生活者を巻き込み、共感を生み出すサステナブル・ブランディング サステナブル・ブランド国際会議 青木茂樹 一般社団法人NEWHERO 高島太士 株式会社電通 田中理絵
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生活者を巻き込み、共感を生み出すサステナブル・ブランディング

Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド国際会議 2022 横浜」(SB 2022 YOKOHAMA)は、グローバルで活躍するサステナビリティのリーダーが集うコミュニティ・イベントです。

今年も、昨年に引き続き、歴史と未来が交差する人気都市・横浜で「ハイブリッド形式(現地参加 or オンライン参加)」開催となり、多くのセミナー、ディスカッション、ワークショップが繰り広げられ、さまざまな貴重な提言や発表が紹介されました。

その中で「生活者を巻き込み、共感を生み出すサステナブル・ブランディング ―JSBI 2021 Report発表―」と題されたパネルディスカッションでは、サステナブル・ブランド国際会議 アカデミックプロデューサー 青木 茂樹さんをファシリテーターとして、一般社団法人NEWHEROから高島 太士さん、株式会社電通から田中 理絵さん(グローバル・ビジネス・センター シニア・マネジャー)が登壇。その内容をレポートします。

なぜ企業はサステナビリティを推進しているのか

青木: まず、ここにお集まりの皆さん、ご自身で考えてみてください。企業はいったい何のためにサステナビリティを推進しているのですかと問われたら、何と答えますか?

ファシリテーター:サステナブル・ブランド国際会議 青木茂樹 Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

1つはですね、それが世界のルールだから。特にヨーロッパが中心になってさまざまな基準、ルールを作っており、脱炭素にしろ脱プラスチックにしろ企業の取り組みが求められています。おそらくここにいらっしゃる皆さんも、これは会社として企業としてやらなくてはいけないというふうに義務感でやられているのではないでしょうか。つまり、ルールだから、デジュールスタンダードだからやらざるを得ないという方たちもいると思うんですね。

しかし、私は今から13年くらい前にSB(サステナブル・ブランド国際会議)にアメリカで初めて参加しました。まだ数百人だけで日本人は私しかいなかった。とても小さな会議でした。

そこですごく感動したんですね。それは何かというと、あのアメリカというコンシューミングな国が実はサステナビリティをやっているということに、私はアンビリーバブル、信じられないような話でした。

しかし、やはりアメリカ流なんですね。アメリカはマーケティングが生まれた国です。まさにサステナビリティでこれを1つの市場にしていくんだという、今日のタイトルにもなっている、生活者を巻き込んで市場を作っていくんだという意志をものすごく感じたのです。それはコーアンさん(*注1)をはじめアメリカに集まっているサステナビリティの人たちによるものでした。

私はこういうことが、まさに事実上のルールとして市場を獲得していく、先ほどの花王の長谷部社長がおっしゃったアスファルトの話もそうですが、ものすごくイノベーションの可能性がこの中にたくさん隠されているということですね。

そこで、誰が最初にフラッグを取るのか。デファクトを取っていく人たちもこの中にぜひいてほしいと、私はマーケティング学者なので願っております。

もう1つあるのは、私が作った言葉ですが、デ・スピリタス・スタンダード、精神的なスタンダードであること。つまり、ここにいらっしゃる高校生の皆さんのように、サステナビリティとか地球環境に負荷をかけないのは当たり前じゃないかと、正義感をもって公平な社会を作るのは当たり前じゃないかと思うような人たちが、ただ単にルールだからとか儲かるからとか、それだけで仕事ができますかということですよね。

たぶん我々はそうじゃないと、まさにこれは精神的な支柱として、人類共通の考え方として、スピリタスとして皆でスタンダードを作っていこうよと、この3つの層で私はサステナビリティが実現できると思っています。

(*注1):サステナブル・ブランド国際会議を主宰する、Sustainable Life Media社の創業者、コーアン・スカジニア氏

サステナブルブランド・イメージ調査

青木: さて、今回はこういうタイトルでやります。「生活者を巻き込み、共感を生み出すサステナブル・ブランディング」という内容で、我々が昨年からジャパン・サステナブル・ブランド・インデックス(Japan Sustainable Brands Index)JSBIと呼んでいますが、こういう指標を作らせていただきました。私からは、これがいったい何なのかを皆さんにお伝えして、ぜひ経験豊富な高島さん、まさにストーリーテリングのプロですね。田中さんはストラテジストとしてサステナビリティの分析、世界中の分析をされています。お二人のお力をお借りして、皆さんとこういった指標をどのように作って、そして、日本がデファクトとして、または市場として世界に輝くサステナビリティを作っていただきたいと願っているわけです。

左から、サステナブル・ブランド国際会議 青木茂樹、一般社団法人NEWHERO 高島太士、株式会社電通 田中理絵 Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

この調査はどんな形でやったかというと、去年は180社だったのですが、今年はちょっと予算をかけさせていただいて300社を対象に調査させていただいております。15,000サンプル、1社につき300人から回答をいただいているというわけです。

簡単にいいますと、緑と橙だけ見てください。緑は何かというと、この企業さん、サステナビリティが100点満点で何点ぐらいだと思いますか、300人の皆さんがつけてくださっています。その点数と認知度によってサステナビリティを全く知らない人に聞いてもしょうがないですよね。名前だけとか、よく知っているとか、その重みによって掛け算して貢献イメージ得点というものを出しています。これがだいたい50点平均になるようにしています。

写真提供 Sustainable Brands Japan

一方で、下はSDGsの具体的アクション、17目標ありますよね。これをもうちょっとブレイクダウンして30に分けてやっているのか、やっていないのか、それを1社1社の企業さんについて回答者の皆さんにお答えいただいています。それを合算して、まずSDGsをどれだけ17項目を重要と思っていますかと重要度を聞いて、それに対してある企業は何点ですかということを企業評価とさせていただいています。これを合わせて評価得点として、これが50点なんですね、平均で。それを足しておよそ100点ぐらいが平均になるようにしてJSBI(Japan Sustainable Brands Index)というのを作っています。

SDGsがこれだけコマーシャルで流れて、皆さんがテレビをつけてSDGsをやっていない時はありません。今、何パーセントくらいの方がSDGsを知っていると思われます?どうでしょうか。

写真提供 Sustainable Brands Japan

実はですね、我々が最初に取ったのは2018年、今から4、5年前になりますけど、そうすると、その頃はまだまだSDGsという言葉は知られていませんでした。このサステナブルブランドを最初に始めたのは2017年、その前にプレをやりましたけど、2016年の最も分からないカタカナ英語はサステナビリティでした。ヤバいなあと思いました。こんな言葉は日本で広まるんだろうかと思いましたけど、今見てください。84.2%の皆さんが少なくとも名前は知っている。または内容を知っているということなんですね。

それをですね、じゃあ認知度別に17目標に分けてみました。まず因数分解をしてみましょう。どういったことを皆さんは期待しているのかなと、これは認知度別重要度、緑がよく知っている人が求めていること。橙色がまあまあ知っている人が求めていること。

写真提供 Sustainable Brands Japan

真ん中はですね、経済成長、イノベーションとかレジリエントな都市、消費と生活、つまり、経済軸を強く求めています。特に緑の人はより一層強く求めています。企業にはサステナビリティに対して、もっともっと経済的貢献をしてくれという欲求があります。

一方で3番、健康とか平和、最近、平和問題が世界的にも不安があります。こういったことを実は企業さんに対して皆が求めているということが分かります。

一方、今度は性別を通してはいけないと思いましたけど、明らかに優位な差がありましたので出させていただきました。女性の皆さんと男性陣とでは、いったいどんな差があるのかなと思ってみますと、女性の皆さんのほうがSDGsをより重要だというふうに認識されています。

写真提供 Sustainable Brands Japan

特にここからは男性陣には耳の痛い話なんですけど、ギャップが激しいのはどれだろうと思って数字を見てみました。貧困、ジェンダー、不平等是正、つまり、女性の皆さんというのは人の不平等ということに対して、または公平性ということに対して非常に強く関心を持っています。男性とはそれぐらい意識が違うんだということに改めて気づかされます。

例えば、人権的問題というのは日本ではなかなか取り上げられにくい問題だと思いますけど、コリン・キャパニックさんが2016年ですよね、国歌斉唱の時には皆さん、胸に手を当てるわけですが、彼はひざまづいて、いわゆる人権問題に対してアンチテーゼを取ったということが話題になりました。彼は非国民だというような大きな騒動になりました。

その時、ナイキが彼をコマーシャルに採用したのです。アメリカ中が割れました。ナイキの靴を燃やして、ナイキは何をやっているんだ、とんでもないという人たちも一杯いました。

それに対して、いや、すごいいいことじゃないか。ああいった問題を企業が正面にとらえてやっていくのはいいことじゃないのかという評判も生みました。つまり、フワッとしたコミュニケーションでいいことやっているね、ではなくて、やはり、こういった問題を真摯にとらえてコミュニケーションをし、そして結果としてこういった成果につなげていったという例を見ると、我々のコミュニケーションのやり方というのは、まだまだいろいろなやるべき余地があるのかなという気がしています。

さて、今度は企業に求められる具体的なアクションとは何だろうかということを見ていきたいと思っています。縦に19の業種を取りました。

写真提供 Sustainable Brands Japan

皆さんの業種もどちらかに入っていると思いますけど、横にSDGsの17項目を取りました。これは企業の評価得点、やっているよという、本当は個々の企業につけていますが、産業ごとにまとめてみました。横軸で見てベスト3は赤色にしてみました。ワースト3は青色にしてみました。

そうしますと、たまたま縦に見てみると分かることがあります。つまり、企業が評価されているのは何かというと、3番目の健康ですね。そして、8番目、経済成長、雇用、こういったことでは、企業さんは得点を得ているんだということが分かります。

しかし、見てください。お客様、生活者の皆さんが求めているエネルギーとか、レジリエントな都市という課題に対しては全然応えていないわけですよ、実は。

花王の長谷部社長がいわれたようにSGDsを個別に見るのではなくて、システムとしてどうやってつなげていくかという時にレジリエントな都市とかエネルギーというものも、まさにシステムですよね。こういったとらえ方で対応していく必要があるのかなと思います。

また、女性が関心を持っている不平等是正とか平和なんていうのも、企業としては全然貢献できていないわけですよ。

私が日本環境設計の岩元社長に、何でペットボトルをリサイクルしたり、アパレルの衣服をリサイクルしたんですかと聞いたら、岩元社長は真顔で世界平和のためとおっしゃっていました。最初は分からなかったですよ。でも、なるほどと思いました。資源を争うことが全ての紛争につながる。だから、地上の資源を回していくんだ、地下資源は掘らないんだとおっしゃいました。

そういった意味では、まだまだやる余地がこういった目標にはあるんだなと思います。ぜひ皆さん、イノベーションを起こすんですから自分の会社がSDGsを漫然とやるのではなくて赤をやる。これもストライクゾーンでしょう。いやいや、青をやってあえてエッジの立ったストラテジーを構築する。これもありだなと私は思っています。

さて、お2人お待たせしました。JSBIのこの得点について、今日のお昼にウェブに上がります(*注2)ので、それを見ていただければと思います。

(*注2)JSBI 2021 Report(速報版)/Japan Sustainable Brands Index

 

写真提供 Sustainable Brands Japan

まず、今日は20だけお持ちしました。バーッと見ますと、私たちもどうなんだろう、去年とどう違うんだろうと思いました。そうしますと、やはりワン、ツーは変わりませんでした。圧倒的に生活者の皆さんはトヨタさん、または良品計画さんに高い評価を得ているということです。これはぜひ皆さん、今回もスピーカーとしてご登壇いただくので、そのセッションにぜひ行かれてはいかがでしょうか。

他にどんなことが注目されるかということで、田中さん、次の注目としてはどんなことが挙がりますかね。

株式会社電通 田中理絵 グローバル・ビジネス・センター シニア・マネジャー Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

田中: SDGsランキングなので、SDGsの達成目標と近い領域で、かつオリジナルな伝え方をされている企業というところがランキングの上位に来ているというのがすごく特徴的だと思います。4位の住友林業さんとか6位のクボタさん、SDGsの注目領域として、森林保全や農業が注目されていて、11位の王子ネピアさんは水と衛生、貧困地域というところで長年活動をされています。

青木: 住友林業さんといえばサステナビリティと思っていますし、リジェネレーション、まさにさっき話に出ていましたけど、自然資源とのつながりということを考えると、クボタさんはまさに世界中で共感を得ていることが日本の生活者の皆さんの間でも共感を得ているという感じがいたしました。

さて、もう1つ、どんな例があるのかなということを、この辺、高島さんにぜひお話しいただければと思います。

一般社団法人NEWHERO 高島 太士 Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

写真提供 Sustainable Brands Japan

高島: 私は去年もJSBI(Japan Sustainable Brands Index)のお話をさせていただいているので、去年よりもグッと上がったんじゃないかなという特徴的なところで、P&Gさんのお話を少しさせていただきたいと思います。あとで2つ、お話しさせていただきますが、まずP&Gさんに関しては、どうやって共感を得ているのかというと、これはおそらく広告だと思います。

応援したくなる人を企業として応援している。そういった広告を作っていらっしゃるなと。

私もこの2、3年の間、関わらせていただいているのですが、例えばトランスジェンダーの方を起用したコミュニケーションを開発されています。最近ですと、P&Gさんのパンテーンは、ヘアケア商品のエフォートレスというところで、障がいを持った方、車椅子に乗って生活されている方でもヘアケアを楽しめるというような広告コミュニケーションを作っていらっしゃいます。そういうことが共感を生んでいるのかなと思いますね。

 

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左から、一般社団法人NEWHERO 高島太士、株式会社電通 田中理絵 Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

青木: なるほど。あと、外資系がこの中にかなり出てくるなという特徴があると思うのですが。

田中: ランキングの3分の1が外資系というところも特徴的ですね。

青木: つまり、日本のブランド調査をすると、やはり日本の国内企業さんのほうが認知度が高いわけですよね。しかし、サステナビリティということに関心のある生活者の皆さんから見ると、本当に外資系の進んだ取り組みというのは、完全に皆さんがその中に入り込んできているということもよくお分かりになるんじゃないかと思います。

さて、次に我々の特徴であります貢献のイメージとか評価得点というアクティビティとアクションというこの2つを見ていきたいと思うんですけど、評価得点というものは、さっき申し上げたSDGsをやっているかという得点、そして、イメージ、100点満点で何点ですかという漠然としたイメージですね。この2つの大小を比較することでどんなことがいえるのかなと。評価得点が高い企業さんというのは、つまり、取り組みを実直にやられていて、それが知られているということですね。

写真提供 Sustainable Brands Japan

しかしながら、サステナブル・マーケティングやサステナブル・コミュニケーションにおいて、イメージが生活者の皆さんには伝わりにくいという企業さんもいて、東電さん、NHKさんというふうに挙がってきています。ですから、こちらの企業さんでいえば、コミュニケーションをより伝えていくということが大事といえるかもしれません。

逆に、反対側を見ますと、評価得点よりもイメージ得点が高くてその差が激しいような企業さんを挙げると、スターバックス、YKK、ブックオフ、ネスレ、イケアといったところがとても高い評価になっているようです。このスターバックスさんの例はいかがでしょうか、田中さん。

写真提供 Sustainable Brands Japan

障がいのあるなしに関わらず、コーヒーを通じてすべてのお客様へ最高のスターバックス体験を提供

田中: スターバックスさんは全体のランキングでも3位でしたので、アクションが知られていないというよりはイメージがより大きいということですね。紙のストローの導入も早かったですし、従業員のエンゲージメントが高いことも有名ですが、長年、地域のコミュニティの支援活動を店舗ごとに続けられています。国立でサインランゲージストアを2020年にオープンされたことが象徴的ですので、こちらのビデオをご覧ください。(*注3)

(*注3)スターバックス公式YouTubeチャンネル

 

ご覧いただいた通り、障がいのあるなしに関わらず、この店舗では手話やサイン、ジェスチャーを使って注文します。ここに来られたお客様も新しく豊かな体験をするということで話題になっています。発話をしないで表情で伝わる、手話やサインなどが深いコミュニケーションだと実感することができるだけでなく、声が小さいとか、日本語が難しいとか、感染症が気になる人たちも発話せずに注文できることで、安心が生まれます。

この例からも、なぜスターバックスのイメージがそんなに強いのか、2つぐらいの示唆が言えると思っています。1つ目は皆さんご存じの通り、スターバックスは体験価値を提供するというパーパスですが、こちらの店舗でも新しい体験を味わえる。まず、パーパスと直接的につながっているということが1つ目。

もう1つはSDGsの「誰1人取り残さない」という姿勢が出ていること。一部の人、一部の地域の取り組みにもかかわらず、地域ごとの活動を長年続けている。実は世界中にサインランゲージストアというのがありまして、この姿勢は日本の国立に限らず、世界中どこのエリアでも展開できるということです。

つまり、誰1人取り残さないという姿勢は、せまい取組のようで、地球上の広い地域に展開する力を持てるということでもあるんです。ビデオの途中でデジタルサイネージも出てきましたが、デジタルの技術がどう困った人々をサポートできるかということに、この姿勢をもっていると、いち早く気がつけるんですね。なので、誰1人取り残さないというのがただのコンセプトではなくて、それをビジネスに広げていったり、人々に感動を与えたりという力につながっていて、そうした小さい濃やかな活動の集積が大きなイメージにつながっているのではないでしょうか。

 

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左から、サステナブル・ブランド国際会議 青木茂樹、一般社団法人NEWHERO 高島太士、株式会社電通 田中理絵 Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

青木: 私も拝見して、マーケティングはコンテクスト、分脈づくりですよね。ハンディキャップを持たれた皆さんを雇用される時に、まさに社会的にポジティブな意味で分脈づくりをされてスターバックスブランドが上がっていくということなんですよ。それはすごくパーパス的だし、戦略的にもうまいと思うんですよね。イノベーションを生み出していく力っていうのがこうした企業にはあるんだろうと思います。

私から逆の事例もちょっとお示ししたいんですね。もちろん、いい話で共感を生むということもありますけど、ネガティブな共感というのもあるわけですよ。

これは何かといいますと、ツィッターから取ってきたんですけど、私たちの勉強会にH&Mさんに来ていただきました。H&Mが30年かけてサステナビリティの取り組みをどれだけ実直にやってきたかというお話をお聞きしました。

しかしですね、その2日ぐらい前にH&Mが世界中で回収した服を燃やしているということがニュースになって写真に撮られて世界中を駆けめぐったんです。そのプレゼンテーションを聞いた後、担当者の女性にこんなニュースが流れているんだけど、どう思うかという質問をしました。そうしたらこういうことをおっしゃっていました。

ウェブサイトに自分たちももう上げているんだが、H&Mは使える服を燃やしているわけではない。カビてしまった服、どうしても再生できない服、鉛とかの有害物質が入っている服、こういったものは燃やさざるを得ないだろう。グローバルカンパニーになると、つねにNGOからそうやって糾弾されることが一杯ある。

でも、自分たちはそういう時は必ず自分たちの正当性をリリースするし、また、データを見てもらえば自分たちの取り組みがまさに企業評価される、そうした蓄積のデータが一杯あるというお話をされていました。

彼女がさらに付け加えたのは、その後、皆さんがちょうどシェアできるようになっているんですけど、ツィッターでシェアしてくれて、H&Mは頑張っているぞという、その1つの流れができたそうなんです。コミュニケーションというのは、何かあると躊躇していわないじゃなくて、グローバルの中でそういったことを主張していく。今日の最初のセッションでWORLD ROADの平原依文さんの中国との出会いの話がありましたけど、やっぱりこういうのが1つのスタンダードになってくるのかなという気がしています。

ですから、ネガティブだったことをむしろ押し返してプラスのフォロワーを作ってきたという事例になります。

さて、次は業種別に見ていきます。業種別で昨年よりランキングが上がったり下がったり、また、昨年より2つぐらい新しい業種が出ています。この中でちょっと注目なのは私はもともと専門が流通なので、流通・小売りですね。今年はかなり生活に密着した企業さん、トイレタリーとか1番の薬品とか、ウィズコロナの中での消費活動がだんだん復活しているのかなと思います。

去年は機械とかAVとか、どちらかというと電子機器メーカーのランキングが高かったんですが、今回はちょっと下がっちゃっているんですよね。むしろ身近なところでのサステナビリティがあるのかなと感じましたけど、高島さん、どんな感じのイメージを持ちますか?

写真提供 Sustainable Brands Japan

流通が持つコミュニティがサステナビリティにおける有効手段

高島: 先ほど広告の話を少しさせていただきましたが、流通というところでコミュニティ、コロナ禍ということでコミュニティというのも1つ有効活用できるのかなと思うんですけど、20までのランキングに入っていなかったコープさんの例があります。

青木: 生協さんですね。

高島: ええ、そうです。いかに消費者とつながっていけるかというのがすごく大事なところだと思いますが、コミュニティをお持ちの方は意外と広告というような派手なことをなさらずとも、例えば卵のパック1つをみても捨てずに返すんですよね。家庭内でそういったコミュニケーションが生まれるので、コミュニティというものを有効活用すると半径3メートルくらいの中に当たり前を作ることができて、それがサステナビリティの認知に広がるのかなというところがあるので、もしコミュニティをお持ちの方は何か考えていただけるといいんじゃないかなと思います。

青木: お持ちじゃない方は、お作りくださいということですね。

高島: はい。

青木: そういったコミュニケーションというのも、コミュニティという新しいというか、古くて新しいといったほうがいいかもしれませんが、そういうものがあります。

さて、今度は特徴的な産業を、19もあるので2つだけ取り上げたいと思います。

1つはエネルギーですね。エネルギー系の企業さんというのは、やっぱり評価得点が高いんですよね。SDGsにはエネルギーという項目もありますし、またはレジリエントな都市とか、あるいはエネルギー関連があるので、とてもSDGs評価得点が高い。またはバランスの取れた企業さんが多いです。そして、業界としての評価もすごく高くなります。

写真提供 Sustainable Brands Japan

1つ面白いのは岩谷産業さんですね。水素エネルギーについて一生懸命やられているのを見たことがある方もいると思いますけど、一方、イメージが高いエネルギー産業の中でも、イメージを強く形成しているというユニークな企業さんもあります。

ファッション・アクセサリーですと、もちろんイメージのほうがどこも強く出ています。今年は特にアパレルのサステナビリティというのがすごく注目を浴びたような気がします。そういった事例も紹介されると思いますが、高島さん、この辺はどういうふうにご覧になっていますか?

写真提供 Sustainable Brands Japan

高島: ファッションのほうは1位から3位までがアウトドア系のブランドになっていると思います。おそらく先ほど広告とコミュニティのお話をさせていただきましたが、シンプルにビジョンが溢れていることだと思います。

なので、そういった活動をしていくことによって、より認知を広げていくということがパーパスとかいろいろいわれますけど、本当に大事なのかなという例だなと思います。

青木: まさにアウトドアなライフスタイルの提案ですよね。それを徹底してやられている3社が高い評価を得ている。まさにリジェネレーションなビジネスに踏み込んでいる気がいたします。

さて、最後にまとめていきたいと思うんですね。このJSBIという指標があることは皆さんにもご理解いただいたと思います。今までは暖簾に腕押しといいますか、やっているんだけど、どう評価されているのかが分からないとか、よく質問も受けました。うちの会社、一生懸命に木を植えているんだけど、これは効果があるんだろうかとか。

もちろん悪いことじゃないですよ。ただ、それが本当に自分たちに腑に落ちて、そしてまさにジャーニーですよね。サステナブル・ジャーニーとしてスターバックスのように、次から次へとどんどん生み出していく企業に、どうやってリジェネレーションするのかということが今、問われていると思うんですよね。

さて、こういった指標を参考にしていただければと思っていますが、田中さん、電通ではどんなことをお考えですか?

株式会社電通 田中理絵 グローバル・ビジネス・センター シニア・マネジャー Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

1%の人しか当事者に該当しなくても99%が共感できるという領域がある

田中: こちらは電通Team SDGsによる、SDGsストーリーというフレームワークで、この調査と合わせたわけではないのですが、オレンジの部分のコーポレートで実績を発表していくところと、マーケティング領域である緑、地域ごとの活動や、商品ブランドの体験などの領域とつながっていることがとても大事で、これが意外と難しいのです。なぜなら、コーポレートは実績を多岐にわたって報告しなくてはならないので、あれもやっている、これもやっているといわなくてはらないことがたくさんあるんですね。ただ分かりやすくして、分かってほしいという伝え方をしても全然ダメで、全部を伝えるということではなくて、先ほども申し上げたようにパーパスとその事業がどうつながっているか、たとえ一部の方を対象にした取組でもよりよい世界を作っていくんだという実績を見せると、1%の人しか当事者に該当しなくても99%が共感できるという領域がある。そういった象徴的なアクションをきちんと共感できるよう発信できている企業が、JSBI(Japan Sustainable Brands Index)のランキングの上位にある企業なのかなと感じています。

青木: ありがとうございました。高島さんはどんなお考えですか?

高島: 私はあくまでもランキングというところも大事なんですが、自分の業界がどこにあって、何に注目されているのかというところをより分析することが大事かなと思っていて、例えば、出版、教育、広告、印刷のところを横に見ていきますと、教育はその業界だけが赤くなっていたりします。ですから、その業界の方々が何かしらの取り組みを増やしていくことで縦の赤をより増やしていくであったりとか、全く色が付いていないところ、白や青のところは広告を打てるところであれば、新しい表現にチャレンジしていただいてどんどんと色を赤に替えていくような、そういうことをしていただくことがいいんじゃないかと思います。

青木: 先ほどのP&Gの例なんかでいうと、まさにそういうことでしょうね?

高島: ええ、そうだと思います。

青木: LGBTという難しいところにキャンペーンでチャレンジするとか?

高島: そうですね。

写真提供 Sustainable Brands Japan

青木: そういったことで新しい部分に青的な、あるいは白的な所に注力することもありますし、また、赤の部分はもともと関心が高いんですからそこもありで、皆さんの戦略次第だという気がいたします。

私はこの表を見ていまして、まずはベーシックにSDGsのどういうところが評価を得ているのか、企業さんごとにデータもあるでしょうが、それを見ていただくというのが大事かなと思います。

ただ、今回のテーマ、花王の長谷部社長のテーマもそうでしたけど、やっぱりつなげていくということなんでしょうね。ただ単にそれぞれをやるんじゃなくて、今度は企業としてまさにサステナブル・ジャーニーとしてどういう目標をつなげていってストーリー化していくのか、その辺はたぶんお2人ともお上手だと思いますので、何かあればご相談くださいというふうに思います。

私から最後のラップアップとして、まさにJSBI(Japan Sustainable Brands Index)というのはイメージと評価得点の2つをベースにしました。もちろん本当は企業のサステナビリティの専門家がESG調査や評価をすると思いますけど、私たちはマーケティングでそれを消費者に向け、生活者に向けて発信してほしいということで敢えて生活者目線の視点を作っています。認知がどんどん上がっていますから、私はこういう指標がもっともっと重要視されてくるだろうと想像していますが、問題はその得点に関わる部分、緑の部分がマーケティングとか広告、または流通の現場、顧客接点を作る方たちで、評価得点は広報とかサステナビリティとか戦略室、CSRだと思うんですね。

ただ、さっきまさにおっしゃっていただいた通り、ここが連動しないといけないということがとても重要だと思います。どうですか、皆さん、私はいろいろな相談を受けますけど、縦割りになっていませんか? マーケティング、営業とサステナビリティが水と油くらい違う企業文化になっていませんか? そこをぶち抜くというのがサステナビリティなんですよ。

P&Gとかいろいろな企業を見ていても、すごい力があるなあというふうに、私はつねづね感心しています。そこにはトップマネジメントがパーパスを持って、このわだかまり、まさにバカの壁を突き破って回していくという意志が必要だと思います。

私は先ほどのセッションで花王の長谷部社長の話を聞いてすごく感動しました。まさにパーパスもあるし、具体的な製品設計の話まで社長が認知されていて、そこに注力していくんだという宣言をなされました。ぜひ皆さんの会社でもそういった宣言をしていただきたいなと思っています。

最後に、私はサステナビリティを当面リゾナンスとして、皆さんに伝えていくべきではないかと、今日、皆さんに挙げていただいた事例も今聞いても鳥肌が立ってしまうんですけど、すごくいいお話を皆さん作っているなと思いました。私はそういう企業の力をもっと信じたいと思いますし、そういう社会を皆さんとともに構築できる、そうしたことのヒントになればいいなというふうに願っています。

Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

今回の「サステナブル・ブランド 国際会議2022横浜(SB 2022 YOKOHAMA)」レポート記事は如何でしたでしょうか。

注目すべきセミナー、ディスカッション、ワークショップの様子を引き続きethicaで連載していきますので、お楽しみに!

バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[連載企画]サステナブル・ブランド国際会議2022横浜

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

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モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

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エシカルでおいしい!「Made with Care」ニュージーランドの食品
読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第9章:人が去るということ(第5節)

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