本物を知る エシカリスタVol.28 Ethical Fashion Japan代表 竹村伊央さん
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先日、ある方が、「いまの若い子は本物を知らない」と言っておられました。ファストファッションが定番化し、若い世代はそれをかっこいいと思うようになり、「別に安いからいいじゃん!」と、他のものを見ない傾向があるようなのです。

Some rights reserved by thinkretail / Via Flickr

ファストファッションは、コレクションで発表された最先端のモード、すなわちハイファッションからヒントを得た類似商品です。昔は「いまはこれしか買えないけど、成功したら欲しいものを買う!」と、多くの人が思っていた時代がありました。以前と比べて現在は、海外への強い憧れや、知らないものに対しての憧れや興味が薄らいでいるように感じます。

そこで私なりに「これはなぜか」と考えたときに、やはり「本物」を見ていないし、感じていないのが一番の理由ではないかと思いました。いまは、インターネットとSNSを通じて、すぐ簡単に世界各国の情報や見たいものが手元の画面で見られる時代です。疑似体験の精度が高くなり、あたかも自分がそこにいるような体験が得られます。

でも、それはあくまで「疑似」です。それだけに満足してしまって、本当のもの・ことを体験したことにはなりません。人の感情はさまざまで、実際に「本物」を見たときの感情や湧き出る考えなんて、誰にも予想がつきません。

写真や映像は第三者が編集したもの。第三者の意図が加わった画像や映像を見て、あたかも自分もそのものを見た気分になってしまう。ですが、実際その場所、その雰囲気、一緒に行った人、そのときの自分の感情が組み合わさって、体験の結果が出るのであり、地下鉄に乗りながら見た写真とは、きっと感じるものは違うと思います。そこが「疑似」と「本物」の違いなのではないでしょうか?

Photo=Some rights reserved by thinkretail / Via Flickr

時代は流れます。そこで生活の変化はもちろんあって良いと思いますが、本質を見失ってしまうのは悲しい気がします。よく、ジャングルやキャンプから帰ってきた人が「電気や水のありがたさが分かった」というコメントをしますね。やはりそれも、現在の生活に足りなかったものを自分で体験することによって、見つけられたから言える言葉なのではないのかな?と思います。

時代は進歩して行くべきですし、新しい技術も生まれてほしいと個人的には願っていますが、それと同時にやはり「本物」は忘れてはいけないと思うのです。なので、やはりこれから社会を作り上げていく若い人たちには、ぜひ「本物」を感じる努力をしてほしいと願います。

Photo=Some rights reserved by Rossana Ferreira / Via Flickr

Some rights reserved by Rossana Ferreira / Via Flickr

本記事はETHICAL FASHION JAPANに2014年8月31日に掲載されたものです。http://www.ethicalfashionjapan.com/2014/08/io-blog-12/

Ethical Fashion Japan代表  竹村伊央さん

1982年名古屋市生まれ。高校卒 業と同時に渡英し、イギリスでエシカルファッションが興隆しつつある2005年より、エシカルファッションムーブメントを作り上げたブランドの1つ、 JUNKY STYLINGに勤務。またスタイリストとしても活躍し、エシカルを中心としたスタイリングも手がける。2010年帰国後、2012年にEthical Fashion Japanを設立。同年に「ファッション×社会問題」をコンセプトにしたエシカルファッション誌「Emagazine」をローンチするほか、2013年3 月の1周年イベントでは日本初のエシカルファッションのショッピングイベントをエシカルブランド14社と開催。ファッションとしてエシカルを根付かせるさ まざまな取り組みを行う。

Ethical Fashion Japan

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