姿勢が伝わるコミュニケーション(中編) ポーラ 市場接点開発部部長 望月亮氏 【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『ポーラ編』
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
姿勢が伝わるコミュニケーション(中編) ポーラ 市場接点開発部部長 望月亮氏

ポーラ 市場接点開発部部長 望月亮氏

ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2019 東京」で行われた数多くのセッションが行われました。その一つが「姿勢が伝わるコミュニケーション」で、参加したのは凸版印刷、ポーラ、電通の3社でした。今回はポーラの取り組みについてご紹介します。(エシカちゃん)

企業や雇用に縛られない自立した自分らしい生き方

今回ポーラが発表したのは2016年に20年ぶりに行ったリクルートCMについてでした。これまでのポーラがリクルートCMを作る際に考えたことは、どうやって仕事を魅力的に見せようか、どうやってビューティーディレクター(全ての女性に美を届ける専属ディレクター)という働き方が美しいかを見せようかということでした。

しかし、それでは単なる1人よがりにすぎず、新たなCMでは「どうしたら社会と向き合うことができるか」「どうやったら社会のためになる仕事として表現することができるか」を社内と社外の2つの観点で考えられました。

「まず社内ですが、当社のビューティーディレクター第1号は第2次世界大戦中に誕生しました。そんな時期に『私にやらせてください』と手を挙げた、勇気ある女性たちの力でポーラというブランドは大きくなっていったのです。そのDNAを脈々と受け継いできた現在のビューティーディレクターたちがどんな基準でポーラを選んできたのかということを考えた時、企業や雇用に縛られない自立した自分らしい生き方を見つけて、さらに、それが地域の方々に貢献できているという幸福感がビューティーディレクターのやりがいにつながっていることに気づきました。そこで、まずは自分たちがやっている仕事に自信を持つにはどうしたらいいか、その仕事に社会における貢献がどうつながっていくのかを考えました」(市場接点開発部部長・望月亮氏)

一歩踏み出せば誰もが必ず女性らしい生き方ができる

一方、ポーラの中には自立した女性が増えてきているものの、社外的には一歩を踏み出そうとしてもその一歩がなかなか踏み出せない女性が多いというのが日本の実情であることが分かりました。そこで、女性としてやるべきことがたくさんあるという、その気づきを提供することを目的に2016年から3本のCMを制作しました。

CMでは女性たちにさまざまなメッセージを発信しました。しかし、それは世の中の環境を変えたいといった大それたものではなく、ただ1つポーラが願ったのは、女性は誰しも可能性を秘めているという思いであり、一歩踏み出せば誰もが必ず女性らしい生き方ができるということをメッセージとして訴えました。そして、それはこれが正解だということではなく、こういう生き方はどうですかという問いとして発信しました」(望月氏)

今、世の中の視点や意識は外ばかりに向いてしまっていて、ステレオタイプに引っ張られた女性や、こうあることが正解だと縛られてしまっている女性が多くなっています。そこで、そうした女性に向けて、外ではなく自分自身の内側に目を向けていこうということがこのCMのもっとも伝えたかったメッセージだったと望月氏はいいます。

ポーラ 市場接点開発部部長 望月亮氏

思いもよらなかった副産物が生まれた瞬間

CMはさまざまな成果を挙げました。例えば、ヤフージャパンのトップページに上がったり、ツイッターなどのSNSでも好評で、リクルートのCMだったにも関わらず同社には「ポーラを使ってみたい」という前向きの声も届けられたそうです。

「共感できるメッセージを発信することで思いもよらなかった副産物が生まれた瞬間だと考えています。実際のリクルートのほうでもフォーラムの参加者の数が大幅にアップしたり、参加者の質も向上したり、さらには『転職してでもポーラで働きたい』といってくださる方も増えました」(望月氏)

自分の中にある可能性や個性、強さに目を向けることによって自分らしい生き方を手に入れることができる、その小さな一歩を踏み出すことができるということを信じて発信されたポーラのメッセージが大きな反響を巻き起こしたことは間違いなさそうです。

 最後に、ファシリテーターを務めたSB東京サステナビリティ・プロデューサーの足立直樹氏は、

CMを見ると男性の私でもグッとくることがありましたから、女性なら共感できるところが多かったのではないでしょうか。自分たちが考えていることをこうやってストレートに表現するというのは日本の企業の場合、なかなかできないことかもしれませんが、実際にやってみると大きな力を発揮するというお手本のような事例だと思います」

と感想を述べていました。

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

関連記事:

3月6日・7日【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】メディアパートナーのethicaでは優待チケットも

誠実努力で「なくてはならない会社」へ 【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『セイコーエプソン編』

セイコーエプソン・碓井社長が思い描く、色彩豊かな未来のヴィジョン

【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『テレビ東京編』

【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『クボタ編』

【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『電通編』

【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『YouMe Nepal代表理事 ライ シャラド氏編』

【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『フィリップ モリス編』

【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『横河電機編』

【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『横浜市編』

【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『凸版印刷編』

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【ethica Traveler】 連載企画Vol.7 宇賀なつみ (終章)『Returning to TOKYO~サステナブルなフライト〜』
独自記事 【 2024/4/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
[エシカ編集部 体験企画]環境や人権に配慮したエシカル素材で心地の良いナチュラルな香りと時間を実感「Care me(ケアミー)」のインバスグッズ
sponsored 【 2024/3/29 】 Health & Beauty
一日の終わりのバスタイムは、その日の自分をとびきり労って心とからだを回復させてあげたい愛おしい時間。そんなセルフケアの習慣にほんの少し、地球環境や自分以外の人にもちょっと良いアクションが取れたら、自分のことがもっと好きになれる気がしませんか? 今回ご紹介するのはエシカ編集部が前々から注目していた、エシカルな素材を使って...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.6 宇賀なつみ (第5章)ゴールデン・ゲート・ブリッジ
独自記事 【 2024/3/27 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
そろそろ知っておかなくちゃ! 水素のこと。森中絵美(川崎重工)×中村知弘(UCC)
sponsored 【 2024/3/26 】 Work & Study
2023年の記録的な猛暑に、地球温暖化を肌で感じた人も多いだろう。こうした気候変動を食い止めるために、今、社会は脱炭素への取り組みを強化している。その中で次世代エネルギーとして世界から注目を集めているのが「水素」だ。とはいえまだ「水素ってどんなもの?」という問いを持っている人も多い。2024年2月に開催された「サステナ...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学
独自記事 【 2024/2/28 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【ethica Traveler】連載企画Vol.3 宇賀なつみ (第2章)W サンフランシスコ ホテル
独自記事 【 2024/2/14 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.2 宇賀なつみ (第1章)サンフランシスコ国際空港
独自記事 【 2024/1/31 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【Earth Day】フランス商工会議所で開催するイベントにてethica編集部が基調講演
イベント 【 2023/4/3 】 Work & Study
来たる4月22日は「アースデイ(地球の日)」地球環境を守る意思を込めた国際的な記念日です。1970年にアメリカで誕生したこの記念日は、当時アメリカ上院議員だったD・ネルソンの「環境の日が必要だ」という発言に呼応し、ひとりの学生が『地球の日』を作ろうと呼びかけたことがきっかけでした。代表や規則のないアースデイでは、国籍や...
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

姿勢が伝わるコミュニケーション(前編) トッパンアイデアセンター 亀井光則氏 【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『凸版印刷編』
姿勢が伝わるコミュニケーション(後編) 電通 プランナー 木下舞耶氏 【サステナブル・ブランド国際会議2019東京】レポート『電通編』木下舞耶氏

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます