(第4話)知ってもらえなければ何もなかったことと同じ [連載企画]植物調合士・オーガニックビューティセラピスト 坂田まことさん
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(第4話)知ってもらえなければ何もなかったことと同じ

Photo=Yuji Nomura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

坂田さんは現役のセラピストでありながら「女性の新しい働き方」を創出するためのオーガニックビューティセラピストを育成するスクールを全国で展開。さらに自社オリジナルのオーガニック化粧品の企画・開発も行い、ご自身の子育てと両立しながら、女性の素肌と心を癒すために起業家として精力的に活動されています。

(第3話)に続き、エシカ副編集長・萱島礼香が坂田さんを訪ね、2015年に自宅の一室でオーガニックエステサロンを開業してから現在にいたるまで、次々と夢を叶えてきた坂田さんに、起業までの道のりや今後の事業展開、将来の夢についてお話を伺いました。

知ってもらえなければ何もなかったことと同じ

 

萱島: 坂田さんはオーガニックブログを10年以上書き続けていらっしゃいます。現在も頻繁に更新されていて、夢や信念を語る言葉に力があるなあ、むちゃくちゃ求心力があるなあといつも感心して拝見しているんですけど、発信することは、坂田さんにとってどんな意味をもちますか?

 

坂田: 18歳から28歳までは家庭にいる時間が長かったので、結局自分がどんなに強い思いを持っていても、どんなに苦労を乗り越えていても、どれだけ素晴らしいものに出会ってどんなにいいことをしていても、それを外に伝えないと誰も知ってくれないということを痛感しました。

「私はこういう人間です、こんな思いを持っているんです、こういう仕事がしているんですよ」というようなことを私が自分で伝えなかったら、自分のことを誰も評価してくれません。特にオーガニック・エシカルな仕事はまだマイノリティ(少数派)なのでその魅力すらお客さんには届いていません。「知ってもらえる」だけで最初は良かったわけです。

私の言葉の中には、他から学んだ影響力のある格言みたいなものが多くあります。

その中の一つとの出会いとしては、娘がジブリが好きで宮崎駿さんの展示会に行った時のことです。「知ってもらえなければ何もなかったことと同じ」という宮崎さんの言葉がポスターに書いてありました。

「作品よりもポスターに時間をかける」とも書いてあって、その理由は「知ってもらわなければ、観客は誰もここに来ない。ということは、どんなに映像が素晴らしくても、まずはここに来てもらうきっかけを僕たちが作らなければ、僕たちは何もなかったことになる」というメッセージがあって、子どもをだっこしながら、そういうことかとすごく感動したことを今でもよく覚えています。

 

萱島: おっしゃる通りですね。とても説得力があります。

 

坂田: 伝えることって何かを生み出すことよりも重要なんですよ。

私たちって結局、何かをやる時って出来上がったものに自信を持ってから伝えることが多いじゃないですか。例えば製品もそうですけど「コスメが完成しました。PRしましょう。」でも、それじゃ遅いわけです。作った過程(プロセス)が素晴らしいのに、そのことを伝えられていない。作っている段階でお客さんの意見を採り入れて、デザインやテクスチャーが変えられた方が絶対にいいのに、何も伝えないということは長い期間頑張った努力はお客さんに伝わっていないわけですよね。

お客さんの多くは「モノ」や「コト」という外的な魅力だけでなく、例えば裏路地の古い小料理屋でもお客さんに愛されているお店ってありますよね。それは見た目や料理の美しさ以上に、そこで働く店主の「物語」や「個性」に魅力があるからです。私はそういう人柄の良さや原料の物語などを製品やサービスに反映させたいとずっと思っていたわけです。

Photo=Yuji Nomura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

萱島: 過程を伝えていくことが大事なんですね。ブログを10年以上書き続けてきた中で、ほかにも何か気づいたこと、感じたことはありますか?とってもセルフブランディングが上手な方だなあと思うのですが。

 

坂田: 私は10年以上、PR広告費というのを1円もかけたことがないんです。求人広告もPRも外注をしたことが一度もなくて、10年間自分のブログだけでやって来ました。

「発信する意味」というのは、評価してもらう、知ってもらう、ということもそうなんですが、広告やPRを頼む資金や人脈がない人でも誰でも挑戦できることでもあります。そして経験からの実体験や感情、感動を練り込むこともできる。それはPR会社が代わりにはできないことでもあります。

私がブログを始めた頃は資金がなくて、紙おむつすら高いと思う主婦時代だったので、唯一、発信するということだけがお金がなくてもできることでした。仲間や営業がいなくても、ライティング力がなくても、人脈がなくても、とにかく「想いを伝える」「感動を生み出す」ということは誰にもできることなんです。

私はブログを書く際、「オーガニックマザーライフ」という映画の脚本家になったようなつもりで書こうと心がけていました。映画とかドラマっていいことばかりじゃないじゃないですか。挫折とか裏切りとか失敗があるから面白いんですよ。どんな映画やドラマでも成功話だけではちっとも面白くないわけです。紆余曲折、様々な人間模様が交差することが魅力的で、失敗も挫折もその人を作ってきたんだな、という「人間の成長過程を描く」。それこそが映画やドラマの共感性の魅力だと思っています。

物語にドキドキハラハラ

 

萱島: 物語にドキドキハラハラするから次が見たくなりますものね。だからこそ坂田さんのブログは面白くて、共感する人がたくさんいるんでしょうね。

 

坂田: 今、まさに萱島さんがおっしゃってくださいましたけど、私はお客さんを消費者だとは思っていなくて「共感者」と思っています。共感してもらうは、その方が共感できる物語がサービスや製品の中に無くてはなりません。

共感点・共有点・共通点が私とお客さんの間にないと、私のことを「手に届きそうな人」または「参考にできる人」、「信じられる人」だとは思ってくれません。

私たちエステの仕事は「この人に会いに行こう」と思ってもらって会いに来ていただかないと始まらない仕事です。会いに行こうと思ってもらうためにはお客さんに共感・信頼してもらわなければいけないとなった時に、とにかく自分の想いや製品・サービスの物語を書き続けようと思ったんです。

私のブログを読んで、私になりきって、例えば明日から元気になれる人がいたらいいなあと思って、悩み挫折も赤裸々に全部書いてしまうんですよ。常識ある大人の人からは「それは書かない方がいいよ」と助言もいただけるんですが(笑)、ただでさえ社会の中で女性や母親は働く・生きる道の選択肢が限られているのに、好きなことを好きって、辛いことは辛いって言えないなんてしんどいじゃないですか。誰かを傷つけているわけではないので、自分の体験や感動を「共有する」場にブログなどのSNSを活用する、そして共感・信頼してもらう中で製品やサービスを売買する。そこからオーガニックやエシカルの感動を還元していく。

その作業は自由に誰でも行っていいわけです。

いつしか子育ての悩みから離婚の悩みから、仕事の悩み、裏切りにあってそこからの思考転換で這い上がったこととか、起業までの物語からその後のプロセスも全部書くようになっていきました。しかも、長く(笑)。

坂田まことという主人公が出産してからどうやって自分の居場所を社会の中で見つけていったのかという映画を書こうと思っていたので、何か挫折するようなことがあっても、ああ、またいいネタができてしまったと思っている自分がいたりして(笑)。

セルフブランディングが自然にできているかどうかは分かりませんが、ある意味自分を客観視して、坂田まことというキャラクター、本来の自分ではない人がここにいるのではないかと思いますね。

Photo=Yuji Nomura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

萱島: つまり、坂田さんを一歩引いて見ている坂田さんがいらっしゃるということですね。

 

坂田: そうだと思います。いい意味で二面性を持っているんじゃないですかね。

私がブログを始めて12年くらいになりますけど、18歳で娘を妊娠した時に始めています。最初はブログって正しいことを書かなきゃいけないと思っていました。

でも、持論でもいいと思うんですよ。世の中的には正しいかどうか分からないけど、私にとっては正しいと思うことがあって、でも、あなたにとってはどっちでもいいんですよっていいたくて、タイトルに全部に「私、」って付けたんです。

「これはあくまでも私の意見ですよ」という柔らかい意味を込めて。

どんなことでもそうですが、自分の立場になれば自分が正しい時もあるし、相手の立場になれば相手が正しい時もありますよね。否定し合ったり持論を押し付け合ったところで、オーガニックやエシカルのようなそもそもマイノリティな社会や市場の中では、そういう考えって閉鎖的な活動に加速していることになっていくわけですよ。

どうせならオーガニックやエシカルを知らない人達にも、楽しい選択の一種だって思ってもらいたいじゃないですか。強制されるわけでもなく考えを否定されるわけでもなく、好きなことで毎日が埋め尽くされるなら、そこに正しさなんて必要ないと思ったんです。

だからこそ、オーガニックやエシカルコスメの知識も子育ての仕方も旦那さんとの付き合い方も、あくまでも私の物語であって、世の中や社会の通説ではないですよという前置きを付けたかったんですね。

だから、お客さんが検索すると「私」というタイトルがいっぱい出てくるといつも言われるんです(笑)。

 

萱島: 私も検索したときに「私、」から始まる記事が大量に見つかってビックリしました。探しやすくていいですよね(笑)。

(第5話に続く)

連載企画「植物調合士・オーガニックビューティセラピスト 坂田まことさん」全6回にわたってお届けしてまいります。

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坂田まこと
植物調合士 / オーガニックビューティセラピスト

1990年名古屋市生まれ。19歳で母親になり2015年に自宅の一室にオーガニックエステサロン「ORGANIC MOTHER LIFE®︎」を設立。5年間でフランチャイズ含めオーガニックエステサロン×コスメショップを全国6店舗、コットンハウス®︎エステスクールは全国20校に展開。2021年5月には宮崎県国富町に自社OEMを設立し地方創生に繋がる有機農産物残渣等を活用した「ORGANIC MOTHER HOUSE®︎ – 植物調合美容研究所 -」を開所し取り組み始める。主にオーガニックサロンやスクールの運営、化粧品の開発やコンサルをはじめ、書籍の執筆、美容セミナーやショップディレクションを務める。著書『私、ファンデーションを卒業する。』『料理をするように美しい素肌は作れるということ』(キラジェンヌ出版)がある。

ethica副編集長 萱島礼香

法政大学文学部卒。総合不動産会社に新卒入社。「都市と自然との共生」をテーマに屋上や公開空地の緑化をすすめるコミュニティ組織の立ち上げを行う。IT関連企業に転職後はwebディレクターを経験。主なプロジェクトには、Sony Drive、リクルート進学ネットなどがある。その後、研究機関から発足したNPO法人に参加し、街の歴史・見どころを紹介する情報施設の運営を担当した。2018年11月にwebマガジン「ethica」の副編集長に就任。

提供:サラヤ株式会社
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萱島礼香

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