今こそ本気のエシカルを、利益も生むSDGsをーー。「業界のユニコーン」が挑む。/石川康晴 ストライプインターナショナル社長インタビュー【後編】
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今こそ本気のエシカルを、利益も生むSDGsをーー。「業界のユニコーン」が挑む。/石川康晴

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

ファッションブランド「earth music&ecology」は今年20年を迎え、「エシカル」をブランドメッセージに。そこに込めた思い、そして、世界的な課題であるSDGsへの取り組みなどを通じ、社長の石川康晴さんが考える、これからのエシカルが目指す姿とは?(前編:どんな人にも寄り添い共感し合うために、学び続ける

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

ーー「earth music&ecology」が20周年を迎え、「エシカル」をテーマに掲げられました。

今から20年前の1999年。そのころから世界中で環境問題について危惧する声は高まってきていて、ブランドをローンチするときに「ecology」というサブタイトルをつけたのです。21世紀を前に、このブランドであり僕らの大事な哲学として環境問題にトライしていこうという意志でもありました。

それから20年。結局、何も変わらなかった。地球も消費者も僕らメーカーも。麻素材やオーガニックコットンの商品を1000円高い価格で販売したことにも、砂漠化した内モンゴル自治区の緑化活動にも、残念ながら期待していたほどには共感を得られなかった。多くの消費者が求める便利さや安さにわれわれの哲学が勝てなかったのです。

しかし今、20年前に比べて世論も地球環境に対して関心が高まってきています。エシカルな生き方がかっこいいという潮流もでき始めている。「earth music&ecology」というブランドを通じてエシカルを普及させていくチャンスが来ていると感じました。もう1回本気で取り組もう。その決意表明として、「エシカル」を掲げたのです。

広瀬すずさん出演のCM。エシカルを宣言した。

ーー広瀬すずさん出演、是枝裕和監督のCMを制作されました。ショップで試着を楽しむ広瀬さんの姿から、場面は縫製工場へ。そこで働く女性をフォーカスしています。このCMに込めた思い、伝えたいメッセージは?

当社では5年ほど前から「フェアサプライチェーンマネジメント」に取り組んで来ました。

CMの撮影は当社のバングラディシュの工場で行いました。バングラディシュでは2013年にファストファッションの縫製工場が倒壊し、1000人以上の方が亡くなった事故がありました。

この事故を受け、当社では洋服を販売する側にも倫理的な責任があると考え、2014年から「フェアサプライチェーンマネジメント」に取り組んできています。

海外工場で働く人をフォーカス。「顔が見えることでエシカルへの取り組み、思いが伝わりやすくなるのではと考えています」と石川さん。

ーー反響は?

おもしろいのは、若い世代から大きな反響があったこと。逆にあまり響かなかったのが僕と同世代の40~50代。消費意欲が強く、マンションに車に時計、バッグ、靴……と所有することが趣味で生きて来た世代です。一方で一番ビビッドに反応があった20歳前後の若い人たちは、フリマアプリで中古品を買うことは当たり前、普段の洋服も当社が運営する「メチャカリ」のようなサービスを利用してレンタルでいい、車もカーシェアリングでいいというマインドを持ち、その上で学校教育でもSDGsについて学んでいる。エシカルに対して自然に理解していて、われわれのメッセージもダイレクトに受け止めてくれるのです。

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

ごみ箱をなくして見えたこと

ーーSDGsというキーワードが出ました。御社の取り組みをお聞かせください。

政府の発表に先駆け、ショッピングバッグ有料化の活動を始め、2020年からは紙のショッピングバッグのみにする予定です。また、各ブランドでオーガニックコットンの比率をルール化します。

9月は一ヶ月間のチャレンジとして店舗、オフィスからごみ箱をすべて撤去しました。その上で出たゴミを細かく分別し、一ヶ月間でどんなゴミがどのぐらいの量で出るのかを測定しています。ごみ箱がないのはもちろん不便ですが、不便にならないと見えないことがたくさんある。ひとつ明らかになったのが「レシート不要というお客さまがこんなにいるのか」ということ。燃えるごみの中で多かったのがレシートだったのです。

日本の小売店では「代金を支払い、お釣りとレシートをもらう」というオペレーションが当たり前になっています。それを無くし、レシートが必要な方はおっしゃっていただくように切り替える予定です。紙ごみは激減すると思います。さらにレシート用のロールペーパーの使用量も減るので経費も削減できます。SDGsでは、企業は本業を通じて取り組み、利益を上げていくことも重要です。環境や人権に配慮しながら、きちんと利益にも結びつけていくか。「ごみ箱をなくす」というアクションは一例に過ぎませんが、「SDGsとは何か、どうするべきか」という難解な呼びかけだけでは一広い層になかなか伝わらない。ごみ箱を使わない、それだけで自分も地球も良くなっていく。そんな風に誰もが「自分ごと」として捉えられるような活動を取り入れていく必要があると考えます。

本気でエシカルを広めるために取り組むべきなのは大企業、大きな組織だというのが僕の持論。いくらエシカルだからといって、みんなが今までより1000円高いフェアトレードのチョコレートを買うかというと難しいでしょう。今までと同じ価格で、気づいたらエシカルな商品だった、というのがいいのではと思うのです。山の中で自然に優しい草木染をすることも素晴らしい活動ですが、それだけでは世界は青空にならない。1兆円、5兆円という規模の企業が本気でエシカルに向かわない限り、世界は変わりません。事業規模1千億円を超えたアパレル業界のユニコーンと言われる当社が先頭を走ることが重要と考えています。フェアトレード・ファッションをリーズナブルに展開して世界にフェア・ファッション広げるーー。それを見据え動いていく考えです。

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

ーー最後に。石川さんにとって「私によくて、世界にイイ。」とは?

「無駄、無理をしない」ということですね。たとえば、賞味期限切れの使わない調味料が冷蔵庫や食品ストッカーの中にあふれているなど。これは食品の無駄。フードロスの問題が叫ばれる今、地球環境にとっていいことは何もありません。

無理をすると安定的にいい仕事ができなくなる。食事もおろそかになり、睡眠時間が減って休みがなくなると、肉体的にも精神的にも追い詰められ、自分のライフスタイルも崩れてしまう。体を壊せば医療費もかかってしまうかもしれません。

無駄が多い社会や地球は続かないと思いますし、無理する生き方も人として続かない。無駄をせず、無理をせず、いい地球に長くすみ続ける。それが、僕にとっても世界にとっても最善のことだと考えています。

Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

前編:どんな人にも寄り添い共感し合うために、学び続ける

記者 中津海 麻子

慶応義塾大学法学部政治学科卒。朝日新聞契約ライター、編集プロダクションなどを経てフリーランスに。人物インタビュー、食、ワイン、日本酒、本、音楽、アンチエイジングなどの取材記事を、新聞、雑誌、ウェブマガジンに寄稿。主な媒体は、朝日新聞、朝日新聞デジタル&w、週刊朝日、AERAムック、ワイン王国、JALカード会員誌AGORA、「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」など。大のワンコ好き。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

中津海 麻子

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