読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第13章:肥後のあれこれ(第3節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第13章:肥後のあれこれ(第3節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第13章 肥後のあれこれ

第3節 秋の香り、落ち葉焼き

秋には様々な匂いが漂ってきます。1年で1番香り高い季節とも言えるかもしれません。ふとしたときに金木犀の香りに出会い、心躍ってしまうのは、きっと多くの人の体験するところでしょう。

それに加えて、どうしても気分が高揚してしまう秋特有の香りが、落ち葉焼きの匂い。文字通り、落ち葉を焼くときに出る、あの何とも言えない香りです。香ばしく、どこか甘ったるい感じのするあの匂いを嗅ぐとき、私は一気にノスタルジックな気分に包まれます。

もとをたどればそれは、熊本の野山でたびたび落ち葉焼きに出会っていたからでした。秋ごろになり、落葉性の広葉樹が葉を落とし始めると、落ち葉焼きも始まります。落ち葉を掻くサッサッという軽い音とともに、辺りに漂う香り。上に向かって一直線に伸びる煙が遠くに見えると、ああ、あそこからはるばるやってきているのだなとわかります。

9月に熊本を訪れた際は、まだ落ち葉焼きには少し早く、あの香りを堪能することはできませんでしたが、道端に少しずつ溜まっていく落ち葉を見ながら、もう秋が来たのだなという気持ちになりました。思えば、東京で落ち葉焼きの香りを体験することはあまりありません。そう考えると、あの独特の香りは、この土地と強く結びついているということがわかります。土地と香りの関係。その場所の記憶と強力に結び付いた香りに出会うとき、私たちはどうしてあれほど感情が沸き立つのを感じるのでしょうか。

熊本には東京とは違う香りがあふれていました。もちろん都会に比べて空気が澄んでいるとか、マイナスイオンが多いとか、そういうことはあるかもしれませんが、一方で、落ち葉焼きのような些細な日常の香りもまた豊かなものがあります。それは「田舎だから」という単純な理由ではなくて、その香りがその土地の記憶と結びついているからです。仮に明日ふらっとどこかに出かけて見つけることができない、という事実が、その深い感情と結びついているのかもしれません。

読者のみなさんにとってのノスタルジックな香りにはどのようなものがあるでしょうか。とある場所と結びついた匂いを体験したとき、一体どんなことを思い浮かべるでしょうか。香り豊かな季節。そうしたことに思いを馳せてみると、日常が変わって見えるかもしれません。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

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抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

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ethica編集部

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