(第28話)足るを知ること【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
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(第28話)足るを知ること【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

「足るを知る」こと

この半年間ほど、引越しの話題でもちきりだったわが家。

 

きっかけは年明けから夫がリモートワークになり、一定の条件はあるものの住める場所の範囲が広がったことです。

また一部屋が夫の仕事部屋になったため、2LDKのおうちが狭く感じるようになってきたこと、海や山などもっと自然が身近にある場所に住みたいという思いが、夫婦の間で年々強くなってきたことも後押しとなり、関西から関東まで新たな拠点を探し求める日々でした。

 

理想は海の近くで、街からも遠すぎず利便性の良いところ。

娘にはのびのびと過ごして欲しいという思いもあるので、自然のなかで過ごす時間や子どもの主体性を大切にしている園が通える範囲にあること。

 

それらを希望の条件に、日々ネットで調べたり週末のたびあちこちを巡ったりしていたのですが……。

結論から言うと、引越しは見送ることにして、これまでのおうちに住むことに決めました。

長い間住むにつれ、おうちに対して不便や不満を感じることもちらほらありました。

 

十分な広さがない、階段で3階の上り下りが大変、収納が少ない、お風呂が寒い、扉の上枠が低い(夫がたまに頭をぶつける)、海へは遠い、たまにアリが侵入する(3階なのに……)、などとまぁあげだすと色々あります。

 

ですが、いざ引っ越すことが現実になり希望が叶うところを探していくなかで、今の環境がいかに自分たちの安心を生み出してくれているか、ということに気づいたのでした。

 

いくつかあげるとするならば、年々頻繁に起こる自然災害への不安に対して、ハザードマップ上・建物の構造上は一定の安全が確保されていること、静かな環境で公園も多く子育てのしやすい地域であること。

駅や病院、公共施設、保育園が徒歩圏内で、両方の実家が近くて何かあった時にはお互い頼れる状況にあること。昔からの友人や知り合いにすぐ会える距離にいること。

なにより、娘も大好きなお友達と楽しく保育園に通っていること。

 

また、すぐ近くに壮大な自然や海はないけれど、周辺は緑が多くて、ふとした時に窓から見える広い青空や鮮やかな葉をまとう木々にホッと癒やされたり、娘と歩く保育園までの道のりで四季の移ろいを感じたり、そんな何気ない日常と隣合わせの自然が心のゆとりを生み出してくれているように感じます。

 

世の中が不安定な状況で娘もまだ幼い今、変わることへのワクワク感よりも、家族が無理なく安心して過ごせることを大切にしたい、と今の暮らしを選ぶ結論に至りました。

巡り巡って元の場所に落ち着く、というなんとも無駄足を踏んだような結果ではあったのですが。

 

実際に動いて見て、感じたからこそ気づけたこと、夫婦で話し合いを重ね自分たちが何を大切にしたいのかをすり合わせることができたこの時間は、私達にとって納得感とともに前に進むために必要なプロセスだったのだろうなぁと感じています。

 

理想が満点だとすると、それが叶っていない今は「足りない」状態であるかのように感じ、そのマインドで物事を捉えると出てくるのは不満ばかり。

引っ越しを検討していた時の私達の心境はまさにそんな状態で。

 

きっと理想への思いに蓋をしたままだったら、いつまでたっても「足りない」気持ちがふつふつしていたかもしれません。

同じ環境でも、捉え方一つで気持ちのありようが大きく変わることを身をもって感じました。

 

「足るを知る」ことを新たなテーマに、暮らしの見直しと快適化に努めるこの頃です。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

【連載】かぞくの栞(しおり)

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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