(第12話)「娘がトマトを食べた日」【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
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(第12話)「娘がトマトを食べた日」【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

生のトマトだけは 何が何でも絶対に口に入れようとしなかった娘。

そんな娘が、ついにベランダ菜園で収穫したミニトマトを食べました。

 

1歳を過ぎたころは、ごはんとお汁、納豆にりんご以外、ほとんど口にしようとしなかった娘。

 

保育園に通いだしてからも、連絡帳の給食欄にはいつも「おかゆ・お汁完食、主菜・副菜残し」の伝達事項が。

この食べムラはどうしたものか……と思い悩み、自分で育てたものならちょっとは興味を持つかな? と密かに期待しながら、春の終わりころ、娘と一緒にミニトマトをプランターに植え、毎日お世話をしていたのでした。

 

鈴なりになった緑色の実が日に日に赤く色づき、ワクワクして迎えたはじめての収穫。

おそるおそるハサミで茎をチョキンと切り、真っ赤に色づいたミニトマトに「やったー!! とれたー!」と満面の笑みの娘。

ところが一転「たべるのはやめとくわ」とあっさり断られ、(まぁそんなうまくはいかないよな……)とちょっぴりがっかりしていた矢先のことだったので、本当にびっくり。

 

この日は3つ収穫できました。

「これママのな、こっちはパパの」と配り歩き、最後の一つを「これは?」と聞くと、「娘ちゃんの!」と言うなりパクッ!

「しゅうかくトマトおいしいわ〜」。これまでの拒絶は何だったのか!? と思うほど、ぺろりと食べたのでした。

いろいろ食べられるようにならないと……と、娘の食べムラに思い悩んでいたところに、担任の先生がかけてくれた言葉は「大丈夫、そのうち食べるようになるから!」。この一言で、すごく肩の荷が降りました。

 

味付けや調理法を工夫して、期待して、食べてくれなくても「今は食べたくないんやね」と思えるようになり、娘に「イヤ!」とされても、「あーおいしいなぁ」と親が美味しく食べる姿だけは見せることを意識して。

そんな日々を過ごすうちに、保育園の先生やお友だちのおかげで、気がつけば一切食べようとしなかった葉野菜やお肉も自然と食べるようになっていました。

数ある娘の苦手なものたちの中でも、最も手強かった生のトマト。

 

この日を境に、これまでまったく受け入れなかったトマトを少し食べてみようとする姿勢が出てきて、気に入れば完食、気がのらないときは「このトマトはちょっとやめとくわ」と澄ました顔でお皿の隅へ。

保育園では先生に「みててなー!」と宣言し、お友だちと「せーの!」で食べているのだとか。

 

ミニトマトの栽培をきっかけに、食べてみようと娘自身が一歩踏み出せたことが嬉しく、一緒に育ててみてよかった、と思ったある日の出来事でした。

【連載】キコの「かぞくの栞」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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