(第1話)エシカルな生活や消費の意味 【寄稿連載】ビジュアルコミュニケーションから学ぶ ゲッティイメージズジャパン 遠藤由理 
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(第1話)エシカルな生活や消費の意味

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私が所属するGetty Imagesでは、世界中のクリエーターから提供された写真、ビデオ、イラスト等のクリエイティブ素材、そしてニュース、スポーツ、エンタメ等の報道素材を取り扱っています。このような素材はストックフォトと呼ばれ、広告、TV、映画、書籍、オンラインメディアなど様々な媒体で使用されており、おそらく皆さんも、知らず知らずのうちに日々目にしている可能性が高いと言えます。それゆえGetty Imagesでは、物事がより公平に、正確に世の中に浸透していくことを促し、消費者の行動喚起につながる、ビジュアル制作を行っています。この連載では、Getty Imagesの調査に基づき、より持続可能な社会の実現に結びつくビジュアルに関して考えていきたいと思います。

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Getty Imagesにてコロナ前に行った調査によると、大部分の日本の消費者が、人間の地球の扱い方が、将来に大きな影響を与えると考える一方、具体的にどうしたら地球環境に良い生活ができるのか、「リサイクルをする」以外の具体的な対策が見出せないでいました。ところが、コロナ後に行った最新の調査によると、大部分の消費者が国の環境対策に疑問を感じ、リサイクル方法や、温室効果ガス排出量削減に関して考え直し、より環境に配慮した持続可能なライフスタイルに向けて個人的な努力をしていると回答しました。

また、日本の消費者の72%が、製品やサービスが環境に直接関係していない場合でも、企業はすべての広告やコミュニケーションにおいて環境に配慮すべきだと回答しています。このことから、個人の生活だけでなく、企業やブランドに対しても、持続可能な姿勢を求めていることがよくわかります。それに加え、サプライチェーンのあらゆる段階で人権の尊重や適切な労働慣行を行っているかという点を重視しています。また、商品の購入意思決定時に、総合的に持続可能なアプローチをしている企業に4倍の金額を支払う可能性があると、回答をしている消費者もいます。したがって、持続可能性を正確に取り入れたビジュアルは、私たち消費者の行動喚起に大きな影響を与えると言えます。

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しかしながら、現在、日本の多くの企業やブランドが持続可能性を示すために使用しているビジュアルは、それを正確に捉えているとは言えません。例えば、2020年にGetty Images のトップセラーには、このビジュアルのように、植物を持つ手、煙突から出る煙、シロクマなどといった、お決まりの表現が多く含まれていました。このようなビジュアルを見る際、私たちは環境問題を連想はしますが、これらは人間と関係のない、抽象的なものと映し出され、行動喚起にはつながらないと言えます。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書によると、人間が地球を温暖化させてきたことに疑う余地はなく、向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球は摂氏1.5度〜2度以上温暖化する、どの国も、対応を遅らせる余裕も、言い訳をしている余裕もない、と警告しています。私たち消費者はさらに持続可能に配慮した生活を送ることが必要不可欠になります。さて、私たちはどのようにしてビジュアルを見る力を鍛え、より環境や社会に配慮した行動につなげることができるのでしょうか。Getty Images において、自然環境の維持やそれに配慮した行動に関するビジュアルを制作する側、そして利用する側、双方の為に作ったチェックポイントをご紹介します。

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・持続可能を促すような身近な努力がビジュアル化されているでしょうか?

老若男女を問わずすべての人が、エコバッグやマイボトルを使ったり、使い捨てプラスチック製品を使わないなどの努力が描かれていますか?この小さな努力の積み重ねで地球環境が守れるはず。ちなみに、このビジュアルはほぼゴミを出さない、ゼロウェイストのピクニックになっています。

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・環境に変化をもたらす解決策がビジュアル化されているでしょうか?

近頃、少しずつですが、バルクショップと言われる、自分で袋や容器を持参して日用品を買えるお店が増え始めました。代替肉の開発、水耕栽培、電力や水力を節約するエコフレンドリーなデザインのオフィス、再生可能エネルギーを活用する生産の現場などを実際に消費者が目にすることにより、行動喚起につながると言えます。

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・持続可能な社会の実現に向けた最新テクノロジーの普及がビジュアル化されているでしょうか?

例えば、eヘルス(情報テクノロジーを有効活用したヘルスケアサービス)は、患者さんの大きな支えになると同時に、医療従事者の負担をも軽減し、温室効果ガス排出量削減にもつながると言われています。太陽光発電、風力発電、電気自動車など、新しいゼロエミッションに関するイノベーションが実生活にどのように溶け込んでいるか、誰もがその使用方法やメリットを簡単に想像できるように描写されていることも大切です。

フェイクニュースや沢山のコンテンツが溢れかえる現代、人間は、日々目にするビジュアルから知らず知らずのうちに影響を受け、グリーンウォッシュ (見せかけのエコ)に惑わされているかもしれません。地球環境をさらに悪化させないためにも、サステナブル(持続可能性)そしてエシカル(倫理的)な生活や消費の意味を、一人ひとりがビジュアルを通して理解する事が重要です。

寄稿連載「ビジュアルコミュニケーションから学ぶ」全6回にわたってお届けしてまいります。これからどうぞお楽しみに。

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遠藤由理

ゲッティイメージズジャパン株式会社 クリエイティブインサイト マネージャー

10代後半からアメリカ、スペイン、チェコ、韓国で過ごす。映画制作とデジタルメディアデザインに重点を置いたビジュアルメディアの学歴を持ち、国際映画や日本映画のプロモーション、セールス、買収、配給などの仕事に従事。 2016年からはゲッティイメージズ、ならびに、iStockのクリエイティブチームのメンバーとして、世界中のクリエイティブプロフェッショナルによる利用データ分析と外部データや事例を調査し、来るニーズの見識を基にCreative Insights(広告ビジュアルにおける動向調査レポート)を発信。意欲的な写真家、ビデオグラファー、イラストレーターをサポートし、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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ethica編集部

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