読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第6章:教育の現場から編(第2節)
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第6章:教育の現場から編(第2節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第6章は「教育の現場から」と題して、全5節にわたりお送りします。東南アジアの学校教育現場を観察して得た学びをヒントに、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第6章 教育の現場から

第2節 環境教育とベトナム

ベトナムの街を歩いていてよく目につくのは、ゴミです。首都ホーチミン市はもちろんのこと、田舎の方はゴミの放置がもっとひどいです。ポイ捨てというにはあまりに大きい、家財道具なども多く、またそうしたゴミ山に火を放つこともあるので、プラスチックや化学物質が溶けたひどい匂いがあたりに充満していることもあります。

そうした大人を見て育った子供はもちろん同じように、食べたお菓子の袋をその辺の道端にポイと捨ててしまいます。日本で育った身としては、その光景はあまりに衝撃で、「ゴミはゴミ箱へ」「ポイ捨て禁止」という教育がいかに大事か痛感したことを覚えています。

街中で燃やされるゴミ

そうした問題意識から、私は一度、プログラムの一環でベトナムの田舎にある小学校で、ゴミの分別に関する授業をしたことがあります。そこは、首都ホーチミン市から車で5~6時間ほどのところにある、カンボジアと国境を接する街で、小学校は全校生徒200人弱の学校でした。ベトナムは若年人口が多いので、田舎の方に行っても子供たちがたくさんいます。

学校に踏み入れて、最初こそ子供たちも見ず知らずの団体に警戒していましたが、膝に乗せたり、一緒に絵を描いているうちに、みな打ち解けて、言語が通じないにもかかわらず、盛んに話かけてきてくれました。そんな中で始まった、ゴミ分別授業。まずは、ゴミをポイ捨てすると起こること。学生の何人かが「亀」や「イルカ」など、海の生物に扮して、浮遊するプラスチックを食べて死んでしまう劇を行いました。次に、具体的なゴミを提示して、燃えるか燃えないかのクイズ。ゲーム感覚で、化学物質を発生させるゴミを燃やさないようにする試みです。

教室にぎっしり入った子供たち

そのようにしてゴミの分別を学ぶ子供たちを観察しながら感じたのは、彼らが本当に楽しんでいたことです。「環境問題への取り組み」などと言うと、とてもシリアスで楽しむ余裕などないように感じますが、子供たちとの授業はそこに「楽しさ」を見出すことができていたのです。ただ単に劇が面白い、クイズが楽しいということももちろんですが、新しいことを学ぶこと、環境にとって良いことをすること、そうしたものに対する純粋な歓びのようなものがそこにはあったと思います。

もちろん社会運動として環境保護活動、ならびに環境保護を訴えていく取り組みは必要です。そこには真剣さやひっ迫感が伴うのは当然ですし、私自身も環境破壊はもはや修復不可能なところまで来ていると考えていますが、全人口規模でそれを行うとした場合、危機感の「脅し」だけでは限界があるとも思っています。若くして偉大な環境活動家、グレタトゥーンベリの発言力はもちろん必要ですが、同時に田舎の学校でクイズを出しながら楽しく教育を行う人も必要なのです。

小学校の校庭

ベトナムの田舎で私が学んだのは、シリアスさに押しつぶされてはならない環境教育の楽しさです。全世界的な取り組みにするために、恐怖・焦燥・不安の提示と同時に、楽しさ・歓び・満足感を得られるような教育の形があっても良いのではないでしょうか。

 

読者のみなさんはどのように考えますか?

仲良くなった男の子

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第1話)逆張り者
独自記事 【 2025/9/5 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (序章)最初の関門
独自記事 【 2025/8/31 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
持続可能な酪農の実現を支える明治の取り組みと、乳業の歴史
sponsored 【 2025/9/3 】 Food
乳製品やチョコレートなどの食品を取り扱うメーカーである明治(Meiji)。大ヒット商品でもある「明治おいしい牛乳」や「明治ブルガリアヨーグルト」などは冷蔵庫に常備され、マストアイテムになっている…なんて家庭も多いのでは?そんな私たちの日常生活に欠かせない明治グループは、2021 年から「健康にアイデアを」をグループスロ...
【単独取材】料理に懸け30年、永島健志シェフが語る美食哲学
独自記事 【 2025/10/9 】 Food
この取材は、かつて学校が苦手な不良少年だった、永島健志さんが、料理という表現と出会い「世界のベスト・レストラン50」で世界1位を5度獲得したスペインのレストラン「エル・ブリ」で修業し、帰国後に体験型レストラン「81」を立ち上げた貴重な経験を語って頂いたものである。
アラン・デュカス氏が登壇「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2025」 記者発表会レポート
INFORMATION 【 2025/9/15 】 Food
今年で開催15回目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、少し敷居が高いと感じてしまう人もいるフランス料理を、馴染みのない人にも楽しんでもらいたいという思いから誕生したグルメフェスティバルです。期間中(9月20日〜10月20日)は、参加しているレストランにて特別価格で、本格的なフレンチのコース料理を...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第2話)新天地
独自記事 【 2025/9/25 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...

次の記事

モデルのNANAMIさんも愛用!サステナブルなヘアケアブランド「HAIR KITCHEN」が体験できる「ヘアキッチンマルシェ」が登場
(第33話)娘の発熱に思うこと【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます