明日のリーダー育成を紐解く鍵(米倉誠一郎教授)【副編集長対談・後編】
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
明日のリーダー育成を紐解く鍵(米倉誠一郎教授)【副編集長対談・後編】

前編に続き、イノベーションを作る人材が育つために社会や教育がどうあるべきなのか。講演後に米倉教授からethica副編集長・萱島がお話を伺いました。

学校って何のために行くのだろう?

米倉先生: 日本が良かったのは、どんな子でも公立学校にやっておけばなんとかなるさというのを100年くらいかけて作ってきたこと。日本の教育のいいところは公立のクオリティの高さだった。それがこの2~30年で崩れてしまったことが問題でしょう。そこはイノベーションしないといけない。麹町中学の工藤校長はこれまでの常識にとらわれない改革を進められているし、同様にさまざまなチャレンジをしている方もいる。

学校って何のために行くのだろうという問いに対して、ハーバード大学のクリステンセンという研究者は、彼は学校は何のためにあるかというと、「一つは学校という安全な場所で失敗を許容する、もう一つは友達を作るため」と言っています。だから、学校は絶対に安全な場所にして、、自由に失敗させるところでなくてはならないのです。またボクシングの例をあげるまでもなく、人には自分の伸ばし方が色々あるから、単一の尺度は本当に危険です。さきほどの工藤校長は、頭髪や服装の乱れは心の乱れではありません、と言います。命に関わることや人の自由を奪うことについてはとても怒るけれども、それ以外は自由だとしています。学校は社会の中でより良く自分が生きていけるように、その手段を与えるためにあるので、来たくなかったら来る必要はないし、中間テストもないし担任もいない。ただ難しいのは、生徒の自主性に任せすぎると、どこまでも落ちていってしまうかもしれない。しかし、それを校則で縛ったりするのはやはり違うと言います。どこまで堕落していっても人間は信じてやれば、絶対に戻ってくる。最終的には生徒を信じるという教育なんです。

ただ、それをみんながやっていくには時間がかかると思う。なぜかというと、短期的に比較して私立のほうが偏差値が高いとかいう価値基準があると、ついこれまでの価値観からつい引っ張られてしまう。でも、偏差値が何だというのでしょうか?人類が幸せになるのは偏差値ではないでしょう。さっきのボクシングをやった子の話を見ても、色々な方策をやっていたら、そこから手繰り寄せて勉強がしたくなる子もいますし、運動能力において抜群の成績を残せるようになる。北島廉介や錦織圭選手に偏差値を求めてどうなるのですか。むしろ、社会のなかで自分の価値を認め、どのような自己主張ができるか、そのような世界を作るほうが大事だと思う。

萱島: 現役の学生さんの世代は、これからもっと新たなイノベーションをしていく時代になると思うので、もっと教育現場と外との交流を持たせられたらいいですよね。

国の根幹として何が大事なのかというと、公教育

米倉先生: 外の世界のさまざまな価値と繋がるのは本当に大事です。日本はOECDで公教育に対する投資が最低水準なんです。5年間も。これは愚かとしかいいようがない。国が先生の給与水準を上げ、異分野から先生たちを採用していくことも大事です。何故かというと、多様なネットワークを持っている先生たちを採用することができるからです。生徒たちには早いうちからさまざまなロールモデルを見せることが大事です。

国の根幹として何が大事なのかというと、やはり公教育だと思います。シンガポールでは公務員の給与はシンガポールに進出した外資系企業の役員以上なんです。なぜかというと、給与を低くしていると汚職が起こったり、自分の職務を大事に思わなくなるから。

それは国の根幹として国のあり方をどう考えるかですよね。シンガポールは小国なので、公務員を中心とした計画的な経済立国が必要不可欠です。だから、彼らは経済官僚を優遇するのです。同じように、日本は教員の給与水準とか教員の自己投資には一番お金をかけないといけない。教育こそ最も国を富ませる効率の良い投資だからです。国民としても、そういうことをすすめる人を選挙で選ばないといけない。また、教師になりたい人は昔のほうが多かったのではないでしょうか。スウェーデンでは福祉介護士の給与水準が高くて、競争倍率もすごい高いと聞いた。いい人材が社会福祉に就くから、福祉がどんどん充実していく。その国が大事に思う分野には投資をしなければならないのです。

萱島: 今日は貴重なお話をお聞かせいただき、ありがとうございました。

【副編集長対談・前編】明日のリーダー育成を紐解く鍵(米倉誠一郎教授)

米倉 誠一郎(法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科教授・一橋大学名誉教授)

1953年東京生まれ。一橋大学社会学部(1977年)・経済学部(1979年)卒、同大社会学修士(1981年)。ハーバード大学PhD(歴史学博士、1990年)。一橋大学商学部産業経営研究所教授、同大学イノベーション研究センター教授を経て、2017年4月より現職。企業経営の歴史的発展プロセスを戦略・組織・イノベーションの観点から研究。著書に、『経営革命の構造』(岩波新書)、『企業家の条件』(ダイヤモンド社)、『脱カリスマ時代のリーダー論』(NTT出版)、『創発的破壊:未来をつくるイノベーション』(ミシマ社)、『オープン・イノベーションのマネジメント』(有斐閣)、『二枚目の名刺 未来を変える働き方』(講談社)、『イノベーターたちの日本史:近代日本の創造的対応』(東洋経済新報社)、『松下幸之助:きみならできる、必ずできる』(ミネルヴァ書房)など多数。

ethica副編集長 萱島礼香

法政大学文学部卒。総合不動産会社に新卒入社都市と自然との共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げ行うIT関連企業に転職後はwebディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネットなどがある。その後、研究機関から発足したNPO法人に参加し、街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した201811webマガジン「ethica」の副編集長に就任。

ーーBackstage from “ethica”ーー

アカデミー10周年記念プログラムでは、同アカデミーに参加したことのある非営利セクターの次世代リーダー100人が一堂に会し、発表者による社会課題解決の先進事例やパネルディスカッションなどを聴講しました。地方からの参加が7割だそうで、互いの講演に熱心に耳を傾け、交流を深める姿から、自分たちの手で日本を変えていくんだという意気込みを強く感じました。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

萱島礼香

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
[連載企画]人を癒す希望の火を灯す(第2話)キャンドル・ジュンさん
独自記事 【 2021/3/15 】 Art & Culture
(第1話)に続き、今回の副編集長対談はキャンドルアーティストCANDLE JUNE(キャンドル・ジュン)さんとオンラインで行いました。 キャンドル・ジュンさんは、1994年よりキャンドル制作を始め、2001年より平和活動『Candle Odyssey』を開始。紛争地や被災地を巡り、キャンドルに火を灯す活動を行っています...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
女優ののんさんがSDGsを広めるためのキャラクターを発表!
独自記事 【 2020/11/9 】 Art & Culture
朝日新聞社は10月11日(日)~15日(木)に、民主主義や気候変動、SDGsなどコロナ禍で浮上した問題や世界の変化について話し合う「朝日地球会議2020」をオンラインで開催しました。「SDGsしないのん?」と題したセッションには、人気女優ののんさんや国連広報センター所長の根本かおるさん、ニュースサイト「withnews...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica-Tips】私によくて、世界にイイ。サステナブルなチョコレート3選
独自記事 【 2020/10/26 】 Food
チョコが恋しくなる季節。温かな飲み物と一緒に口に含むと、とろ〜り美味しさが溶け出します。常温で置いておいても溶けにくい秋冬は、まさにチョコの旬。 というわけで今回は、サステナブルなチョコレートのお話。買うことで生産者の暮らしとつながるフェアトレードなアイテムや森林保護の視点から生まれたエシカルなチョコなど3種類をご紹介...
ワールド主催「246st.MARKET」イベントレポート 4人の環境アクティビストをethicaが独占インタビュー
独自記事 【 2020/10/26 】 Home
ワールド北青山ビル1階で10/14〜10/18に行われたポップアップイベント『246st.MARKET』(ニイヨンロクストリートマーケット)。“GOOD FOR FUTURE”をコンセプトに、クリエーターたちとともに未来を創造するプロジェクトです。3回目を迎えた今回は「サーキュレーション・ライフスタイル」をテーマに、サ...
まずは自分の“半径5m”から愛を広げていく。 エシカルウェディング経験者・沼田暁さんが考える社会貢献のかたち (前編)
独自記事 【 2020/3/2 】 Fashion
エシカルや社会貢献活動に関心があり、何か自分にできることをしたい。でも、いざ何かしようとしても「自分が役に立てることなんてあるのだろうか」と躊躇ってしまう人が多いのかもしれません。筆者である私も、そんな悩みが尽きない一人です。 悩める筆者がある“ウェディングドレス”をきっかけに出会ったのが、今回の主人公・沼田 暁(ぬま...
【ethica編集長対談】「ECOALF」創業者 ハビエル・ゴジェネーチェ氏
独自記事 【 2019/12/23 】 Fashion
スペインのファッションブランド「ECOALF」の日本第1号店が2020年3月、東京・神宮前にオープンすることになり、先日、都内でその発表会が行われました。 「ECOALF」は世界中で脱プラスチックの動きが広がる中、環境を守りながらペットボトルや漁業用の網などといった海洋プラスチックごみを再生して作った機能的な衣類や靴、...
ファッションデザイナー石川俊介さん『背景が見えにくいファッション産業への疑問』
独自記事 【 2019/12/16 】 Fashion
エシカルなコーヒーの調達率 99 % を達成したことにちなみ、9月9日に全国のスターバックス店舗で2015年から行われている「99 キャンペーン」。特に、同キャンペーンが初めて実施された、中目黒の「スターバックス リザーブ®️ロースタリー 東京」では、バリスタによるコーヒーの生産過程についてのマイクパフォーマンスが行わ...
SDGsは「自分の暮らしの中」で向き合う。
sponsored 【 2019/11/25 】 Home
気候変動やグローバル化で深刻化する問題に対応するため、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)。貧困や格差の解消、地球環境の保全などをめざし、全ての国連加盟国が2030年までに取り組む行動計画だ。企業は単なる社会貢献ではなく、本業を通じた活動が求められている。ボルネオ島の生物多様性保全やアフリカ・...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
「エシカルファッションってなに?」 ピープルツリーの場合
独自記事 【 2019/9/20 】 Fashion
日本とイギリスで展開するフェアトレード専門ブランド「ピープルツリー」。人にも地球にも良いライフスタイルを提唱するエシカルファッションのパイオニアともいえるその活動は、ethica編集部でも創刊以来、大先輩としてその歩みに倣って参りました。 エシカルな気づきをテーマに情報発信を続けてきた私たちethicaは今年6周年を迎...
美しき理系アーティスト、スプツニ子!さんに伺いました!(前編)「質の高い教育をみんなに」
独自記事 【 2019/9/28 】 Art & Culture
9月22日(日)〜29日(日)のSDGs週間(*)にフェイスブック ジャパンが開催している「Facebook Fundraisers for SDGs」で、「質の高い教育をみんなに(SDGsの目標4)」を達成するため、アメリカのNPO団体「Girls Who Code」への募金キャンペーンを立ち上げたスプツニ子!さんに...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
The Breakthrough Company GO クリエイティブディレクター 砥川直大さん(前編)
独自記事 【 2020/4/20 】 Fashion
世界中で脱プラスチックの動きが広がる中、ペットボトルや魚網などの海洋プラスチックごみを再生して作った衣類や靴、かばんなどを次々に発表。現在ヨーロッパを中心に大きな注目を集めているスペイン生まれのファッションブランドが「ECOALF」です。この3月、日本第1号店が東京・渋谷にオープンしましたが、開店にあたり「地球の資源を...
蜷川実花×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/7/13 】 Art & Culture
渋谷パルコのPARCO MUSEUM TOKYOで新作個展「東京 TOKYO/MIKA NINAGAWA」を開催した写真家で映画監督の蜷川実花さん。蜷川さんの新作写真集「東京 TOKYO」の刊行を記念して行われたもので、会場には「東京に生まれ育ち、この街しか住んだことがない」という蜷川さんが「大事なものすぎてなんだか手...

次の記事

明日のリーダー育成を紐解く鍵(米倉誠一郎教授)【副編集長対談・前編】
野生のアフリカゾウを絶滅の危機から救おう! 滝川クリステルさんビデオメッセージ 先進国日本が世界最大の象牙販売国となっている現実

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます