ネパールの首都、カトマンズを歩くと目に付くのは、沢山のお茶屋さんです。さまざまなお茶葉を量り売りするお店が並び、観光客のお土産としても人気です。通りを歩いていると、店先で店主がお茶を飲んでいることもあります。
そんなお茶大国のネパールですが、私がホームステイしていた山間の村ももちろん例外ではありません。毎日、午前と午後に必ず一度ずつのお茶休憩があり、村のあちこちで作業する人々が各々自分の家でお茶を楽しみます。友人宅やお隣さんの家でお茶休憩することもあります。
私も村でのアクティビティの日は、何度かホームステイする家で、おばあちゃんの淹れてくれた温かいブラックティーを頂きました。その瞬間は何とも心地よく、一日のうちで一番心待ちにする時間でした。
雪の降ったある日、寒い寒いと言いながら、温かいカップを握りしめていた私は、ふと自分の周りを見回して、独りでに感動したことがあります。共に活動するネパールの学生、ホームステイ先のおばあちゃん、そして私が、文字通り膝を交えて座っているのです。その時間は単なる休憩ではなく、村の人々にとって大事なコミュニケーションの場であることを、その瞬間に認識しました。
その日あった失敗ごとを話したり、遠くに住む親戚の噂話をしたり。取るに足らない話ばかりですが、それぞれの表情から、この空間と時間がいかに個人の日常生活にとって意味のあるものなのか推し量ることが出来ます。
気付けばカップの中身は無くなっていましたが、誰もしばらく席を立とうとはしないのでした。