(第3話)持続可能でかつエシカル(倫理的)なビジネスを示すビジュアル 【寄稿連載】ビジュアルコミュニケーションから学ぶ ゲッティイメージズジャパン 遠藤由理
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(第3話)持続可能でかつエシカル(倫理的)なビジネスを示すビジュアル

Tang Ming Tung, 1239287338

前回の記事では、持続可能な社会の実現に結びつく世代別のビジュアルに関してお話をしました。今回は、持続可能でかつエシカル(倫理的)なビジネスを示すビジュアルに関して考えてみたいと思います。

エシカルなビジネスを見極める際に大切なこと

エシカルなビジネスを見極める際に大切なのは、その製品やサービスが、生産や製品のライフサイクルの各段階において、どれくらい人、環境、そして動物に対してポジティブな影響を与えているか、という点です。当たり前の事のように聞こえるかもしれませんが、実は全ての条件をクリアすることは、大企業であっても容易いとは言えません。

例えば、サプライチェーン全体において、労働者から搾取するのではなく、国際労働基準に沿った権利を従業員や契約者に与えることを保証しているか。児童労働、強制労働を禁じ、労働者の安全、労働組合に加入する権利、生活賃金の支払いに関する方針を示し実践しているか。また、開発から製造、流通の全プロセスにおいて、資源やエネルギーの使用、二酸化炭素排出量の削減、水質への影響、化学物質の安全な使用と廃棄などにも配慮しているか。プラスチックやポリエチレンのような安価で便利であるが、地球にとっては有害な素材を使っていないか。そして動物実験を行っていないクルエルティフリーの製品であるか。皮や毛などの動物製品を使用していないか、などがあげられます。

Visualspace, 1201646503

Getty Images で行った調査によると、日本の消費者の大多数が、企業が環境に配慮していることに加えて、サプライチェーンのあらゆる段階で人権の尊重、適切な労働慣行を行っている企業から製品やサービスを購入したいと、回答しました。消費者が地球に良い影響を及ぼすためにとった行動のトップ5は、サーキュラーエコノミー(循環型経済)への移行を示しています。

 

1. リサイクルする
2. 環境にやさしい製品を使う
3. ペットボトル飲料、カプセル式コーヒー、ビニール袋などの使い捨て製品の使用をやめる
4. 新品を買う代わりに、再利用、修理、中古品を購入する
5. 石油などの使用を減らすような交通手段を選ぶ

 

しかしながら、環境に配慮した製品を選びたいが、どうしても利便性を優先してしまう、そして、二酸化炭素排出量を減らすために何ができるかわからないといった回答も多くありました。また、年齢が若くなるほど利便性を追求する傾向にありました。価値観と実際の消費動向に不調和をきたしていると言えます。

では、私たちはどのようにしてビジュアルを見る力を鍛え、より環境や社会に配慮した消費につなげることができるのでしょうか。Getty Images において、自然環境の維持やそれに配慮した行動に関するビジュアルを制作する側、そして利用する側、双方の為に作ったチェックポイントをご紹介します。

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・社会や環境に配慮した倫理的かつ責任ある方法によって原材料を調達し、製品が製造され、消費者の元に渡っているのかがビジュアル化されているでしょうか?製品やサービスが、労働者の福利厚生に考慮した環境で生産されていることが描かれているでしょうか?

JGalione, 1313211380

・自国や地元のコミュニティの支援を後押しするビジュアルでしょうか?コロナ禍、日本の大多数の消費者が、地元の中小企業への支援を優先すると回答しています。地元で購入すれば二酸化炭素排出量の削減にも有効です。

Yagi-Studio, 694385298

・「Take(資源を採掘し)」「Make(製品を作り)」「Waste(捨てる)」という従来の経済システムのなかで「廃棄」されていた製品や原材料などを「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく循環させる、サーキュラーエコノミーがビジュアル化されているでしょうか?

持続可能な社会の実現のために消費者がとるべき行動は、エシカルに行動するブランドや、その製品を選び、自らの消費行動に結びつけることです。消費者自身が解決策の一部となることで、消費者と企業が相互に働きかける好循環を形成するような、豊かな暮らしを実現できるのではないでしょうか。

寄稿連載「ビジュアルコミュニケーションから学ぶ」全6回にわたってお届けしてまいります。

【連載】を読む>>>

遠藤由理

ゲッティイメージズジャパン株式会社 クリエイティブインサイト マネージャー

10代後半からアメリカ、スペイン、チェコ、韓国で過ごす。映画制作とデジタルメディアデザインに重点を置いたビジュアルメディアの学歴を持ち、国際映画や日本映画のプロモーション、セールス、買収、配給などの仕事に従事。 2016年からはゲッティイメージズ、ならびに、iStockのクリエイティブチームのメンバーとして、世界中のクリエイティブプロフェッショナルによる利用データ分析と外部データや事例を調査し、来るニーズの見識を基にCreative Insights(広告ビジュアルにおける動向調査レポート)を発信。意欲的な写真家、ビデオグラファー、イラストレーターをサポートし、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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ethica編集部

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