SDGsで新たな共創モデルを構築する 【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】 レポート『ネスレ編』
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SDGsで新たな共創モデルを構築する

ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2019 東京」では数々のセッションが行われました。その一つがネスレ日本が参加した「SDGsで新たな共創モデルを構築する」でした。今回はネスレ日本株式会社の阿部純一さんのお話をご紹介します。(記者:エシカちゃん)

親鳥が子どもたちに食事を与えるロゴマークに込めた想い

ネスレ日本は、世界最大の食品飲料会社であるネスレグループの日本法人です。ネスレがスイスでスタートした19世紀中頃、ヨーロッパではまだ乳幼児の栄養失調による死亡率が非常に高く、多いところでは、4人に1人の率で亡くなっていました。ネスレの創業者であるアンリ・ネスレは薬剤師の助手だったのですが、子どもたちに栄養を与えるために乳児用乳製品を開発しました。ミルク、小麦粉と砂糖を主材料としたものです。これが食品飲料会社としてネスレの始まりです。ネスレ社のロゴマークをご覧になっていただくと、親鳥が巣の中にいる子どもたちに食事を与えています。子どもに栄養を届けるというメッセージです。

CSRをさらに進めたネスレのCSV – Creating Shared Value

社会と株主、その双方にとっての価値をつくり出すこと、これがネスレの進化したCSRであり、2005年に発表した「共通価値の創造」(Creating Shared Value=CSV)という考え方です。社会的価値と経済的価値を同時に創造することです。CSVは我々ネスレがどのようにビジネスを進めていくかの原理、原則です。

パーパスを全世界で共有する

2016年、ネスレ創業150周年の年に、私たちのパーパス(存在意義)は、「生活の質を高め、さらに健康な未来づくりに貢献します “Enhancing quality of life and contributing to a healthier future.” 」と全世界の社員に向けて発信しました。その際にネスレがプラスの影響を与える3分野を特定しました。それは、「個人と家族のために」(消費者・顧客)、「コミュニティのために」(原材料生産者から社員を含め、ネスレのサプライチェーンに関わるすべての人々)、「地球のために」(環境)です。ネスレの取り組みは、現在36のコミットメントで支えられており、それをひとつひとつクリアしていくことで、「持続可能な開発目標(SDGs)」17項目の達成につながります。

今、世の中では何が起きているのかを考える

日本国内でCSVをどう展開しているかの具体的な一例をご紹介します。私たちが物事を考えるときには、自分たちの製品をどう売るかではなく、今世の中で何が起こっているのかを知ろうとします。まずは「個人と家族のために」の分野で考えました。ひとつの現象として、現在日本社会は少子高齢化が進んでいて、あわせて核家族化も進んでいます。

この状況で誰が困っているのか?

では、このことによって困っているのは誰なのかと考えました。人々(住民・市民)にとっては、会話をする機会が減少していきます。人々が集える場=地域コミュ二ティが希薄になっていきます。外出機会も減るかもしれません。そうして引きこもりがちになっている住民に対して、元気で外へ出て健康に暮らして欲しいと行政サイドは考えます。しかし、住民に呼びかけるきっかけや方法、PRする力やブランド力に限界を感じています。ではネスレは何ができるのか。「ネスカフェ」という浸透したブランド、ネスレという名前を使ってお手伝いできるのではと考えました。

81か所のカフェ  市民、行政とのコラボレーション

このような経過があり、集いの場所創りをネスレとして手伝えないかと思いました。ネスレ日本の本社は神戸市にあるのですが、2013年から神戸市と市民の方々とのコラボレーションを始めています。「こうべ元気いきいきプロジェクト」として、介護予防カフェを立ち上げ、現在までに81か所が立ち上がりました。

相互方向に関わりの継続するカフェ

立ち上げ時、そして動き出した後も、市民、行政、ネスレの三者は関わり続けます。まず神戸市とネスレでパートナーシップを締結します。神戸市は、「集いの場のカフェマネジャーをやりませんか」と市民に声をかけます。賛同者に対して市は立ち上げ段取りの支援をします。カフェマネジャー(市民)の方からは、「こんなことをやりましたよ」という運営の月次レポートが市にフィードバックされます。ネスレは、スタート時に、バリスタカフェマシーンとコーヒー豆をカフェマネジャーに無償で提供します。その後は、ネスレのスタッフがカフェを取材して、それぞれのカフェの魅力を紹介する「介護予防カフェ通信」を発行しています。こうして、他のカフェの取り組みを参考にしてもらいながら、カフェ運営を継続していただくためにコーヒーをご購入していいただいています。

「こうべ元気いきいきカフェ」の動画(約2分)を下記からご覧になれます。

地域に合った仕組みづくり

別のケースですが、岩手県宮古市では、このカフェの仕組みの中にNPOや社会福祉協議会の方々が入って、一緒に集いの場、街づくりをしています。兵庫県太子町では、高齢者だけでなく小さなお子さんのいるファミリーも集まれる場を公民館で展開しています。

熊本でも「ほっとするカフェ」を45か所

2016年夏以降、熊本地震に遭った被災地の方々が元気に過ごしていただけるよう、ほっとする場を作ろうと考えました。「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」などを提供し、仮設住宅の集会所での集いの場づくりを社会福祉協議会とともに積極的に進めてきました。2018年5月現在、集いの場は熊本県内の45カ所に設置されています。

我々ネスレ日本は、はこれからも地域の方々と共に創り上げる活動を広げていきたいと考えています。

ーーBackstage from “ethica”ーー

ネスレグループのCSVは、ビジネスそのものなのだと理解できました。経済的価値と社会的価値をどうビジネスに結び付けられるかということを念頭においています。一方向の慈善活動ではなくビジネスであるがゆえに継続性が保てるのだと再認識させられました。

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

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