【連載】私たちはどこにいるのか 永島郁哉・著 (後編)2025年、2040年から見る2023年
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】私たちはどこにいるのか 永島郁哉・著 (後編)2025年、2040年から見る2023年

※本連載は当時(2023年1月時点)早稲田大学大学院で社会学を研究していた永島郁哉(現・島根大学 教育学部 附属教師教育研究センター 特任助教)による執筆となります。

「2025年問題」と「2040年問題」

最近、中国の人口減少が話題になりました。出生率の低下が続き、61年ぶりに総人口が「減」となったそうです。

もちろん、日本も他人事ではありません。昨年の出生数は77万人で過去最低を更新。2019年87万人、2020年84万人、2021年81万人と、ここ数年は約3万人減のペースで推移していましたが、昨年は約4万人の減となり、ついに80万人を割りました。

2025年には団塊の世代が75歳以上になり、2040年には団塊ジュニア世代が65歳以上となります。これらはそれぞれ「2025年問題」「2040年問題」と呼ばれ、医療や福祉のひっ迫、そして労働者の不足がさらに深刻化することが予想されています。

特に、就業者数の減少は国の財政に関係する重要な問題で、人口減のなかでいかにして企業の生産力を維持するのかが、向こう10-15年の課題とされています。これに対して、厚生労働省の雇用対策研究会は2019年に次のような報告書を発表しました。その題目が「人口減少・社会構造の変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて」。人口減による労働者不足に対して、ウェルビーイングが解決方法の1つになる、ということが示されたのです。

「死なない働き方」ではなく「幸せな働き方」

就業面でのウェルビーイングの向上が、企業の生産力の向上につながり、そうして企業の生産性が上がることが、従業員のウェルビーイング向上に対する原資となる、と研究会は指摘しています。バブル崩壊以降「過労死」が社会問題となってから職場環境の改善がうたわれるようになりましたが、最近では「死なない働き方」ではなく「幸せな働き方」へと職場環境をシフトさせていこうという動きがますます強くなっていると考えられます。

良い意味でも悪い意味でも「主体的に生きる」ことが求められる世の中で、働き方もまた変化しています。でも、主体的に生きることは自分勝手に働くことではありません。むしろ、主体的に生きることが、働く企業のためになったり、もっと言えば、社会のためになることだって、きっと少なくないはずです。

ウェルビーイングというアイデアが思考の補助線となることで、私たちは主体的に生きることと、社会を良いものにすること、という2つの物事を繋げて考えることができます。2025年まであと2年。2040年まであと17年。2023年に生きるわたしたちは、人口減少という問題に立ち向かうために、ウェルビーイングを追い求める時代にいるのです。

※本記事は2023年1月時点の内容となります。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第1話)逆張り者
独自記事 【 2025/9/5 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (序章)最初の関門
独自記事 【 2025/8/31 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
持続可能な酪農の実現を支える明治の取り組みと、乳業の歴史
sponsored 【 2025/9/3 】 Food
乳製品やチョコレートなどの食品を取り扱うメーカーである明治(Meiji)。大ヒット商品でもある「明治おいしい牛乳」や「明治ブルガリアヨーグルト」などは冷蔵庫に常備され、マストアイテムになっている…なんて家庭も多いのでは?そんな私たちの日常生活に欠かせない明治グループは、2021 年から「健康にアイデアを」をグループスロ...
【単独取材】料理に懸け30年、永島健志シェフが語る美食哲学
独自記事 【 2025/10/9 】 Food
この取材は、かつて学校が苦手な不良少年だった、永島健志さんが、料理という表現と出会い「世界のベスト・レストラン50」で世界1位を5度獲得したスペインのレストラン「エル・ブリ」で修業し、帰国後に体験型レストラン「81」を立ち上げた貴重な経験を語って頂いたものである。
アラン・デュカス氏が登壇「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2025」 記者発表会レポート
INFORMATION 【 2025/9/15 】 Food
今年で開催15回目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、少し敷居が高いと感じてしまう人もいるフランス料理を、馴染みのない人にも楽しんでもらいたいという思いから誕生したグルメフェスティバルです。期間中(9月20日〜10月20日)は、参加しているレストランにて特別価格で、本格的なフレンチのコース料理を...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第2話)新天地
独自記事 【 2025/9/25 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...

次の記事

【連載】季節のプラントベースレシピ(第30話)「プラントベースでも満足感たっぷり。大葉香る和風ガパオライス」
100%植物性アイスeclipsecoを使ったご褒美スイーツが期間限定で「ハイアット セントリック 銀座 東京」に登場

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます