読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第2章:ベトナムと日常への気づき編(第3節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第2章:ベトナムと日常への気づき編(第3節)

雨がもたらすベトナムの豊かな自然

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第二章は「ベトナムと日常への気づき」と題して、全四節にわたりお送りします。ベトナムでの日常生活をヒントに、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第2章 ベトナムと日常への気づき

第3節 雨との付き合い方

急に暑くなったり、寒くなったり、大雨が降ったり、山火事が起きたりと、近年は異常気象に悩まされています。

急に移り変わる天気を前に、地球温暖化を肌で感じ焦燥感を抱くのはもちろんですが、同時に天候というものに無力な自分を見つけ、地球システムの尊大さを感じることもあります。

特に「雨」という気候現象に対しては、私たちは限りなく無力です。頭上に屋根を作り、しのぐことは出来ますが、それは雨を避けているだけで克服したことにはなりません。雨雲の下に巨大な膜を張れば、私たちはほとんど不自由なく動き回れるでしょうが、それには労力がかかりすぎます。膜のメンテナンスは大変だし、そもそも遮られた雨粒はどこかで滝となって降り注ぐでしょう。

すると、私たちは雨の克服を、「雨に勝つこと」ではなく、「雨と暮らすこと」に求める必要があるような気がしてきます。雨と共に暮らす。それは一体どういう生活なのか。ベトナムの習慣を例に探っていきたいと思います。

街に市場

ベトナムを一言で表すならば「スコールの国」です。スコールは突然激しい雨と共に風が吹く現象で、ベトナムでは当たり前の光景です。慣れてしまえばどうと言うことはないただの「通り雨」ですが、ベトナムに着いたばかりの頃はその読めない天気に翻弄されました。スコールは一時的な現象ですから、待っていればそのうち元通りの天気になるのですが、スコールの最中は台風並みの暴力的な豪雨に恐怖を感じるほどです。

私もベトナム滞在中には、何度もスコールに見舞われて、「静まってくれ!」と拝んだりしましたが、途中からは雨そのものよりも別のことが気になり始めました。カラオケです。雨になると必ずどこからともなくカラオケの音が聞こえてくるのです。気持ちよさそうに歌う知らないおじさんの声が、ザァーザァーという雨音の向こうからやってきます。最初のうちは家の近くにカラオケ好きの人がいるのだな程度にしか考えていなかったのですが、ある時街の外れでスコールに出くわした際、家まで帰る道すがら何度もカラオケの音を聞いたことで、「これはベトナム特有の何かだ」と気づきました。

スコールの直前。カンカン照り

さっそくそれをベトナム人の友人に聞くと、やはり「カラオケと言えば雨、雨といえばカラオケ」なのだそう。一応の口実としては、雨で外に出られないからカラオケで楽しむ、というようなことらしいのですが、私にはどうもカラオケは「雨のせい」ではなくて、「雨のおかげ」のような気がしてなりません。

つまり、ベトナムの人々は雨に対してとても能動的なのです。ただ、外に出られないのは仕方がないから、という受動的な態度で雨と付き合うのではなく、雨が降ってきたからカラオケの時間だ!と、雨と能動的に付き合うことが出来る。雨と共に暮らすとは、ただ雨を甘んじて受け入れるのではなく、雨と有効な関係を築くことです。ベトナムの人々はそれを実践しているのです。

大きな宴会でもスコールに備えてテントが張られることが多い

読者の方の中には、雨で憂鬱になってしまう人も多いかもしれません。だからと言って私たちには雨を拒絶することは出来ません。ならば雨と共に暮らす方法を探るべきではないでしょうか。雨に晒されることも、雨と戦うこともしない、雨と共生する道を私たちは見つけることが出来るはずです。

そしてこれは雨に限らず、一般にネガティブなものとされること全般に言えるでしょう。例えば、別れ。大切なものとの別れを経験した時には、別れに自分が飲み込まれることも、あるいは別れを受け入れまいと戦うこともせずに、別れそれ自体と共存することが、個人をより深い人間にしていく気がします。そうして醸成される豊かな人間性の上に、ウェルビーイングは自ずと現れると私は思います。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

 

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話

題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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