小田 亮子

神奈川県出身。求人広告、結婚情報誌などの制作ディレクターを経てフリーランスに。現在おもにブライダル関連のレポートを「ゼクシィ」「ゼクシィPremier」にてディレクション。「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」ほか、エステティック、化粧品、ジュエリーなどの記事をライティング。三人姉妹の真ん中に育ち、女子高・女子大卒。趣味は愛猫(雌)との女子会。

ーーBackstage from “ethica”ーー

動物愛護やエシカルな視点から、あえて合成皮革やフェイクファーといったアイテムを、ファッションに積極的に取り入れている女性は多いかと思います。また、ライフスタイルによって食事に人工肉を選ぶ人も増えています。こういった風潮からも、今後、合成タンパク質の必要性は増していくのではないでしょうか。これからの時代が求めるサステナブルな新素材に期待が高まります。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

小田 亮子

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