【ethica編集長対談】動物ジャーナリスト・森啓子さん(後編)
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【ethica編集長対談】動物ジャーナリスト・森啓子さん(後編)

Photo by Jordi Galbany

中編に続き、今回の編集長対談は動物ジャーナリストの森啓子さんをゲストにお招きしました。

森さんは20年以上も前からゴリラに魅せられ、特にここ10年間というもの1年の半分以上はアフリカに住んでゴリラを追いかけているという女性です。そんな森さんにゴリラの魅力を伺いながら、これまでの人生を振り返っていただくことにしました。

生物多様性を守って次世代に残したい

大谷: その後、サラヤさんと森さんはどういう関係になっていったのでしょうか?

森: サラヤさんが「ボルネオ保全トラスト・ジャパン」というNPO法人を作って、活動をずっと続けているということは聞いていました。でも、特に縁を持たなかったですね。私もゴリラのことで忙しかったこともありましたし。

ところが2019年になって、14年ぶりに社長の更家さんとお会いしてお食事を一緒にさせていただく機会があったんです。その時、更家さんから「ウチはオランウータンの保護を14年間ずっとやっているんですよ。あなたもゴリラをずっと追いかけているんでしょう? だったら保護したらどうですか? NPOを作りなさいよ。お互いこの先、そう長くは生きていられないんだから、一緒に生物多様性を守って次世代に残しましょうよ」といわれたのです。たしかにそうだなあと思って、今年2020年の1月に立ち上げたのがNPO法人「ゴリラのはなうた」なんですよ。

大谷: なるほど、そういうわけですか。現在はどのような活動をされているのでしょうか?

森: 本格的にはまだまだこれからですね。というのも、いろいろなことをやろうと思ってルワンダで予定していたことが、コロナ騒ぎで行けなくなってしまいましたから。今年から来年にかけて啓蒙活動としてトークショーを3回やろうと思っています。ちなみに、そのうちの1回はオランウータンの研究者である久世濃子さんとのトークショーで、2020年の年末にYouTubeで公開しました。久世さんはまだ小さなご自分のお子さんをおぶって熱帯雨林に入ったという人です。大型類人猿の保護をやっていて、しかも自分の子どもを育てた女性2人がトークショーをやったのは世界でも初めてだったみたいですよ。

鼻紋のことを知るのは、いわばゴリラ研究の第1歩

大谷: 今のお話も面白いエピソードですね。それで「ゴリラのはなうた」ですが、例えば、どんなことを予定されていたのですか?

森: 私が撮影している火山国立公園ではゴリラ1頭1頭に名前がつけられています。ゴリラはどうやって個体識別するかというと、鼻紋という鼻のシワで見分けるんですよね。私は1頭1頭のゴリラの鼻紋を写真に撮って、グループごとの家系図のようなものを作っています。

大谷: 鼻紋というのは、人間でいえば指紋のようなものと考えればいいですか?

森: ええ、そうです。シワの大きさや深さ、形状が1頭1頭すべて異なり、しかも一生変わらないので、それでこのゴリラは誰と見分けることができるんです。鼻紋のことを知るのは、いわばゴリラ研究の第1歩といってもいいんですよね。公園の職員であるトラッカーたちは長年の経験と記憶で識別しているんですが、入ったばかりの若いトラッカーたちはなかなかそれが覚えられない。そこで、その鼻紋の写真の撮り方や編集処理の仕方などを教えて、ゴリラのモニタリングを一から支えようという企画を考えていました。来年以降、新型コロナ感染症が一段落したら、機会を見て何とかやりたいと思っています。

支援したいトラッカー達と森さん

1人でも多くの人にゴリラの魅力や素晴らしさを伝えたい

大谷: お歳は敢えてお聞きしませんが(笑)、森さんはまだまだ現役ですよね?

森: もちろんですよ(笑)。これまで写真の専門学校できちんと教育を受けたことがないので、もっと上達したいと思って、今、学校に通っているんですから、まだまだ引退するわけにはいかないです。

それと、私にはどうしても叶えたい夢が2つあるんです。1つはここ10年くらい撮り溜めてきた映像が全部で約2500時間分もあるので、そこから4、5本の作品を作って発表して、1人でも多くの人にゴリラの魅力や素晴らしさを伝えたい。

そしてもう1つ。イギリスのブリストルで2年に1回、「ワイルドスクリーン」という野生生物や自然環境をテーマにした映画祭が開かれていて、毎回世界中から500本ほどの優秀な作品が集まるんですが、この映像祭で賞を取りたいんですよね。これまで日本の作品ではNHKが、ダイオウイカを追ったドキュメンタリーで部門賞を獲得したことがあるんですけど大賞は残念ながら逃しているんです。ですから、何とか大賞を取りたいんです。あはは、夢ですね。

大谷: 夢が叶うといいですね。

森: はい、絶対に叶います(笑)。

シルバーバックの求愛 ©Keiko Mori / Rwanda Development Board

マウンテンゴリラの赤ん坊 ©Keiko Mori / Rwanda Development Board

Good for me,Good for the world.(私によくて、世界にイイ。)

大谷: では最後の質問です。ethicaのグランドコンセプトは「私によくて、世界にイイ。~GOOD FOR ME,GOOD FOR THE WORLD」ですが、森さんにとっての「私によくて、世界にイイ。」とは何でしょうか?

森: 私は今、300頭のゴリラと友だちになっています。彼らはみんな私のことを覚え、知っています。私は彼らには1日でも長く生きてほしいし、そのためには国立公園でゴリラを見る人たちには手洗いや消毒についてアドバイスしてあげたいし、見学者にゴリラの暮らしぶりを学ぶことの面白さも教えてあげたい。それらはすべて、私にとっていいことです。

ゴリラは幸せな時に鼻歌を歌うんですよ。「ゴリラのはなうた」という名前もそこから来ています。ゲリラがそばにいて不安な時や群れの誰かが下痢をしていたりすると、リーダーであるシルバーバックは絶対に鼻歌を歌いません。逆にみんなが健康で、おいしい食べ物を見つけたりして本当に幸せな時、群れのみんなで鼻歌を歌います。そういう鼻歌が永遠に続くことは私にとっていいことなのはもちろんですけど、それってゴリラにとってもいいことなんですよ。

そして、ゴリラからは学ぶことがたくさんあります。それは世界にとっていいことなんじゃないでしょうか。私はそう思っています。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

大谷: 長時間、貴重なお話をお聞かせいただきありがとうございました。

森: こちらこそ楽しかったです。ありがとうございました。

(前編)を読む>>>

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「ゴリラのはなうた」支援はこちら

公式サイト: https://www.hummingofgorillas.org

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森啓子(動物ジャーナリスト)

1970年代にテレビ業界に飛び込み、情報番組や料理番組、野生動物を題材にしたドキュメンタリー番組の制作に携わってきた。動物の撮影歴は20年以上。マウンテンゴリラとの出会いは2008年。以来マウンテンゴリラに魅せられ、 アフリカ・ルワンダに居を構えてマウンテンゴリラを撮影する生活を10年前から続けている。

<主な担当番組>

TBS「新世界紀行」
テレビ朝日「素敵な宇宙船地球号」
NHK「地球!ふしぎ大自然」「ハイビジョン特集」

Photo by Jordi Galbany

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。

創業9期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開中。

提供:サラヤ株式会社
https://www.yashinomi.jp

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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