読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第12章:アリストテレスとわたし(第3節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第12章:アリストテレスとわたし(第3節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第12章 アリストテレスとわたし

第3節 「善」にも種類がある

さて、第12章では、アリストテレスの『ニコマコス倫理学』から、ウェルビーイングを考えています。前回は、人生の最高の目的(最高善)は幸福である、という話をしました。今回は、「最高善」と言ったときの「善」とは一体何なのだろうか、ということを見ていきたいと思います。

広辞苑(第6版)によれば、善とは「正しいこと。道徳にかなったこと。よいこと。」です。なんだか、わかるようでわかりません。こういうときは、どういう種類のものか、場合分けしてみるとクリアになったりします。

アリストテレスはまさにこれを行っています。彼によれば、善は次の3つに分けられます。1つは、「享楽の生活」。もう1つは「政治の生活」。最後が「観想の生活」。1つずつ見ていきましょう。

「享楽の生活」は、読んで字のごとく、快楽を善として生きる生き方のことです。例えば、美味しいものを食べて幸せになったり、ソファでゴロゴロして気持ち良いと感じたり、そういったことが快楽です。

「政治の生活」で言う「政治」というのは、「ポリス」のことです。ポリスは、日本語では「都市」とも訳され、ギリシャの市民生活の中心です。むしろ、ポリスこそがギリシャそのものと言っても良いかもしれません。当時はこのポリスに参加している人のみが「市民」とされ、女性や外国人はそこから排除されていました。

話は逸れましたが、すなわち「政治の生活」とは、ギリシャで市民として生活すること、その社会的役割を果たすことを善とする生き方のことです。

そして、最後の「観想の生活」。これが一番やっかいですが、「観て」「想う」とある通り、人が何かを感じて、それについて思考することを善とする生き方です。そして、ここで言う「思考」には「理性」が欠かせません。

アリストテレスは、人間が生きることは、植物や動物が生きることとは違うと指摘しています。なぜか。それは、人間には「理性(ロゴス)」が備わっているからです。理性とは何かをここで話し始めてしまうと長くなってしまうので、ここでは「感情の反対」くらいに思っておくことにします。

「観想の生活」では、その理性を持った魂の活動こそが善です。つまり、理性的な心を持って行動することこそ、人間の良い行いであるというわけです。ちなみにアリストテレスはこれを「人間の機能」とも呼んでいます。「機能」ですから、人間にもともと備わっている潜在能力と言っても良いかもしれません。

そして、アリストテレスはきっぱりと、「富は明らかに、われわれの求めている善ではない(朴一功訳2002: 16)」と言っています。つまり、お金を稼ぐことや、お金を溜め込むことは、善そのものにはならないというわけです。もちろんこれらは、他の目的(善)のための手段ではありますが、決して目的それ自体ではありません。

さて、こうして「善」を見てみると、そこには私たちの想像をよりも遥かに広い「善」が感じられます。善いこと=幸せなこととは、単に短絡的な快楽を得ることだけではありません。社会のなかで自分の役割を果たすこと、そして、物事を自分で感じ、理性によって思考すること、それらもまた幸福である。アリストテレスはこう言うのです。

この章の冒頭で、ウェルビーイングとは社会的なものである、という話をしました。それは決して個人だけのものではなく、社会全体で志向していくものであるということです。アリストテレスが「政治の生活」と「観想の生活」で指していることは、そのことととても近いように感じます。

アリストテレスは「人間とはポリス的動物である」と言いました。これは日本語では、「人間とは社会的動物である」と訳されたりします。つまり、個人は社会なくしては生きられない、個人と社会は不可分なのだ、ということです。そうであれば、ウェルビーイングもまた個人のみならず、社会とも不可分であると言えるのではないでしょうか。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

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ethica編集部

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