ニューヨーク近代美術館(MoMA)のデザインストアでも人気のアイテム「プルタブ・シリーズ」について『Love&sense』代表の高津玉枝さんをインタビュー
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ニューヨーク近代美術館(MoMA)のデザインストアでも人気のアイテム「プルタブ・シリーズ」について『Love&sense』代表の高津玉枝さんをインタビュー

プルタブミディアムショルダー ¥18,000円(税別)

「身にまとうSDGs」って?プルタブから生まれたバッグ&アクセで着こなしを爽やかにアップデート!

「かわいい!」初めて見た瞬間から、おしゃれ心を鷲掴みにする煌めきルックスのバッグやアクセサリー。「何でできているの?」と手に取ってみると、アルミ缶のプルタブを一つひとつ編み込んで作られていることに驚きます。実はこれ、リサイクルされたプルタブを素材に、ブラジルで作られたフェアトレードの商品なのです。

スタイリッシュなデザインが評価され、ニューヨーク近代美術館(MoMA)のデザインストアでも取り扱われているそうですよ。

今回は、じわじわ人気拡大中のプルタブ・シリーズについて日本の代理店でもあり、日本でフェアトレードのセレクトショップを展開する『Love&sense』代表の高津玉枝さんに、商品との出会いや販売のきっかけについて伺いました。

アップサイクルなプルタブ・バッグとの出会いとは?

「最初に日本でプルタブ・バッグを見つけたとき“何だろう”と、とても不思議に思い、販売している方に伺ってみたことがありました。当時からサステナブルな取り組みに興味をもっていたので、この商品には何かストーリーがあるのではないか。直感でそう思ったんです。調べてみると、アメリカ・サンフランシスコを拠点とする『エスカマ・スタジオ』という会社がこのプルタブ・バッグを扱っていることがわかりました」

プルタブを使ってバッグを作るということ自体、予想外だったという高津さん。

さらに調べていくと、バッグ生産の背景にはブラジルの女性たちの自立支援という目標があること、また、エスカマ・スタジオが、継続可能な社会を目指すフェアトレード・カンパニーとして活動していることがわかりました。

「ブラジルの生産者とフェアトレードの原則に基づいて、デザインを提供し、直接取引を行なうことで継続的な販売と経済支援の両立を真剣に考えていました。そんなエスカマ・スタジオの理念に共感し、コンタクトを取って何度も交渉を重ね、2008年より日本での商品販売をスタートするに至りました」

もともとブラジルにはリサイクルのプルタブを集めて編む工芸品があり、お土産ものとして販売し、それが地元の人たちの小さな収入源になっていました。エスカマ ・スタジオによって欧米で販売できる品質とデザインが加わり、世界が注目するプルタブ・バッグへと成長したのです。

「エコ×フェアトレード」が生んだバッグ生産の現場を訪ねて

リサイクル・アルミ缶のプルタブを利用して、ブラジルの首都ブラジリアの近郊、経済的に不況な団地地域で活動する二つの工芸団体(CiadoLacre / As Partneras do Lacre)の職人たちがバッグやアクセサリーを手作りしています。“クロシェ編み”というブラジル伝統の手編み技術によって生まれた商品は、機械にはないハンドメイドならではの風合いとぬくもりが感じられます。

地域の女性たちは生産を通して現金収入を得ると同時に、自信を持って生きる場所を確保しました。

2008年に取引を開始後、実際にブラジルの生産者のもとを訪ね、制作の現場を見た高津さんは、その丁寧な作業に心を打たれたと言います。

「まず、サイズ、色、形がバラバラのプルタブを一個ずつ選別し、きれいに洗って乾燥させ、表面の凹凸を落としてなめらかな状態に整えるんです。そして、作り手がもっとも神経を使う編みの工程では、ゆる過ぎず、きつ過ぎず、程良いしなやかさを保つために、バランスに配慮しながら高い技術で編み上げていました」

驚くほど軽くて丈夫。ショルダータイプのバッグのストラップは、内側が編み込み糸で覆われているため、滑り落ちることもありません。使うほどに、その完成度の高さが実感できる仕上がりが人気の理由でもあります。

「米国で展開するアイテムはエスカマ・スタジオがデザイン提案をしていますが、日本市場で継続的に販売していくために、私たちは日本人にあったサイズや使い勝手を追求した日本仕様の商品を展開しています」

ティアドロップショルダー ¥20,000円(税別)

“日本仕様”と言っても、トレンドに合わせて毎回新商品を提案したりするのではなく、作り手の技術を大切にしながら、無理なく継続的に生産できる仕様を目指すのが高津さんの信念。

「私たちのバッグを長く使ってもらいたい」という思いで、流行に左右されないベーシックなデザインをとことん追求しているのです。

「SDGs」はスタイリッシュに楽しむ時代

プルタブショートネックレス ¥4,600円(税別)、ブローチ ¥4,600円(税別)

これからの時代、どうせ身につけるなら、地球環境にも生産者にも配慮したものがいい。その上おしゃれなデザインなら、持っていて話題になること間違いなし!プルタブ・シリーズはSDGsとも深い関係があります。

SDGs1番 貧困をなくそう
SDGs8番 働きがいも経済成長も
SDGs10番 人や国の不平等をなくそう
SDGs12番 つくる責任、つかう責任

高津さんがそもそもプルタブ・シリーズを扱うことを決めた理由は「一目惚れ」。プルタブというリサイクル素材を使う独創性と完成度の高さ、洗練されたデザイン性。そしてそれがフェアトレードで取引されているということに新しい“価値”を見出したからです。

「私たちが買い物をするときにはいろいろな価値基準があると思います。価格もありますし、ブランドの歴史やストーリーに価値を感じて手に取ることもあります。そこにもう一つ、誰かの笑顔につながるという新しい価値が、選択の一つに加わる世の中になればいいな、と私は思っています。楽しくてスタイリッシュな商品から、エシカルなマインドに連鎖していくような流れができたら、世の中がきっと変わっていくに違いありません」

今や世界中にファンをつくり、各国のリーダーやセレブたちの間でも注目されているプルタブ・シリーズ。バッグやアクセサリーに込められたポジティブなエネルギーに触れてみてはいかがでしょうか。

さっそく商品をチェック!

https://shop.love-sense.jp/?mode=f1

『Love&sense』代表 高津玉枝

大学卒業後 富士ゼロックスに営業職として入社。その後雑貨商社に転職。91年にマーケティング会社を設立。主に家庭用品・インテリアなどで百貨店や、製造業の業態開発などを行う。95年よりPR事業も手掛け掲載媒体は3500誌以上。
安いものばかりが消費者に求められることに疑問を感じた90年代後半、フェアトレードの概念を知る。インドのフェアトレード団体を訪問時、国際NGOオックスファムの商品に出会い、03年にオックスファム・ジャパンの設立に寄与。
06年に株式会社福市を設立。08年フェアトレードのセレクトショップLove&sense表参道ヒルズで立ち上げ、その後高島屋・伊勢丹・三越などでイベント出店。12年に阪急百貨店うめだ本店に初の直営ショップをオープン。フェアトレード事業に専念するため、20年続けたマーケティングの会社を解散。
東日本大震災後に、手仕事で東北支援プロジェクト「EAST LOOP」を立ち上げる。7000万円以上の売り上げをつくり、作り手に200人仕事としての収入を届けた。事業は東北に法人を設立して移管。 経産省・復興庁から、東北支援のための事業を受託。社会的課題を解決目指す企業のコンサルティングも手掛ける。
15年京都市イノベーションクラスター構想に基づき、イノベーション・キュレーター塾の塾長に任命され塾がスタート。

記者:山田ふみ

多摩美術大学デザイン科卒。ファッションメーカーBIGIグループのプレス、マガジンハウスanan編集部記者を経て独立。ELLE JAPON、マダムフィガロの創刊に携わり、リクルート通販事業部にて新創刊女性誌の副編集長を務める。美容、インテリア、食を中心に女性のライフスタイルの動向を雑誌・新聞、WEBなどで発信。2012年より7年間タイ、シンガポールにて現地情報誌の編集に関わる。2019年帰国後、東京・八ヶ岳を拠点に執筆活動を行う。アート、教育、美容、食と農に関心を持ち、ethica(エシカ)編集部に参加「私によくて、世界にイイ。」情報の編集及びライティングを担当。著書に「ワサナのタイ料理」(文化出版局・共著)あり。趣味は世界のファーマーズマーケットめぐり。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

山田ふみ

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