(第8話)「夏を迎える前に欠かせない、梅雨のひと仕事」【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(第8話)「夏を迎える前に欠かせない、梅雨のひと仕事」【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

晴れ渡った空と爽やかな風を心地良く感じていたのもつかの間。

梅雨に入り、ジメジメと肌にまとわりつく蒸し暑さを感じるようになりました。

 

夏が本格化する前に欠かせないのが、今まさに旬の梅を漬け込む、梅シロップ作り。

 

炎天下で外遊びをしたあと、西日を浴びながら仕事から帰ってきたとき、熱帯夜のごはんのお供に。

氷を入れたグラスにシロップと炭酸水(もしくは水)を1:4くらいの割合でそっと注ぎ、かき混ぜる手間も惜しんでその場でゴクリとひと口。

乾いた喉をうるおし、火照った体の熱をスーッと取り去ってくれるのを感じます。

 

梅に含まれるたっぷりのクエン酸が夏バテ予防&疲労回復にもなる梅シロップは、心身ともにまいりそうな夏の暑さを和らげてくれる、わが家の必需品です。

梅シロップの作り方はとっても簡単。

清潔なビンに梅と砂糖を1:1の割合で入れて、1日に数回振って砂糖が溶けて1ヶ月もすれば完成。

 

青梅で作るとスッキリ爽やかに。ちょっと熟しはじめて黄味がかった梅はなんといっても香りが良い。お砂糖も氷砂糖で作るとさっぱり、未精製のきび砂糖や黒糖だとミネラルたっぷりまろやかな感じに。

その時々で作り分け、味の違いや変化を楽しめるのも手作りならではの醍醐味です。

 

できあがった梅シロップは、水や炭酸水で薄めて梅ジュースとして飲むのはもちろん、かき氷のシロップに、豆乳で割ってラッシー風に、寒天で固めてゼリーに、凍らせてシャーベットに、ドレッシングに、煮物の味付けに、とアレンジも多彩で、あればあるほど重宝する逸品。

 

娘と私のお気に入りは、固めておいた寒天をフォークで崩して、そこに梅シロップをかけるだけのお手軽あんみつ風。夏定番のおやつです。

梅シロップといえば、中学生のころ祖母に飲ませてもらった梅ジュースが、とても印象に残っています。祖母によると曽祖母が生前作ったものらしく、長年地下室で保管されていたそれは、とろりと濃厚で、まろやかな梅の甘酸っぱさが口に広がる感じがたまらなく美味しく、忘れられない味でした。

 

毎年梅シロップを仕込むときに目指すはその味!なのですが、同じ風味を再現するのはなかなか難しく。

おそらく黄色く色付きはじめた梅で、お砂糖は黒糖かきび砂糖、そして数年冷暗所で熟成させる。

この条件が満たせたら、きっと曽祖母が作っていた梅シロップに近いものができるのではないか……と踏んでいるのですが、夏の終わりが近づくと、数本あった大ビンは気がつけばほとんど空っぽに。

今年こそ多めに作っておこう、と思うのですが、あればあるだけ飲んでしまっているのでした。

 

「みて!! しる(汁)でてきたで!!」

頻繁にビンをのぞき込み、梅シロップの様子を報告してくれる娘。

昨夏たっぷり、その美味しさを味わったからか、完成する日が待ち遠しくてたまらない様子です。

 

未だ幻のままの熟成梅シロップを実現すべく、今年はビンの一つを実家の押し入れにでも置いておこうか。

梅雨の湿気で汗ばむ体にスッキリとした梅ジュースが恋しく、夏を前に飲みはじめてしまいそうな予感から、早めに対策を取らねばと思うのでした。

【連載】キコの「かぞくの栞」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第1話)逆張り者
独自記事 【 2025/9/5 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (序章)最初の関門
独自記事 【 2025/8/31 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
持続可能な酪農の実現を支える明治の取り組みと、乳業の歴史
sponsored 【 2025/9/3 】 Food
乳製品やチョコレートなどの食品を取り扱うメーカーである明治(Meiji)。大ヒット商品でもある「明治おいしい牛乳」や「明治ブルガリアヨーグルト」などは冷蔵庫に常備され、マストアイテムになっている…なんて家庭も多いのでは?そんな私たちの日常生活に欠かせない明治グループは、2021 年から「健康にアイデアを」をグループスロ...
【単独取材】料理に懸け30年、永島健志シェフが語る美食哲学
独自記事 【 2025/10/9 】 Food
この取材は、かつて学校が苦手な不良少年だった、永島健志さんが、料理という表現と出会い「世界のベスト・レストラン50」で世界1位を5度獲得したスペインのレストラン「エル・ブリ」で修業し、帰国後に体験型レストラン「81」を立ち上げた貴重な経験を語って頂いたものである。
アラン・デュカス氏が登壇「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2025」 記者発表会レポート
INFORMATION 【 2025/9/15 】 Food
今年で開催15回目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、少し敷居が高いと感じてしまう人もいるフランス料理を、馴染みのない人にも楽しんでもらいたいという思いから誕生したグルメフェスティバルです。期間中(9月20日〜10月20日)は、参加しているレストランにて特別価格で、本格的なフレンチのコース料理を...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第2話)新天地
独自記事 【 2025/9/25 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...

次の記事

読者対話型 連載「あなたにとってのウェルビーイングとは何か」【プロローグ】 「読者」と「ethica編集部」の交流の場(オンラインオフ会)連動企画
【ethica編集長対談】 陶芸家 古賀崇洋さん(前編)

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます