読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第6章:教育の現場から編(第1節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第6章:教育の現場から編(第1節)

標高2000mに位置する畑

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第6章は「教育の現場から」と題して、全5節にわたりお送りします。東南アジアの学校教育現場を観察して得た学びをヒントに、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第6章 教育の現場から

第1節 わたしたちのウェルビーイング

発展途上国を訪れる中で、幸せとは何か、ウェルビーイングをどのように体現していくかを模索してきた私ですが、あるとき、途上国においてもまた、ウェルビーイングをめぐる議論が必要なのではないかと気づきました。というのも、そうした国の子どもたちや学生と触れ合ううちに、彼らの中に先進諸国を過度に神格化するような態度が見られたからです。彼らが新しいiPhoneを持っている日本人に駆け寄る姿を見て、テクノロジーの進歩そのものへの関心というよりも、ラグジュアリアスな物質を保持していること、それ自体に価値を見出しているような気がしたのです。あるいは、外資系の企業に就職するのが夢だと語る学生によくよく話を聞いてみると、お金持ちになること、すなわち資本を際限なく貯めることがしたいのだとわかり、複雑な気持ちになったこともあります。

教室の様子

そんなモヤモヤを出発点にして、一度、ネパールの学校で「幸せとは?」について講義をしたことがあります。その学校は全国から優秀な学生が集まる、英語教育が盛んな学校で、生徒たちは将来ネパール内外で活躍するグローバルな人材となることが期待されていました。ネパールを発展させよう、あるいは諸外国に追いつこうという意志を持った生徒も多く、彼らは既に「発展した未来」を目指していました。そんな生徒の前で、「では『発展』とは何だろうか?」という話をするのはなかなか勇気が必要で、下手をすれば彼らを怒らせてしまうか、彼らを失望させてしまう恐れもありました。

それでも私があえて「幸せ」について講義を行ったのは、先進国に倣って工業化を進めていくことが果たして目の前にいる生徒たちのためになるのか、という疑問に私自身が妥協できなかったからです。何も、工業化の良い面さえも否定しようという意図はありませんでしたが、生徒の一部が目指したいと意気込むさらなる工業化がもたらす負の側面にもしっかりと目を向けてもらいたいと思ったのです。

生徒による歌の披露

生徒約50人ほどを前に、ただ一人立ち、パワーポイントも資料もなしに、語りだけで聞かせるのは大変なプレッシャーでした。それでも10分間、生徒たちは真剣に私の話を聞いてくれました。全てを話し終えて、「Thank you」と言った瞬間は忘れられません。大きな拍手が教室中を包んで、生徒たちは私を一直線に見つめていました。全てを理解してもらえたかはわかりませんが、少なくとも、ウェルビーイングをめぐる議論の必要性は感じ取ってもらえたはずだという自信はなぜかありました。

ウェルビーイングは決して余裕のある人達のものではありません。ウェルビーイングは生きる上で避けて通ることのできない問題であると私は考えています。ネパールの子供たちが私と一緒になって真剣に考えてくれたように、ここにいる誰もが一緒に考えていくべき問題なのではないでしょうか。

誰かのウェルビーイングではなく、わたしたちのウェルビーイングのために、絶え間ない思考と議論と対話を。2022年もそのような年にしたいですね。

アルプス山脈の眺め

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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