直感と感動を大切に、仕事をしてきた生駒芳子さん【ethica Woman】
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
直感と感動を大切に、仕事をしてきた生駒芳子さん【ethica Woman】

【ethica Woman】は、働く女性がキャリアを積む過程で考えてきたこと、仕事をする上で知ってほしいことを、様々な女性に聞いて紹介するシリーズです。第1回目は多くの働く女性の憧れ、元「マリ・クレール」編集長で、ファッション・ジャーナリストの生駒芳子さんにお話を伺いました。

直感を信じ、計画から外れたら「やった!」と思うくらいでちょうど良い

― 20代後半から30代の働く女性の多くが、キャリアプランが描けないという悩みを持っているそうです。経歴を拝見すると、生駒さんは数年刻みでキャリアステップをなさってきたように見えますが、キャリアプランは考えていらっしゃいましたか?

生駒芳子さん:私は計画を重んじたというよりも、直感を信じて生きてきましたが、そのことが結果として、人生のより良い舟に乗れていることにつながっているなあと感じています。無計画というより、より直感を重んじる生き方を大切にしたいがために、あえて計画に縛られない生き方を選んできたのです。もともと10代の頃はロックバンドの追っかけ少女でしたから、「見たいものは見たい」、「会いたい人には会いたい」という衝動や情熱が非常にはっきりしていたのと、アートやファッションが好きで、関わっていきたいという気持ちがずっと軸にありました。「いまこの方向に進みたい!」というビジョンが、折々にはっきりと目の前に現れてきます。それは、自分の直感を信じてきたからだと思います。つねに自分の直感を信じて進むべき道を選んできました。

最初にフリーになったときも、VOGUEで働くことになったときも、「○歳になったらこうしよう」とあらかじめ決めていたわけではないんです。編集プロダクションを2年で辞めてフリーになったのは、昼夜もなく一生懸命働いて「おなかいっぱいだわ」と思う状態になったからだし、VOGUEに入ったのも「フリーではなく、編集部に入らなくちゃやりたいことができないわ」と思ったからなのです。その後も何年かおきに「いまこそ、行動しなくちゃ」と自分のなかで強く鐘が鳴ったときに行動を起こしてきました。

― キャリアプランを立てる代わりに、「ビジョン」と「直感」を大事になさってきたのですね。

生駒さん:そうです。人生、予定通りにいくことなんてまずありません。キャリアプランを細かく立てると、逆にストレスかかりませんか? もしキャリアプランを立てるならば、10年くらいの枠で考えないと。しかも、その枠からはずれたら、むしろ「やった!」と思うくらいで良いと思いますよ。人生は予測不可能だからこそ楽しいんです。セレンディピティ(予期せず幸せや有益な情報を発見すること)を大切にして、自然な流れを楽しみ、流れに逆らわないようにすることをおススメしたいです。

失敗しただけ成功する。失敗はむしろチャンスである

―「失敗したくない」という理由からキャリアプランを立てる人もいると思うのですが、生駒さんは仕事上で失敗をしたことはありますか?

生駒さん:失敗を恐れていたら、何も行動が起こせなくなる。失敗はした方がいいんです。20代、30代に失敗した数だけ成功すると思いますよ。私も何度失敗をしたことか。原稿が印刷に間に合わなかったということはなかったけれど、自分で撮った写真が写っていなくて再度手配したり、締め切りに間に合わなくなりそうになったり。

一番大きな失敗は、フリー時代に業界の偉い方に取材をしたときのこと。アポをとって、コメントを頂く仕事だったのですが、徹夜が続いていて寝坊してしまったんです。相手の方から約束の時間の30分後に「今、何時だと思ってるんだ」と電話がかかってきて、やっと目が覚めたのですが、その方は当然怒っていて「上司に電話をするぞ」と言われたんです。

その瞬間、私は頭のスイッチがパチンと入って、こう言ってしまったんです。「遅刻をしてしまったことは本当に申し訳ありません。でも私はフリーランスなので上司はいません。申し訳ないのですが、いつでもどこにでも飛んでいきますので、時間をください」って。そして、再度時間をもらって会いに行ったら、その方はもうニコニコして、インタビューに応じてくださったんです。

失敗をすると、どうしても相手と深いコミュニケーションを取らなくてはならなくなります。それはチャンスだと思いますよ。失敗したら謝罪して、提案して次のチャンスをとる。そう考えたら、失敗なんて怖くなくなります。

答えはすべて自分のなかにある

― 「キャリアのことを相談できる人がいない、孤独である」ということも、働く女性の悩みとして聞きますが、生駒さんは誰かに仕事で迷った時には相談しましたか?

生駒さん:私は「答えは自分のなかにある」と思っているんです。人はみんな孤独。孤独が正常なのです。友達がたくさんいたり、家族が円満であったりするのはもちろん良いことです。でも、だからといって答えを自分以外の人がもっているわけではないのです。

30代のときに、私はルドルフ・シュタイナーの本をよく読んでいたのですが、シュタイナーは「答えは自分のなかにある」と言っています。私は35歳で離婚したのですが、離婚をしようか迷って友達に相談すると「あんなに良い旦那さんなのに」と言われてしまったんです。でも、私にはどうしても離婚してやっていきたい方向があった。それで迷って一人で考えていたら、あるとき急に「自分を信じよう」と腑に落ちたんです。それで離婚を決断しました。

今、大学などで若い人に授業で教えているのですが、「携帯断食をしなさい」とよく言っています。暇な時間があると、みんなすぐに携帯を見てしまう。それだと、「自己探訪」ができません。30分でもいいから、もしできれば1日くらい、携帯を見ないで自分自身を見つめる時間を作ること。そうすることで、自分の悩みに対する答えが、自分の中から見つけられると思いますよ。

仕事をしていく上で大切にしていくべきものは「運」「縁」「勘」

― 生駒さんは仕事をしていく上で何を大切にしていくと良いと思いますか?

生駒さん:仕事をしていく上で大切なのは「運」と「縁」と「勘」だと思います。「運」は、「自分からつかみ取りにいくこと」と「ポジティブに解釈すること」が大切です。

将来に対するビジョンを持って「こうなったらいいな」と思っているとチャンスがやってきます。もしチャンスがやってきたら、つかみにいく。私はフリーになってからananで仕事をする時、VOGUEに就職をするとき、マリ・クレールが創刊すると聞いたとき、すべて自分からアプローチしました。また運を良くするためには、常にポジティブな考えでいること。何か失くしたり壊れたりしても「ラッキー! 厄落としだわ」と思っているくらいがちょうどいい(笑)。楽しく明るい気持ちで自分を満たしていることが大切だと思います。

「縁」はネットワークを意味します。自分の世界を作っていくこと。ネットワークをもとにして、自分の世界はできていくのです。人との縁を大切にすることはとても必要です。また、「勘」は最初にお話しした「直感」のこと。直感を磨くためには、感動することが必要です。自分が感動してわくわくドキドキできることを増やす。そうすれば、直感は自ずと磨かれていきます。

生駒さんが今後積極的にやっていきたいのはプロボノのNPO

― 「運」「縁」「勘」を大切にしてお仕事をなさってきた生駒さんが、今後力を入れていきたいと思っていることはどんなことですか?

生駒さん:今、私はクリエイターとNPO団体を繋ぐNPO「サービスグラント」の理事をしています。このNPOは、クリエイターのプロボノ(各分野の専門家が、職業上持っている知識・スキルや経験を活かして社会貢献するボランティア活動)を促進する団体で、自分のスキルを登録することができます。

人の才能には「できること」と「したいこと」の2つがあり、多くの人はそれを混同してしまいます。でも、周りの人は「できること」でその人を評価します。「したいこと」は、自分のなかでは大切なのですが、「できること」を自分自身が認めてあげることも非常に大切です。

プロボノという仕組みは、自分の専門知識を社外で使うことができます。これは自分の「できること」を自分自身が認めてあげる機会になります。また、まったく知らない世界に自分のスキルを通じて出会うこともできます。それって、自分自身に冒険をプレゼントすることになると思うのです。自分自身に冒険をプレゼントすることは人生のスパイスになります。プロボノを通じて、わくわくドキドキできる機会を多くの人に味わってもらいたいと思っています。

またクールジャパンの活動の一環として、日本の伝統工芸を再生させて、おしゃれにラグジュアリーに世界発進するプロジェクト「WAO」のプロデュースも手がけています。日本のものづくりと美意識を応援し、ブランディングを目指す活動は、これから長期にわたって力を入れていきます。

― 失敗を恐れず、ビジョンを持って、わくわくドキドキしながら直感を信じて仕事をしていく。何だか仕事について悩みが消えてしまいそうです。貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。

 <生駒芳子さんご経歴>

1957年8月9日、兵庫県宝塚市生まれ。東京外国語大学フランス語科卒業。大学卒業後、編集プロダクションに所属し、旅行雑誌の制作を手がける。2年間全国各地を飛び回って取材・撮影を行った後退職。フリーランスのライター、エディターとして「an・an」などの雑誌や新聞においてファッション、アートについて執筆・編集。1998年に日経コンデナスト社に就職し、VOGUE JAPON創刊時に副編集長に就任。2002年からはELLE JAPONで副編集長に就任し活躍したのち、2004年よりマリ・クレール日本版の編集長に就任。今までにない、社会派の視点を持ったジャーナリスティックなファッション雑誌を立ち上げる。2008年11月に独立。現在はフリーランスのジャーナリスト・エディターとして、ファッション、アート、ライフスタイルを核に、社会貢献、エコロジー、社会企業、女性の生き方、クールジャパンまで、講演会出演、プロジェクト立ち上げ、雑誌や新聞への執筆に関わる。クリエイターとNPO団体を繋ぐNPO「サービスグラント」の理事。

<講演情報>

生駒芳子さんのことをがもっと知りたい方におススメ!

・7月3日(水)〜9日(火)
新宿伊勢丹本館4階での「FUTURE URBAN RESORT」展
生駒芳子さんがキュレーションしたオーガニック・コットン、フェアトレード、伝統工芸のサマードレス、かごバッグ、サンダル、アクセサリー、ストールなどを紹介しています。ぜひお立ち寄り下さい!

・7月17日(水)〜31日(水)
東京ステーションホテルにて開催される「ヴァン クリーフ&アーペル」の時計・宝飾の学校
生駒さんがイヴニングカンバセーションのナビゲーターをつとめます。建築家、シェフ、華道家、ピアニストなどを迎えてのセッションは、インスピレーショナルなトークを展開。19日、21日、27日、28日、29日に出演予定。

取材協力=生駒芳子さん

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)〜
http://www.ethica.jp

FelixSayaka

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
インターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン2 第二話の見どころをご紹介
独自記事 【 2022/12/5 】 Work & Study
11月7日(月)より配信がスタートした、SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン2!「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演して、身近な話題や気づきから、持続可能なアクションやサステナブルについて考えを深めます。今回は、12月5...
SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組のシーズン2がスタート!
独自記事 【 2022/11/7 】 Work & Study
持続可能な開発目標(SDGs)が国連サミットで採択された2015年から7年。サステナブルやSDGsといった価値観は耳に馴染んできたものの、まだまだ知らないことがたくさんありそうな奥の深い世界です。エシカでは、「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演するSDGsやエシカルに...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
【あむんが行く!第1話】 TBSのSDGsプロジェクト!「ミツバチ教室」で蜜ろうキャンドルづくりを体験
独自記事 【 2022/3/7 】 Work & Study
ethica編集部員の娘(5歳)が、様々なエシカルな体験を繰り広げていく、新企画「あむんが行く!」 “あむん”という名前の由来は、紀元前1000年頃より、二千年の長きにわたって栄えたマヤ文明のマヤ語からきています。意味は“森の神”。自然と親和性のある名前を持つあむんが、今後様々なエシカルな体験を繰り広げていきます。娘の...
“自分にも環境にもやさしい”インナーウェア「WACOAL ナチュレクチュール」
INFORMATION 【 2022/2/21 】 Fashion
肌に直接身につけるインナーウェアは着心地が大事。加えて、環境に寄り添ったアイテムであれば、なおさら手に取りたくなります。「Wacoal ナチュレクチュール」は“自分にも環境にもやさしい”を目指したインナーウェアラインです。肌ざわりの良さに加えて、環境や社会に配慮した製品へのこだわりが光ります。今回はそんなアイテムの魅力...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

今こそ観たい!『風の谷のナウシカ』にみる、自然と人間の共生
泣けるレシピ本! 世界の家庭料理が満載の『海を渡った故郷の味』

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます