【集中連載】ネイチャーフォトグラファー柏倉陽介(第1話) ※4夜連続配信企画
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
28,701 view
【集中連載】ネイチャーフォトグラファー柏倉陽介(第1話) ※4夜連続配信企画

©Yosuke Kashiwakura

自然に関わる分野を中心に幅広い題材を撮影し、数多くの世界的なコンテストに入賞してきたネイチャーフォトグラファーの柏倉陽介氏。

国際モノクローム写真賞(「Monochrome Photography Awards」)のランドスケープ・フォトグラファー オブ ザ イヤーをはじめ、ナショナルジオグラフィック国際フォトコンテスト、ワイルドライフ・フォトグラファー オブ ザイヤーの入賞など、輝かしい実績を持つ彼に、これまでの軌跡や、15年越しで出版となった悲願の写真集発売についてのこと、これからの展望などのお話を詳しく伺います。

4夜連続配信企画となる(第1話)では、学生時代に冒険部に所属し大自然を巡り巡ったエピソードや就職話などを中心にお届けします。

北極冒険家・荻田泰永(冒険研究所書店 店主)との縁

——ご著書の『Back to the Wild 森を失ったオランウータン』と、『倒木 屋久島 ときの狭間に立ちて』を拝見しました。こちらは「冒険研究所書店」で購入できるものですね。

はい。その書店の店主の方が北極冒険家の方で、一緒に北極圏を歩いたこともあります。そのご縁でいろいろと本の紹介などもしてもらっています。

——北極冒険家の荻田泰永(おぎた やすなが)さんという方ですね。どのようなお知り合いだったのでしょうか。

職業柄、いろいろな冒険家の方をインタビューする機会があって、八幡暁(やはた さとる)さんと言う冒険家の方の紹介で、北極圏を、テントの貼り方も分からない若者を12人ほど連れて600キロ位歩くから、その同行カメラマンで来てくれとお願いされたのが(出会いの)きっかけです。その時(荻田さんと)意気投合して。荻田さんが冒険研究所書店を始めるので、私は得意のDIYで本棚を作ることになりました。

——とても深い付き合いのある方なのですね。

北極冒険家の荻田泰永氏と若者12人がバフィン島の氷上600kmを歩く ©Yosuke Kashiwakura

バフィン島で猛烈な風に行手を阻まれる若者たち ©Yosuke Kashiwakura

北極冒険家の荻田泰永氏が営む「冒険研究所書店」。店内の古びた小屋にも本がぎっしり詰まっている。 ©Yosuke Kashiwakura

学生時代

——柏倉さんご自身は、学生時代に冒険部に所属されていたんですよね。

そうですね。一般的には探検部と言われていて、僕の入っていたところでは、砂漠を縦走したり、急流を下ったり、自転車で走ったりと、人力で国内外の大自然を走破するのを目的としている部活でした。そこに大学1年生で入って、自然に触れ始めたのはそこからですね。山形生まれで、大学生以前は親が結構転勤をしていたので、東北をいろいろ転校していて、宮城へ行ったあと最終的には仙台に行き、そこから神奈川の大学に行きました。中学・高校はそんなに部活も熱心ではなくて、いろいろと不真面目な学生でした。

——寒い地域で育っているんですね。大学で関東に移り、一人暮らしを始めた。

そうですね。冒険部は偶然、説明会のやっていた教室にたまたま入ってしまって、世界中いろいろなところに行って先輩たちが活動している写真をいろいろ見させてもらい、その日のうちに居酒屋に連れて行かれ、入部を決めさせられたと言う形です。

——なるほど。自ら、冒険するぞ!と言う意欲があったわけではなく、どちらかというと受け身だったんでしょうか?

はい、完璧に受け身でした。もう断りきれずに入ってしまったと言う感じです。

——部活動としては、自然の写真を撮るというよりは様々な場所に行って体験することがメインの活動だったんでしょうか。

そうですね、砂漠を縦走したり、ジャングルを横断したりと。地図を読んで、本当に人がほとんどいない場所を、自力で行く。そういう冒険活動が主で、写真はインスタントカメラを持っている程度でしたね。

大学探検部時代に、タクラマカン砂漠を縦断する砂漠公路を進む。荷台には水や食料が大量に積まれている

——まさに冒険がメインの活動だったんですね。

例えば、群馬県みなかみ町に利根川流域というところがあって、そこでは雪解け水が出る。5月頃に大増水した川をラフティングボートで下るのですが、ひっくり返って、その水がものすごい冷たくて。1〜2分も使っていれば、体がしびれてくるような冷たさなので、急いでボートを立て直してよじ登って、仲間を引っ張り込んで、また下っていく……、みたいな。そういった感じの活動していました。

——なかなか過酷そうですが、女性も一緒に活動していたんでしょうか。

女性もいましたね。同期の15人くらいのうちの半分は女性でした。僕はいつも口喧嘩で負けていました。

——そうなんですね!それは意外でした。今につながる原体験がその冒険部にあたるのでしょうか。

そうですね。その冒険部で、新入生勧誘のポスターなどをIllustrator(イラストレーター)とかPhotoshop(フォトショップ)を使って、よく僕が作ってたんですけれど、それをやっているうちに、自然系の雑誌の編集者になりたいなと思い始めたんです。結局それがきっかけで「山と渓谷社」と言う自然系の出版社に契約社員で入ることができて、その途中でカメラにも出会いました。25〜26歳頃のことです。雑誌の編集って、企画から校了まで本当に寝ないで作業して赤字入れをして、(そんな環境で)体がボロボロになるまで頑張ってしまいました。そんな中で、カメラマンの人たちはどうやって仕事しているんだろう、と観察していたら、現場で写真を撮ってそれが終わったらはいっと渡すだけの、手離れがいいような仕事スタイルのイメージを受けたんです。それで、こっちの方が自分に向いているのかなあと思って一眼レフを買い、そこからがスタートでした。

次回予告

学生時代から冒険に身を投じるといったアクティブさで、自然と近い距離感を持っていた柏倉さん。北極に行ったことがある人は、なかなかいないのではないでしょうか。(第2話)ではカメラマンとして活動を初め、そのキャリアを築いてきた話を詳しく伺っていきます。

(第2話)を読む>>>

ネイチャーフォトグラファー柏倉陽介さん参加トークイベント開催決定!

 タイトル:「オランウータンへの贈り物」

日時:126日(土)14001800

場所:東京都渋谷区神宮前6-31-21東急プラザ原宿(ハラカド)3HOW’z

料金:入場料無料/1オーダー制 *申し込み不要

内容:講演、柏倉陽介による写展示、BOS Japanオリジナルグッズの販売

ゲスト:黒鳥英俊・柏倉陽介

主催:BOS Japan

URLhttps://www.instagram.com/p/DQV9f87kqhN/

柏倉陽介さんの写真集『Back to the Wild 森を失ったオランウータン』は以下から購入できます。

A&Fブックス(オンライン販売)

https://aandf.co.jp/books/detail/back_to_the_wild

冒険研究所書店(オンライン販売/店舗販売)

https://www.bokenbooks.com/items/84184866

文:神田聖ら(ethica編集部)/企画・構成:大谷賢太郎(ethica編集長)

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第1話)逆張り者
独自記事 【 2025/9/5 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (序章)最初の関門
独自記事 【 2025/8/31 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
持続可能な酪農の実現を支える明治の取り組みと、乳業の歴史
sponsored 【 2025/9/3 】 Food
乳製品やチョコレートなどの食品を取り扱うメーカーである明治(Meiji)。大ヒット商品でもある「明治おいしい牛乳」や「明治ブルガリアヨーグルト」などは冷蔵庫に常備され、マストアイテムになっている…なんて家庭も多いのでは?そんな私たちの日常生活に欠かせない明治グループは、2021 年から「健康にアイデアを」をグループスロ...
【単独取材】料理に懸け30年、永島健志シェフが語る美食哲学
独自記事 【 2025/10/9 】 Food
この取材は、かつて学校が苦手な不良少年だった、永島健志さんが、料理という表現と出会い「世界のベスト・レストラン50」で世界1位を5度獲得したスペインのレストラン「エル・ブリ」で修業し、帰国後に体験型レストラン「81」を立ち上げた貴重な経験を語って頂いたものである。
アラン・デュカス氏が登壇「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2025」 記者発表会レポート
INFORMATION 【 2025/9/15 】 Food
今年で開催15回目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、少し敷居が高いと感じてしまう人もいるフランス料理を、馴染みのない人にも楽しんでもらいたいという思いから誕生したグルメフェスティバルです。期間中(9月20日〜10月20日)は、参加しているレストランにて特別価格で、本格的なフレンチのコース料理を...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第2話)新天地
独自記事 【 2025/9/25 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...

次の記事

【連載】ミシュランガイドに「素晴らしい滞在体験」と評価された宿泊施設(第1話)
【集中連載】ネイチャーフォトグラファー柏倉陽介(第2話) ※4夜連続配信企画

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます