【ethica副編集長対談】RICCI EVERYDAY 仲本千津さん(中編)
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【ethica副編集長対談】RICCI EVERYDAY 仲本千津さん(中編)

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

前編に続き、今回の副編集長対談はウガンダ発のファッションブランド「RICCI EVERYDAY(リッチーエブリデイ)」創業者の仲本千津さんを訪ねました。

「RICCI EVERYDAY」は、豊富なバリエーションのアフリカンプリントの中でも、ひときわカラフルでプレイフルな生地を使用し、デザイン性のみならず機能性も兼ね備えたバッグやインテリアアイテム、アパレルを展開しているウガンダのライフスタイルブランドです。

ブランド創業より5周年を迎えた仲本さんに、起業までの道のり、今後の事業展開、将来の夢についてお話を伺いました。

ナカウチ・グレースという1人の女性との出会い

萱島: ウガンダでアフリカンプリントと出会って、これをビジネスにしようと思ったのはなぜですか?

仲本: ローカルマーケットをうろうろしていた時、床から天井まで壁一面、バーッとアフリカンプリントが積み重なっているのが目に入って、ワァー、素敵と思いました。日本ではなかなか見ないような色合いや柄をあしらった布だったので、棚から取り出してみては毎回毎回発見があって、一緒にいた友達も楽しいって喜んでいたのをみて、これは絶対にビジネスになるなと思いました。

萱島: アフリカンプリントってエネルギーに溢れていて、元気になりますものね。そこから、どのように事業を始められたのですか。ウガンダの直営工房ではシングルマザーや元子ども兵といった社会的に疎外された人々を作り手として雇用されていますね。

仲本: もともとはナカウチ・グレースという1人の女性と出会ったことがきっかけでした。彼女は4人の子どもを抱えたシングルマザーでしたが、当時、彼女には私の友人の家を掃除する仕事しかなくて、月の収入が1000円ぐらいで生活していたんです。

スターティングメンバー達(左から4人目がナカウチ・グレースさん)

彼女は運よく畑を持っていたので、自給自足の生活はできていたんですが、例えば子どもたちを学校に行かせるとか、風邪にかかった時にすぐに病院に連れていって薬をもらうといったことはできていなかったんです。ウガンダでは、教育を受けて、しかも最高峰の大学を出ていないと定期収入を得られる仕事には就けないというのが実情で、ほとんどの人が自営業で、例えば道端でものを売ったり、男性だとタクシーの運転手になったり、どうにか日々お金を稼いでいました。

ただ、ナカウチ・グレースはなけなしのお金を投資して、自分の生活を変えようという考えでちゃんと行動に移していて、そこが他の人とは違うなと思って、何かやるなら彼女を誘って一緒にやりたいなあというのがきっかけでした。

彼女を巻き込んで、他の人にも声をかけて3人プラス私の4人で始めたんですけど、ある時聞いてみたら皆シングルマザーだといっていて、調べてみたら成人女性の30%くらいがシングルマザーとして生活しているような統計が出てきたんです。

なかでも、都市部で暮らすシングルマザーは、土地もなければ畑もないので、家の家賃も食費も自分で払わなければならなくて、追い込まれやすい状況にあるんですね。農村部に暮らすシングルマザーだったら、実家に戻れば畑と家はあるので、助けてもらいながら何とか暮らしていけます。でも、そうじゃないと食べ物を買うことすらままならない状況で、追い込まれている人がたくさんいるんです。

そういう人たちの中にも10年とか真面目に働いてきて技術を持っている人もいます。そんな人たちがまずは報われるように、自分自身を取り戻すきっかけができればいいなあ、と。ただ、思っているだけでは何も変わらないので、取りあえず自分で始めてみようと会社を立ち上げたわけです。

萱島: シングルマザーが生まれやすい土壌があるんですね。

仲本: 社会的にそういう土壌はあると思います。結婚に関する価値観というか概念が日本とは全く違っていて、日本だったら婚姻届を出して、法律的な拘束力が生まれると思うんですけど、ウガンダではそういうのがなくて、コミュニティの中で認められればそれでいいということなのです。

萱島: 離婚も同じような感じですか。

仲本: そうです。双方の同意があれば成立するといった、そんな感じです。

慣習的に一夫多妻制があったり、男尊女卑の考え方も根深くて。家庭内暴力が起こりやすかったりとか、自分の知らないところで別の人と家族を作っていたりとか、夫婦間の問題が起こりやすい状況ではありますね。そうすると女性が子どもを連れて家を出ていくということが結構頻繁にあったりします。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

事業を通じて、彼女たちの自信につながった

萱島: 事業を通じて、そうした女性たちの生活向上を目指されてきて、今年がブランド創設5周年ですよね。この5年間で彼女たちの暮らしや生活には変化がありましたか。

仲本: 暮らしや生活は、今までまともに収入を得られていなかった人たちが定期的に、しかも一般的なテーラリングをやっている人の2倍3倍の給料をもらえるようになったので、それによって家族がちゃんと学校に通えるようになったり、おうちが補強されて立派になったりとか、少しずつ変化は出てきましたね。

そういう物質的な変化に加えて、彼女たちの内面がすごく成長していると感じています。それは毎月決まった金額の給料が入ってきて、家族を支えることができるようになったとか、日本のお客さんを喜ばせる商品を自分の手で作っていることとか、いろいろなことが相まって彼女たちの自信につながっていて、もともとは斜め45度下を向いていて、もじもじしながら人にお金を借りながらみじめな思いをしながら生活していた人たちが、いや、もう男なんていらないといった(笑)感じで、強く楽しく生きている姿を見ると、すごく変わったなあと思いますね。

萱島: 嬉しいですよね、そうやって皆さんが前向きになったことを感じることができるというのは。

仲本: そうなんですよ。最近よくレジリエンスが大切だといわれますけど、何か困難なことが起こったとしても、おそらく今の彼女たちだったら、ミシンを1人で買って生活を立て直したりするような、自分が頑張らなきゃって踏ん張れる、そういう力がついてきたんじゃないかと思います。

幸運を運ぶ人

萱島: 「RICCI EVERYDAY」で扱っていらっしゃるアケロ・バッグのアケロって、現地の言葉で「幸運を運ぶ人」という意味だとお聞きしました。

仲本: ええ、そうなんです。私がウガンダに初めて行った時、現地の女性が「今日からあなたはアケロだ」といって私につけてくれた名前なんです。それがとても気に入って、自分がプロダクトを作った時には、その名前を付けようと思っていました。

萱島: 仲本さんって本当にアケロな人ですよね(笑)。ウガンダの女性に頑張る力を授けてくれたんですから。

仲本: いやいや、そんなことはないですよ(笑)。それは彼女たちが毎日ちゃんと、淡々と粛々と仕事に向かっているということが成せる業だと思いますから。

Photo=Ura Masashi ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

萱島: 現地の工房にはよく行かれているんですか。

仲本: 現地にいる時にはほぼ毎日出勤しています。たまに地方出張があるので、その時には行けないですけど、日々のコミュニケーションがすごく大事だなと思っていて、誰かに言われたんですけど、いくら人事研修とかやってもその人との5分のコミュニケーションに勝るものはない。毎日5分でもいいからその人と顔を合わせて、困っていることはないかとか、何かフィードバックをしたりとか、そういうことのほうがよっぽど大事だといわれて、なるほどなと納得しました。

萱島: 何かあった時に言い出しやすい環境を作るということは大事ですよね。

仲本: ええ、そうなんです。いつでも、こっちはちゃんと見ているよっていうサインを出すというか、それは日々のコミュニケーションがあるからこそできるのかなと思うのです。

専業主婦だった母が大活躍

萱島:  創業当初、お母様をビジネスパートナーとして選ばれたと聞いています。

仲本: 実はその時はお金がなかったというのが一番大きな理由なんですけど(笑)、私は1年中ほとんどウガンダにいて生産を見ていたので、誰かが日本で販売をやってくれないとお金が回らないなと思っていて、実際にお金がない中で誰がそういう仕事をやってくれるかなと考えた時に、うちの母の顔が浮かびました。

萱島: お母様も起業のご経験があったのですか。

仲本: いいえ、そういうことはないです。専業主婦だったんですけど、私は母には、お店に立って販売をするということだけを期待していたんですが、それに付随して在庫を整理したり管理したり、百貨店さんとのやり取りをしたりと、いろいろなことが付きまとってくるわけじゃないですか。その都度、これはどうしたらいいのかなと相談はされたんですけど、全部を完璧にこなしてくれて助かりました。

私は4人兄弟なんですけど、4人子どもがいて父がいて、さらに祖母もいたんですね。1日にそれぞれがいろいろなスケジュールを持っていて、それを母は毎日段取りを立てて全部完璧にこなしていたんですよね。例えば私がお弁当が必要だとか、サッカーをやっていた弟の送り迎えをするとか、買い物や洗濯もしなくてはなりませんし、そのマルチタスクを管理する能力って専業主婦ならではだなと思いました。

あとは責任感の強さというか、その一つ一つが自分の家族に関わることだから、ちゃんと遂行しなくてはいけないという気持ちもあったように思います。

萱島: お母様はその頃おいくつくらいだったのですか。

仲本: 60歳少し手前ぐらいでしたね。今は人生100年時代だから、第2の人生だと母はそう言っています。

萱島: 健康寿命が伸びて、働き方や新しいライフスタイルを見つけるということが大事な時代になってきていますが、お母様は先駆者ですよね。

仲本: 60歳になって新しいことにチャレンジするのは自信に繋がったんじゃないでしょうか。二つ返事でやるわよといってくれましたが、母にしてみると、ここまでやらされるとは考えていなかったと思いますけどね(笑)。母ができないことは私がやって、私ができないことは母がやるという、2人で1人という感じでずっとやってこられたのはよかったですね。

(後編に続きます)

 

仲本千津(なかもと・ちづ)

早稲田大学法学部卒業後、2009年一橋大学大学院法学研究科修士課程修了。大学院では平和構築やアフリカ紛争問題を研究し、TABLE FOR TWO Internationalや沖縄平和協力センターでインターンを務めた。大学院修了後は、三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2011年同行退社し、笹川アフリカ協会(現ササカワ・アフリカ財団)に入り、2014年からウガンダ事務所駐在として農業支援にあたった。2015年ウガンダの首都カンパラでシングルマザーなどの女性が働けるバッグ工房を立ち上げ、母仲本律枝と出身地である静岡葵区に株式会社RICCI EVERYDAYを設立。アフリカンプリントを使ったファッションブランドを日本で展開する。また2016年ウガンダで現地法人レベッカアケロリミテッドを設立し、マネージングディレクターに就任。2016年第1回日本AFRICA起業支援イニシアチブ最優秀賞受賞、2017年日経BP社主催日本イノベーター大賞2017にて特別賞、第6回DBJ女性新ビジネスプランコンペティション女性起業事業奨励賞、第5回グローバル大賞国際アントレプレナー賞最優秀賞を受賞。

ethica副編集長 萱島礼香

法政大学文学部英文学科卒。総合不動産ディベロッパーに新卒入社「都市と自然との共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げと推進を経験。IT関連企業に転職後は、webディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネット、文化庁・文化遺産オンライン構築などがある。その後、国立研究機関から発足したNPO法人の立ち上げに参加し、神田神保町の古書店をWEBで支援する活動と、御茶ノ水界隈の街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。201811月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

萱島礼香

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