【ethica編集長対談】フィリップ モリス ジャパン・ 井上哲さん(後編)
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【ethica編集長対談】フィリップ モリス ジャパン・ 井上哲さん(後編)

Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

2月19日・20日の2日間、パシフィコ横浜で開催された「サステナブル・ブランド国際会議2020横浜」(SB 2020 YOKOHAMA)にスピーカーの1人として参加されたフィリップ モリス ジャパンの職務執行役副社長・井上哲さんは高校卒業後、アメリカ留学を経て東大法学部を卒業。その後は松下電器、アンダーセン・ビジネスリスク・コンサルティング、アップルなどで働き、現在はその経験を生かしてフィリップ モリス ジャパンで活躍されているという、まさに絵に描いたような華麗な経歴の持ち主です。

しかし、井上さんご本人は自らを「高校時代は落ちこぼれだった、その後の人生は決してスマートでも何でもない」とおっしゃいます。前編に続き、そんな井上さんのこれまでの歩みを、エシカ編集長・大谷賢太郎がお聞きしました。

松下電器の経営企画でアメリカの事業戦略を担当

大谷: どうして松下電器に入られたのですか?

井上: 私はもともと関西の出身ですから、松下に親しみがありましたし、松下という会社は面白い会社だと思っていました。それに、松下幸之助さんという人にも興味があったので松下に決めました。

大谷: 松下電器ではどのようなことを担当しておられたのですか?

井上: 国際法務部門に配属になりました。90年代の後半は、インターネットに向けてストラテジック・アライアンスという言葉がすごく流行っていて、松下も、新しいビジネスがどんどん生まれていたシリコンバレーのベンチャー企業と提携したり、合弁で企業を立ち上げたりしていた時期なのですが、私はそういう関連のプロジェクトを担当していました。

そしてまた、その頃は貿易摩擦が終わって、日米間に知的財産紛争が起こり始めた時期でもありました。アメリカから特許で日本企業がどんどん攻められたんですね。その件も担当していました。

大谷: それは大忙しでしたね。というのも、井上さんがアメリカに留学していて、語学が堪能だったことや現地の状況を実際にご自分の目で見てこられたことが大きかったのでしょうね。

井上: ええ、そうだと思います。英語ができたということで、若い頃から海外出張ばっかりでしたから。そしてそうこうしているうちに93年になって、アメリカ松下電器に異動になり、そこで7年半、他業界とも絡んだプロジェクトの担当や、最後には経営企画というセクションに移って、アメリカの事業戦略を担当していました。アメリカ松下電器において、アメリカではいろいろと学ばせてもらいました。

Photo=Kaori Uchiyama ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

アンダーセンに転職して、2カ月後にエンロン事件・・・

大谷: その後、松下からアンダーセン・ビジネスリスク・コンサルティングに行かれるわけですね?

井上: ええ、そうです。たまたま縁あって、アンダーセンの人と知り合い、そこから声をかけていただきました。当時、社内には自分から会社を辞めるのはいけないことだという風潮がありましたから、社内の多くの人に叱られましたけど、それでも移ることにしました。

大谷: その後、井上さんはアップルに行かれますが、いずれにしても憧れの会社ですよね?

井上: アンダーセンに入ったのが2001年の7月でしたが、そのわずか2カ月後にエンロン事件が起こって、年が明けた3月頃にアンダーセンが89年の歴史に幕を閉じてしまったんですね。自分ではここで頑張ろうと張り切って転職してきたつもりが、肝心の会社がいきなりなくなってしまったんですよ。どうしようと思っていたら、今度はアップルはどうですかという話をもらったのです。

アップル日本支社長・原田泳幸さん

大谷: そうやってすぐに声をかけてもらえるというのがすごいですね。その頃のアップルというと、スティーブ・ジョブズが戻ってきて、だいぶ落ち着いてきた頃ではなかったですか?

井上: 私が入った時は、ちょうどiPodの第1号が世に出た時でした。その半年後に iTunes Storeが立ち上がって、ジョブズのデジタルライフスタイルが具体的にグーッと近づいていくという時期でしたので、仕事も非常に面白かったですし、アップルにいた時代が原田泳幸さんの日本法人社長としての最後の2年間で、原田さんのすぐそばで仕事ができたというのもとてもいい経験でした。

大谷: その頃の井上さんがいらっしゃった部署というか、仕事の内容はどんなことでしたか?

井上: ガバメントアフェアーズという、官公庁を相手に事業の推進をするセクションで部長をやっていました。当時の首相・小泉純一郎さんがイージャパン戦略を立ち上げて、ウインドウズではなくオープンソースの他のプラットフォームを推進しようとしていたんですね。Macがちょうど9から10にバージョンアップして、10からはユニックスベースのオープンソースにOSが変わりました。

ということで、電子政府を作る時はウインドウズでもマックでもなくて、オープンソースでどうですかというような、そんなプラットフォームのマーケティングをやっていました。

私の人生のテーマは「逆転」であり「サステナブル」

大谷: そしてその後、S&Iを経てフィリップ モリス ジャパンに辿りつくわけですね?

井上: S&Iはアップル時代の同僚が執行役員をやっていて、また何か違うことをやりたいなあと思っていた時に声をかけてもらったので移って経営企画室に入りました。でも、結局S&Iには9カ月しかいなくて、ヘッドハンティングされてフィリップ モリス ジャパンに移りました。

大谷: お話を伺っていますと、井上さんのこれまでの人生はサステナブルな理念が留学時代からずっと今につながっているのではないかと、そんな気がしますね。

井上: 私の人生のテーマは「逆転」であり「サステナブル」なんですよ。

そもそもの話がアメリカから帰ってきたら就職できなくて、受けてみたら受かったのが東大の法学部で、高校時代の同級生がみんなビックリしたというところから始まっているのです。

私のこれまでの人生が、どうしてサステナブルにつながっているのかといいますと、サステナブルというのはきれいごとの話ではないんですね。美しい絵を描いて、それに向けてこんなことをやっていますということを話すのがサステナビリティではないと思っています。たばこ会社のフィリップ モリス ジャパンが、売っている商品そのものが社会にインパクトがある最重要課題と認識して行動していくという当社のサステナビリティ戦略に繋がっています。

それを考えていくこと自体が自己否定にもなり得るのですが、自分の逆転人生の経験を踏まえて、建設的な自己否定からイノベーションを生みだし、相容れない2つのものをしっかり受け止めて、その中から解決策を見出していくには当然、忍耐もいりますが、そこにやりがいも生まれますし、コミットメントも生じるわけですよ。

大谷: 今のお話で、なぜ今この時期に井上さんがフィリップ モリス ジャパンを選ばれたのかがよく分かりました。

「私によくて、世界にイイ。」

大谷: では最後の質問ですが、エシカは「私によくて、世界にイイ。」をグランドコンセプトにしています。井上さんにとっての「私によくて、世界にイイ。」は何ですか?

井上: 先ほども申し上げましたが、私は奈良県東吉野村の出身で、そこには今でも母親が健在で1人で住んでいます。東京からは遠いですが、私は長男なので、年に何回かは訪ねていきます。

井上: 私はもともと渓流釣りが好きで、世界中いろいろなところで釣りを楽しんできました。その中で、実家に帰って渓流釣りをするというのは私の中では非常に重要なんですね。

ここ数年、東吉野村も過疎化が進んでいるのですが、その中でも都会から村に定住しようという人がいて、先日、その人たちが東京で「東吉野村の過去と未来を語る会」を開催されたので、私も参加させて頂きました。

井上: 過疎化や高齢化の東吉野村ですが、自然に囲まれた村に興味を覚えた若者世代が村外から東吉野村に定住してきて、新たなコミュニティを作ろうとしています。自分の出身地であって母親がそこにいて、好きな渓流釣りができてと繋がっていることは自分にとってとても重要なポイントで、まさに「私によくて、世界にイイ。」ことだと思いますね。

大谷: 長時間、貴重なお話をありがとうございました。

井上: こちらこそありがとうございました。

【ethica編集長対談】フィリップ モリス ジャパン・ 井上哲さん(前編)

フィリップ モリス ジャパン 副社長 井上哲

奈良県東吉野村生まれ。高校卒業後、米国California Lutheran Universityに留学。帰国後に東京大学法学部に学士入学し、1989年、松下電器産業(現パナソニック)に入社。アンダーセン・ビジネスリスク・コンサルティング、アップルなどを経て、2007年、フィリップ モリス ジャパンに入社。趣味は渓流釣り。

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。

創業8期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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