(第26話)「お月見の文化を味わってみませんか? 中秋の名月の歴史とお家での愉しみ方」キコの「暮らしの塩梅」
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(第26話)「お月見の文化を味わってみませんか? 中秋の名月の歴史とお家での愉しみ方」キコの「暮らしの塩梅」

「私によくて、世界にイイ」が実現できる、エシカルな暮らしのカタチってなんだろう。仕事に家事に育児に……。日々生活を回すだけでも大変な私たちにとって、新しく行動を起こすのはエネルギーも時間も使うし、ハードルが高く感じてしまうもの。

でも日々の暮らしのなかで、少しでも”良い”につながることができたら?

当たり前の毎日のなかで、大切な家族も、世界も、そして私自身もほんのちょっぴり幸せになるような選択をしていけたらいいなと思うのです。

第25話では、古くから日本の暮らしに根ざしていた「二十四節気」についてお伝えしました。今回は、もうすぐ訪れる「中秋の名月」の歴史とその愉しみ方をお話ししたいと思います。

中秋の名月とは? 今年はいつ?

古くから続く風習の一つである秋のお月見。

毎月ある満月の中でも、特に秋は大気が澄みわたり月が美しく見えると言われています。

 

中秋とは秋の真ん中という意味で、旧暦では7、8、9月が秋にあたることから、そのちょうど真ん中の旧暦の8月15日(新暦の9月中旬〜10月初旬)に行われるのが中秋節です。

別名、十五夜(じゅうごや)、芋名月(いもめいげつ)などとも呼ばれます。

 

今年の中秋の名月は10月1日。

旧暦と新暦にはズレがあるため、昨年は9月13日、そして来年は9月21日と、毎年日にちは大きく変わります。

さらに、実は当日が満月であることは稀で、月と地球の公転軌道の関係から1日か2日前後していることが大半なのです。

お月見の風習はいつから?

月の満ち欠けで月日や季節の流れを感じていた人々にとって、月はとても大切な存在。

 

お月見の風習は縄文時代からと歴史は長く、平安時代のころはお酒やごちそうを囲んで、詩歌や管弦を嗜む貴族ならではの雅な催しが行われていたと言われています。

当時は月は直接眺めるものではなく、水面や盃のお酒に映ったものを愛でて楽しんでいたそうです。

 

庶民にも十五夜の風習が広く根付いていったのは江戸時代に入ってから。

貴族だけが楽しむ宴から、お団子などをお供えして、農作物の豊作祈願と収穫の感謝の気持ちを表す行事の意味合いが強くなっていきました。

 

ちなみに、古くから大切にされているお月見の日は十五夜に限らず、その後訪れる十三夜(じゅうさんや・旧暦9月13日)、十日夜(とおかんや・旧暦10月10日)と、合計3日あります。

 

十三夜は栗や豆の収穫をお祝いする日でもあるため、栗名月・豆名月とも呼ばれ、この日はお団子の代わりに栗などをお供えし、感謝の気持ちを表します。

十五夜と十三夜、どちらか一方しか見ないことを「片見月」と呼び、縁起が悪いこととされていました。

 

十日夜は東日本を中心に収穫祭が行われる風習があります。お月見が主役ではない日だそうですが、これらの日が3日とも晴れてお月見ができると縁起が良いとされています。

地域によって異なるお供えもの

お月見と聞いてまず思い浮かべるのは、ススキと三方にピラミッド型に美しく積み重なったまん丸のお団子ではないでしょうか。

 

これは関東のスタイルで、並べ方・積み方・個数は諸説あります。

十五夜にちなんで15個としたり、1年の満月の回数に合わせて12個(13個)としたり。

まん丸の形は満月の象徴で、豊作祈願や健康、幸福を表しています。

 

関西では、芋名月の名の通り里芋に見立てたお月見だんごが多く、里芋のように少し先を尖らせたお団子にこしあんをまとわせているのが特徴です。

 

中国、四国地方では串団子の形が多く見られます。桃の節句の三色だんごのようにお団子自体に色をつけたり、みたらしやきなこをまぶすようです。

 

その他にも、東北ではおまんじゅう、ルーツである中国では月餅などのお菓子を備えて観月のお祝いをします。

それからお月見に欠かせないススキ。

この時期収穫される稲穂に見立てて、豊作の願いや、スッと尖った葉に厄払いや魔除けの意味を込めて、お供えされています。

 

十五夜は収穫を祝う行事でもあるため、秋の七草や果物、収穫物などもお供えします。

特にぶどうのようなツルのある作物は、神様の世界とのつながりが強くなると考えられていました。

どこにお供えするの? 意外な楽しい風習も

お供えする場所は、床の間か窓辺などお月様が見えるところ。

日本古来の左上位の考え方から、お月様から見て左側に植物や農作物、右側にお団子をお供えした方が良いとされています。

 

お供えしたお団子や農作物はその後、感謝の気持ちを込めていただきます。

食べることによって、お月様の力を分けてもらい、健康や幸せを得ることができると考えられているからです。

 

地域によっては、近所の子どもたちがお月見のお供えものを盗み食いするのを歓迎する風習もあります。お月様が食べてくれたと考えるそうです。

「月見どろぼう」といって、ハロウィンのように子どもたちが家々をめぐってお菓子をもらったり。

神聖なお月見のイメージと打って変わって、なんだか心温まる風習ですね。

 

地域によって少しずつ異なるお月見のやり方ですが、自分の住む地域の風習を調べたり聞いてみるのも、新たな気づきがあって楽しいかもしれませんね。

またお寺や神社で行われる観月会に参加してみると、いつもと違う風雅で情緒のある雰囲気を味わうことができるかもしれません。

中秋の名月、大切な人と楽しむひとときに

お団子とススキでおなじみのお月見ですが、その歴史は長く、人々にとって深い思いの込められた大切な行事であることがわかります。

 

たとえお天気が悪くて月が見えなくとも、「無月(むづき)」「雨月(うづき)」と呼んで風情と捉え、ありのまま受け入れていた日本人の心根に触れる機会かもしれません。

自然の恵みや健康に感謝して、心豊かに過ごすひと時となれば素敵ですね。

 

我が家では毎年お団子とススキを一緒にお供えしています。

昨年からは娘も一緒にお団子作り。言葉で説明しなくとも、日本の文化や風情を一緒に味わう時間となればいいなぁと思っています。

 

特別なことをしなくても、少しベランダに出てのんびり秋の夜空を見上げる。

日々の喧騒を忘れて、秋の夜長の美しい月を愛でてみるのはいかがでしょうか?

【連載】キコの「暮らしの塩梅」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
[エシカ編集部 体験企画]環境や人権に配慮したエシカル素材で心地の良いナチュラルな香りと時間を実感「Care me(ケアミー)」のインバスグッズ
sponsored 【 2024/3/29 】 Health & Beauty
一日の終わりのバスタイムは、その日の自分をとびきり労って心とからだを回復させてあげたい愛おしい時間。そんなセルフケアの習慣にほんの少し、地球環境や自分以外の人にもちょっと良いアクションが取れたら、自分のことがもっと好きになれる気がしませんか? 今回ご紹介するのはエシカ編集部が前々から注目していた、エシカルな素材を使って...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.6 宇賀なつみ (第5章)ゴールデン・ゲート・ブリッジ
独自記事 【 2024/3/27 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
そろそろ知っておかなくちゃ! 水素のこと。森中絵美(川崎重工)×中村知弘(UCC)
sponsored 【 2024/3/26 】 Work & Study
2023年の記録的な猛暑に、地球温暖化を肌で感じた人も多いだろう。こうした気候変動を食い止めるために、今、社会は脱炭素への取り組みを強化している。その中で次世代エネルギーとして世界から注目を集めているのが「水素」だ。とはいえまだ「水素ってどんなもの?」という問いを持っている人も多い。2024年2月に開催された「サステナ...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学
独自記事 【 2024/2/28 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【ethica Traveler】連載企画Vol.3 宇賀なつみ (第2章)W サンフランシスコ ホテル
独自記事 【 2024/2/14 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.2 宇賀なつみ (第1章)サンフランシスコ国際空港
独自記事 【 2024/1/31 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【Earth Day】フランス商工会議所で開催するイベントにてethica編集部が基調講演
イベント 【 2023/4/3 】 Work & Study
来たる4月22日は「アースデイ(地球の日)」地球環境を守る意思を込めた国際的な記念日です。1970年にアメリカで誕生したこの記念日は、当時アメリカ上院議員だったD・ネルソンの「環境の日が必要だ」という発言に呼応し、ひとりの学生が『地球の日』を作ろうと呼びかけたことがきっかけでした。代表や規則のないアースデイでは、国籍や...
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

言語と私 【スミレのドイツ留学 回顧録】
サステナブルなお料理作りのヒントがいっぱい! 人気ユーチューバー・Maiさんの『1人前食堂』をチェック 農家からの恵みの食材を使った食と農をつなぐヘルシーレシピの数々。

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます