コミュニティをどう広げていくか
――共感マーケティングとは、顧客がファンになって、それが結果的にコミュニティになっていくことだと理解しています。似ている言葉であるSNSが「広く伝える」のに対して、コミュニティは「深く伝える」ためのものであるという違いがあります。まず、コミュニティの活用事例やコミュニティがどのような未来をつくっていくのかについて教えてください。
生活協同組合(以下、生協)の特徴は、組合員のみなさんに加入・出資をしてもらい、みなさんに利用してもらうこと。歴史的には、19世紀の産業革命時代のイギリスで「お互い手をつなぎ、自らの手でより良い社会を生み出そう」と「ロッチデール公正開拓者組合」が設立され、その影響をうけ協同組合がイギリス国内各地で設立されました。それにならい日本国内では、1879年に最初の生協が誕生し、その後1960年代後半からは共同購入という取り組みが始まり、これをきっかけに発展・拡大していきました。現在の組合員数は約3000万人となります。
利用者の年齢別に見ると、参加している人たちの年代は高齢にシフトしていて、若い人たちが少ない。その大きな理由として宅配事業に関して「週1回の宅配サービスだと利用しづらい」「ほかのサービスだとすぐに届くのに」という声もあります。こうした課題を解決するために、いろいろな取り組みを講じています。
たとえば、生協の商品について語り合うコミュニティをオンラインで設けて、生協のことをさらに好きになってもらう取り組みを行っています。また、デジタルトランスフォーメーション(※1)にも着手しており、若い人が面倒だと感じていることを一つひとつ解決するようにしています。
まずは「広く認知してもらう」という目的から、インスタグラムやYouTubeなどを利用して、今まで生協のことを知らなかった人への広報も行っています。「加入しないと利用できない」のではなく、加入前に「お試し購入」で利用いただく試みも行っています。私自身はデジタルマーケティング部の部長をしているので、まずは担当している領域を中心にお話します。
※1:デジタルトランスフォーメーション……IT技術の浸透により、人々の生活をより良いものへと変化させること。