読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第2章:ベトナムと日常への気づき編(第1節) 「読者」と「ethica編集部」の交流の場(オンラインオフ会)連動企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第2章:ベトナムと日常への気づき編(第1節)

ホーチミン像の前で式典を行う様子

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第二章は「ベトナムと日常への気づき」と題して、全四節にわたりお送りします。ベトナムでの日常生活をヒントに、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第2章 ベトナムと日常への気づき

第1節 伝統衣装の可能性

皆さんが最後に、「伝統衣装」と呼ばれるものを着たのはいつですか?私は数年前の花火大会で、友人と浴衣を着たのが最後だったような気がします。和装に袖を通したのは、七五三、成人式、卒業式きりだという人も多いでしょう。

機能的な衣類が増える中、少し歩きづらかったり息苦しかったりする伝統衣装は不便ですが、どうしても着たくなる瞬間はあるものです。ところが昨今、「和装」が売れないという話をよく聞きます。文化というのは可変的ですから、生活スタイルの変化によって和服が消滅する日が来ても全くおかしくはありませんが、和服の「良さ」も同時に消えてしまうのはなんだか惜しい気がします。

一方、ベトナムでは、アオザイ(アオヤイ)と呼ばれる伝統衣装が街のいたるところで目につきます。それも多様な年齢層の人々が着用しているのです。

今回は、このアオザイを通して、伝統衣装のもつウェルビーイング的可能性について書き綴っていきたいと思います。

アオザイに身を包んだ女性たち

私はベトナムを三回ほど訪れたことがありますが、中でも一番印象に残っているのは、二回目の訪問です。

時期は二月、ちょうど旧正月のタイミングでした。ホーチミン空港に降り立つなり、街中はお祝いムード一色。色鮮やかな街飾りや、豪華な花がいたるところにありました。そんな大都市を抜けて私が向かったのが、ホーチミンから車で6時間ほど離れた田舎町にある友人の実家です。彼は一回目の訪問で親しくなった友人で、二回目の滞在となる今回は実家にホームステイさせてくれるとのことでした。

家の軒先にある正月飾り

よく笑うお父さんと、シャイなお母さん、元気のありあまった妹が出迎えてくれ、滞在はスタート。寺院のある近くの山をハイキングしたり、市街地まで出てショッピングしたりと、束の間のホリデイを楽しみました。

近所にあった大きな寺院

そして迎えた旧正月当日。朝になると、子供たちはお年玉をもらいます(恥ずかしながら、二十を過ぎた私も断り切れずお年玉をたくさん受け取りました)。食事時には、豪華な料理が食卓に並び、正月太りを覚悟。そして次には、家族みながアオザイを着て登場です。家の前で記念写真を撮るためとのことで、私もカメラマンとして働いたり、あるいは皆と一緒に写ったりしました。

友人に聞くと、どうやらそれは毎年やっているらしく、どこの家族もやるとのこと。私たちはそのまま親戚挨拶に行き、近所に住む祖父母のところへ。おじいちゃんが、孫の姿を見て嬉しそうに話しかけていたのを、今でもはっきり覚えています。あの時、家族の幸せをおすそ分けしてもらった気がします。

友人と妹の写真を撮る、お父さんの後ろ姿

アオザイはベトナム人にとって、とても身近な正装です。学校の制服として採用されることも多く、小さな時から常にアオザイを着て過ごしていると言っても過言ではありません。冠婚葬祭はもちろん、正装として扱われるので重要な会議に着て行っても問題ありません。

アオザイはオーダーメイドで作ることが多く、自分の体にピタリと合ったものを着るのが普通です。それも、服それ自体に愛着を感じる要素なのかもしれません。

伝統衣装の可能性

さて、こうした体験は、私に伝統衣装の可能性を感じさせました。それは、伝統衣装が世代間の意思疎通のツールとして機能する、ということです。

家族と集まり一枚の写真に収まったり、親戚と笑顔を交わしたりする瞬間には、いつもアオザイがありました。ベトナムの人々は、アオザイを媒介として、上と下の世代の交流を行っているのです。

世代間の意識格差というのが社会問題化しています。「老害」という言葉はそれ自体とても攻撃的で排他的なものです。あるいは、コロナ禍では特に「若者」が批判の的となったりします。

そうした意識格差を解消するのは、やはり「対話」です。双方の誤解や偏見を解くためにはいつでも、目の前の相手と意思疎通を図ることが求められます。ベトナムの人々が、アオザイを中心に輪を形成したように、私たちも和装という伝統を使って、世代間交流を実現出来るのではないか、と私には思えます。

成人式で親の袴を着る、というのも立派な世代間交流です。浴衣を着ていたら電車で年配の女性に声をかけられた、なんてことも起きます。

意思疎通のツールとして伝統衣装を積極的に活用していくことが、世代間共生を実現する、ひいてはウェルビーイングを実現するヒントになるかもしれません。

浴衣での記念撮影

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話

題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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