(第32話)「お気に入りの器を永く大切に。金継ぎの魅力」キコの「暮らしの塩梅」
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(第32話)「お気に入りの器を永く大切に。金継ぎの魅力」キコの「暮らしの塩梅」

「私によくて、世界にイイ」が実現できる、エシカルな暮らしのカタチってなんだろう。仕事に家事に育児に……。日々生活を回すだけでも大変な私たちにとって、新しく行動を起こすのはエネルギーも時間も使うし、ハードルが高く感じてしまうもの。

でも日々の暮らしのなかで、少しでも”良い”につながることができたら?

当たり前の毎日のなかで、大切な家族も、世界も、そして私自身もほんのちょっぴり幸せになるような選択をしていけたらいいなと思うのです。

第31話では、日本の伝統的な染色塗料である柿渋についてお伝えしました。Art&Culture最終話となる今回は、日本に古くから伝わる伝統技術・金継ぎ(きんつぎ)についてお話したいと思います。

お気に入りのものを長く大切に使い続けたい

お気に入りの器が割れてしまって、悲しい思いをしたことはありませんか?

 

どんなに大切に使っていても、うっかり落として割ってしまったり、洗っている最中に欠けてしまったりのトラブルは避けられないもの。

 

せっかく買ったのに、割ってしまうのが怖くてなかなか普段使いできない、戸棚の奥にしまいこんでいる……なんてことも。

でも修復する技術を知っていたら、そのハードルは少し下がるのではないでしょうか。

 

できることなら、割れても欠けても、お気に入りのものを長く大切に使い続けたい。

そんな思いに寄り添ってくれるのが、金継ぎです。

室町時代から続く金継ぎの歴史

「金継ぎ」とは、天然の接着材である漆(うるし)の強い硬化作用を利用して、壊れてしまった陶磁器を修復する日本の伝統技法です。

継いだ部分を「金」や「銀」で装飾することから、金継ぎと呼ばれています。

 

金継ぎの技術が生まれた背景は諸説ありますが、「茶の湯」の文化が花開いた室町時代のころに始まったと言われています。

 

当時、茶の湯は、大名や商人など、富と権力を持った人々の嗜みであり文化でもありました。

使う茶器もはるばる中国から渡ってきた、とても高価で貴重なものばかり。

 

そう簡単には手放せない、代わりのない器を大切に使いたいという思いに応えるものとして、金継ぎの修復技術は広がっていったと考えられています。

禅の精神に基づいた美意識

現代は、モノが壊れたら処分して新しいものを買う、という考え方が主流です。

 

ですが金継ぎは、「壊れた」という出来事も、ものを大切に使ったからこそと考え、その傷跡もあえて金で装飾して目立たせ、美しいものとみなすのです。

継いだ箇所は「景色」と呼び、できあがりがどんなものに見えるか、完成するまで想像を膨らませながら、そこに唯一無二の美を見出し、愛でて楽しんでいたと言います。

 

繕うことを通じて、それ自体の芸術的・美的価値を加える金継ぎ。

本来ならば「割れてしまった」というマイナスに捉えがちなところを、金継ぎの一手間を経て良いもの・美しいものとして捉え直す、なんとも粋な文化だと感じます。

 

因みに、西洋にも修復の技術はありますが「いかに元通りにするか」を目的とし、材料も合成樹脂などの化学的なものが中心でした。実際の使用には耐えられない観賞用に修復されたものが多かったと言われています。

暮らしに金継ぎを

伝統工芸と聞くと、難しいもの、技術がいるものと感じますが、実は金継ぎで使う材料には、身近なところで手に入るものも。初心者でも簡単に始められるキットが、インターネットや東急ハンズなどの実店舗でも販売されています。

 

肌や粘膜に付くとかぶれやすい漆を使うということでハードルを感じる方もいらっしゃるかもしれません(かくいう私も漆にかぶれた経験があり、敏感になっています……)。

しかし最近は、「新うるし」(※注)という、取り扱いやすい植物性樹脂や安全性が確認された接着剤などがあり、金継ぎの方法も多様化し、気軽に始められるようになってきました。

 

プロにお願いするのもいいですが、自分で繕うことができたら、より愛着が湧くような気がしませんか?

 

全国各地でワークショップや講座もたくさん開かれているので、機会があれば参加するのもおすすめです。

自宅でもできる方法を紹介した本も出ているので、気になった方はぜひ手に取ってみてくださいね。

 

(※注)主成分にうるし科の植物の天然樹脂を使用した塗料のこと。釣竿作りに適した塗料として長年親しまれてきたが、近年本漆と同様に使えるものとして、金継ぎにも多く使われるようになっている。完全に乾燥するまでに数ヶ月かかる漆と違って、乾くのが数十時間程度と早く、乾燥後の安全性も確認されているため安心して使えるものと注目されている。

失敗はない。金継ぎの魅力

仕上がりが気に入らなくても、何度でもやり直せるのが金継ぎの魅力。

失敗を恐れず、おおらかな気持ちで楽しみたいものです。

 

大量生産・大量消費が当たり前の現代。

壊れること=価値が下がる・もう使えないものとして処分する、使い捨ての文化が根ざしてしまっています。

 

そんななかで、ものを大切に思い愛おしみながら繕う金継ぎの心は、単なる修復方法というだけではない、大切なことを教えてくれているのではないでしょうか。

 

壊れたことも傷跡も「仕方のないこと」として受け容れつつ、繕うことで、より美しいもの、自分だけのものと捉え直す。

日本の伝統技術に息づくそんな粋な精神を、日々の暮らしのなかにも活かせていけたら素敵ですね。

【連載】キコの「暮らしの塩梅」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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