“本しゃべりすと”が語る、「バレンタインには本を贈ろう!」 エシカが提案するバレンタイン2014<特集①前編>
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“本しゃべりすと”が語る、「バレンタインには本を贈ろう!」

「本を贈ったり、贈られたり。互いに好奇心やワクワクする世界を広げていける……そんな世の中って、とても楽しいと思うんですよ。バレンタインはプレゼントにうってつけの日。男性にはもちろん、女性に対してだって『面白かったから、よかったら読んでみて』と、気軽に贈ってみませんか?」

そんな風に語るのは、“本しゃべりすと”の奥村知花さん。フリーランスで書籍PRに携わるほか、本のあるライフスタイルをさまざまな形で提案している。

いつかどこかで芽吹くかも? それが楽しい

「本って、自分で読み進めなければ楽しめない。言ってみれば能動的なエンタテインメントですよね。だからこそ、自分に刺さる一節が見つかるし、何年も経った後でふと思い出す一節なんかもある。誰かから贈られた本のことを、ある日、ふと思い出すのも楽しいと思うんですよ。そんな未来を思い浮かべながら、いつどこで芽吹くのか誰もが判らない(笑)、小さな種を蒔くような……いたずらっぽい気分で本を選んでみてほしいのです」

バレンタインに本を贈りあう。「読む」という行為によって蒔かれた種は、そのうち忘れられたりもする。いつか芽吹くのか、あるいは埋まったままなのかも判らないけれど、うまくすれば芽吹いた若葉が世界中に溢れていく……そんな夢想も楽しめるのだ。

「何気なく読んだ本の一節が、どうにも心に刺さるとき。よく考えてみたら、今の自分に重なる状況だったり、直面している壁を超える糸口になったりしているんです。自分が贈った本が、誰かにとってそんな役割を果たすかもしれないというのもワクワクします。本なんて文庫本であれば一冊数百円、気軽に贈れます。もちろん、チョコを添えて贈るのもいいですよね」

 

本についてしゃべる人?

ところで、奥村さんの名刺にある見慣れない肩書き、“本しゃべりすと”とは一体?

「フリーランスでのPR業務を始めた頃、名刺には“書籍PR”とだけ書いていたんです。けれども、あるとき『それじゃあよく判らないよ。本を作る人なのか何なのか……』と指摘されて。出版社の依頼で新刊をPRする仕事がメインですが、パブリシティと言っても一般的には判りにくいですし。本紹介の記事を書かせていただく連載も始めていましたが、私は書評家ではないですし。どう説明すれば私の仕事が判ってもらえるだろう?と考え込んでしまいました。そうしたら、『本についてしゃべるんだから、“本しゃべりすと”でいいんじゃない?』とアドバイスまでいただいて」

名付け親はキッチュこと松尾貴史さん。さすがの指摘をもらえたことで、やりたいことをより明確化できたという。「私は本についてしゃべる人、だから“本しゃべりすと”です」ときっぱり。

 

読書には、カルチベートの醍醐味がある

仕事であると同時に大好きな趣味でもある、本を読むという行為。読書について考えるとき、奥村さんの頭にあるのは太宰治の『正義と微笑』だ。

「勉強して、それから、けろりと忘れてもいいんだ。覚えるということが大事なのではなくて、大事なのは、カルチベートされるということなんだ。カルチュアというのは……心を広く持つという事なんだ。つまり、愛するという事を知る事だ』という一節、カルチベートという言葉が好きなんです。読書も、読んでけろりと忘れていい。忘れてもほんの少し残るものは必ずあって、それらが積み重なって人生を豊かにしてくれると信じています」

あなたがバレンタインに贈る一冊、相手にはどんな珠玉の一節をもたらすことになるだろう……? そんな想像を膨らませることが、贈る側の楽しみにもなりそうだ。【後編に続く】

後編は、奥村さんによるケーススタディ「今年のバレンタインに贈りたい厳選8冊」
更新タイミングは、ethica編集部facebookやTwitterでご案内させて頂きます。

取材協力
奥村知花 OKUMURA CHICA
成城大学卒。“本しゃべりすと”として、新刊書籍のパブリシティに携わりつつ、書評エッセイなど執筆。

インタビュアー
松本 典子  MATSUMOTO NORIKO

主にライフスタイル&カルチャーの分野で雑誌やwebメディア、単行本の執筆・編集に携わる。本も好きだが映画にはさらに目が無い。

Photo=Kentaro Ohtani (TRANSMEDIA)

松本典子

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