読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第3章:食から考える豊かさ編(第2節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第3章:食から考える豊かさ編(第2節)

ホストマザーのおばあちゃん

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第3章は「食から考える豊かさ」と題して、全四節にわたりお送りします。食とのつながりをヒントに、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第3章 食から考える豊かさ

第2節 半透明の料理

あの時食べたあれが美味しかった、とふと思うことがあります。本当に気に入った料理なら、レシピを調べて作ってみたり、あるいはそれを提供しているレストランに行って食べたりします。

では、その料理の名前さえわからなかったらどうでしょう。作り方もよくわからない。それでも美味しかったという記憶だけは残っている。

特に海外なんかで、現地の言葉で書いてあるメニューを適当に指さして頼んでみたら意外に美味しい料理が出てきたが、さてその料理が何なのかはわからない、ということがあります。あとから気になって調べても、それがお店オリジナルレシピだったりすると、インターネットにも出てきません。

この「どうしてももう一度食べたいのに正体のわからない料理」のことを私は「半透明の料理」と呼んで、また出会える日を夢見ているのですが、今回はそんな「半透明の料理」の一つを紹介します。

ヒマラヤ山脈をのぞむ村

ネパールの山岳にある村でホームステイしていた頃、私の楽しみは食事でした。ホストマザーのおばあちゃんが作ってくれる料理は、首都カトマンズのレストランで見るものとは少し違っていて、村内で採れる野菜や飼育している鶏を使ったオーガニックなものでした。

ネパールではお茶休憩が一般的という話はこの連載でもしましたが、お茶休憩は時々おやつ休憩になります。その時に出されるのは、玄米を炒ったものや、灰で低温調理した卵などのシンプルなものですが、ある時全く見たこともない料理が運ばれてきたことがあります。

灰の中で低温調理される卵

それはドーナツのようであり、一方で細長いナンのようにも見える不自然な食べ物でした。隣にはカレー風味の豆のスープがついていて、どうやらディップして食べることもあるよう。とにかく一口分ちぎって口の中に放り込んでみると、少しざらついていて何かの穀物の風味がします。それ自体に甘さやしょっぱさはなく、麦とも米ともトウモロコシとも違う、少しの酸味と苦みが混ざり合ったような香りがしました。

今度は横のスープにディップして食べてみる。すると、これが美味しいのです。カレーのスパイスと豆の甘味が穀物の風味と絶妙に合って、芳醇な香りが口に広がります。単体で食べてもそれほど味がないのに、カレーの匂いには負けないという不思議な料理です。気づいたらあっという間に平らげてしまい、私はおばあちゃんにおかわりをおねだりしたほどです。

ただ、その時に料理の名前や作り方、具材について聞くのをすっかり忘れてしまい、帰国後いくらインターネットで調べても出きませんでした。そうして今は「半透明の料理」になってしまっています。

正体不明の料理

「半透明の料理」は言うなれば、悩みの種です。芸能人の名前が出てこなくてこまねいている間に話題が移ってしまうという苦しみにも似ていますが、それ以上に辛いものです。ただ一方で、私がこうして「半透明の料理」と名前を付けてそれに思いを馳せているのは、愛着があるからです。何だかよくわからないものを口に入れて、それを美味しいと思えた経験に、意義深さを感じているからです。

こうして私が「半透明の料理」と名付けることで、私には次の旅の目的ができます。もう一度食べたいと思うなら、同じ場所に戻るしかありません。そして同じ場所に戻れば、お世話になった方々にもう一度会うことできます。同じ場所に戻って来れるというのはそれ自体がとても豊かな体験です。一期一会の旅というのも私は好きですが、同時に、あの時の景気を今の自分ならどう見るのかということを確認する旅も私は好きです。「半透明の料理」は私をもう一度同じ場所に連れていってくれるチケットのようなものかもしれません。

いつかあの村に戻って、おばあちゃんにあの「半透明の料理」について聞くのが、今の私の夢です。

村に住み着く子猫

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

 

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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