どんな人にも寄り添い共感し合うために、学び続ける。/石川康晴 ストライプインターナショナル社長インタビュー【前編】
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どんな人にも寄り添い共感し合うために、学び続ける。/石川康晴

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

ファッションブランド「earth music&ecology」を手がけるストライプインターナショナル。ホテル、ドーナツショップ、そしてアートイベントの開催など、業態にとらわれず、ライフスタイルを楽しむ、豊かに彩るサービスやビジネスを展開している。社長の石川康晴さんが語る、「相手を慮るコミュニケーション」とは?

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

ーーアパレルの枠を超え、「ライフスタイル&テクノロジー」を事業ドメインに掲げてさまざまなビジネスやサービスを展開しています。着想の源泉は?

当社はいつも二つのマーケットに注目しています。

一つは「成長しているマーケット」です。たとえばシェアリングエコノミー。CDやDVD、カーシェアリングなどは一般的で、さらに最近ではさまざまなシェアサービスが生まれ、成長しています。当社では「メチャカリ」というファッションレンタルサービスを始めました。タキシードやドレス、着物などのレンタルはありますが、Tシャツやパンツといった、いわば日常着を借りるというビジネスは存在していませんでした。成長する新しいマーケットに対して当社のリソースで何ができるか。常にそれを考えています。

もう一つは「20年間変化のないマーケット」です。たとえばドーナツ。チェーン店は業績が下がり、外資系は退店を始め、大手コンビニエンスストアからドーナツケースは消えた。それがここ1、2年の状況です。しかし一方で、小さな子どもからお年寄りまで大好きな国民的おやつでもある。課題は、カロリーが高いという点。

当社では2019年3月、京都に工場を併設した体験型ドーナツファクトリー「koe donuts」をオープンしました。小麦粉はオーガニック、油は玄米油に。さらに、作りたてのアツアツを提供し、これまでにないライブ感を体験してもらうことが狙いです。内装も隈研吾さんに依頼しミシュランの星付きレストランに匹敵するようなデザインにこだわりました。20年間変わっていない業界は課題が明確です。それを変えにいく、イノベーションを起こす。そういうことが好きな会社なのです。

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

ーー新しいアイデア、新規のビジネスはどのように生まれるのでしょうか?

基本的に年に2~3本は新しい事業をローンチするのですが、スタッフの公募制度から決まるボトムアップと、僕の異業種交流などによって生まれたアイデアからのトップダウンと、いずれの場合も。また、一つのブランドを成功させた中間管理職が、さらに「これをやりたい」とアイデアを僕に直接提案してくることもあります。

社歴や役職もまったく関係ありません。当社は年齢もキャリアもさまざまですし、LGBTQsや海外にバックグラウンドがあるスタッフもおり、ダイバーシティーな会社です。誰もが提案でき、そのアイデアにビジネスの可能性があって世の中の方々から喜んでいただけるなら、なんでもやってみる。そう考えています。

ストライプインターナショナル 東京本部のオフィス。 Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

人にも地球にも「利他心」を持つ

ーー近著『学びなおす力』を拝読しました。石川さん自身が「学び続けなければならない、という危機感をつねに持っている」というフレーズが印象的でした。

トップの思考が止まった瞬間、会社の思考は止まります。どんなに優秀なスタッフが入社したとしても、トップに学ぶ姿勢、意識がなければその才能を潰してしまう。さまざまなことを学び、トップとスタッフが共感しあえる。そういう組織を作ることが大事だと思っています。

社会も組織もますますダイバーシティーに向かう中、全てのスタッフ、さまざまなお客様に寄り添おうとするならば、野心を持って勉強していかないといけない。それは、経営学などの学問だけではありません。若い人にはジャニーズやAKBなどアイドルが好きな人もいれば、K-POP好きもアニソン好きもいる。パワハラ的な発言をする上司より、キンプリの話ができる上司の方が絶対に共感できますよね(笑)。少なくとも僕はそうありたい。時代の潮流のようなものを常にキャッチアップし、いくつになっても学ぶ姿勢を持ち続けること。多くのスタッフの上に立つトップやマネジャークラスにはそれが求められると思います。

上司だけが学べばいいということではありません。関係は双方向ですから、部下だってリーダーの好きなものは何か、どんな話題をすれば共感しあえるかを考え、知識をつけていく必要がある。トップも中間管理職も、そして若いスタッフも、みんなが学ぶ体質になることで「関係の質」が向上すると考えます。関係の質は結果の質につながります。実際、関係の質、つまりコミュニケーションの質のいい組織は黒字を出していますし、コミュニケーションの質を改善することで赤字からV字回復できている企業もある。組織として業績を上げるうえで、関係の質は非常に重要ですし、重視しています。

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

ーー一人ひとりの相手を慮る気持ちが組織を健全にし、成長させる、と?

そうですね。僕らはその気持ちを「利他心」と言っています。「私が、俺が」という人が近年多すぎる。自分の昇進ばかり考えて役員しか見ていない部長とかね。利他心があれば、自分のことよりも有能な部下をもっと引き上げてほしいと考える。そうした上司は部下との関係の質がいいので、部署の業績が上がり、結果として部長も昇進できるという「勝ちパターン」が実現するのですが。

利他心が持てるかどうかは組織の中だけではありません。お店で買い物をしたとき、レジ袋がある方がラクです。でも、地球環境を慮る利他心があれば、ちょっと不便でもエコバッグを持っていこうと思えるはず。

ただ、なんでも頑張りすぎると無理が出るものです。ハーブティーも飲むけれど、たまには炭酸飲料も飲む。有機野菜のレストランに行くけれど、時々はファストフードのハンバーガーも食べる。そういうライフスタイルをうちの会社では「ハーフ・オーガニック」と呼んでいます。さらに、地球のことも考えてエシカルな意識や消費を自分のものにしていく。これからの時代、そういう生き方がバランス感があって素敵なんじゃないかと思うのです。

(後編に続く)

今こそ本気のエシカルを、利益も生むSDGsをーー。「業界のユニコーン」が挑む。/石川康晴

記者 中津海 麻子

慶応義塾大学法学部政治学科卒。朝日新聞契約ライター、編集プロダクションなどを経てフリーランスに。人物インタビュー、食、ワイン、日本酒、本、音楽、アンチエイジングなどの取材記事を、新聞、雑誌、ウェブマガジンに寄稿。主な媒体は、朝日新聞、朝日新聞デジタル&w、週刊朝日、AERAムック、ワイン王国、JALカード会員誌AGORA、「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」など。大のワンコ好き。

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中津海 麻子

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