(第13話)「空っぽが気持ちいい」【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(第13話)「空っぽが気持ちいい」【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

冷蔵庫がすっからかん。

 

週に一度の食材の宅配が来る前の日、普通なら困った……となるこの状況が、今の私にとっては(よし、今週もやり切った!)と充実感を覚える瞬間となっています。

 

一方、これまでの私は食材で満たされた冷蔵庫が大好きでした。

野菜にお肉、卵、豆腐、果物。

冷蔵庫に一通りの食材が揃っていると、何でも作れるぞとワクワクするし、献立に困らない安心も感じます。

 

でも急な外食が続いたり、買い置きが多すぎたりで使い切れないことも。

ちょっと足りないものを買いに行くだけのつもりが、お買い得品や美味しそうな旬の素材につられて(ついでにこれも買っとくか)と、気がつけば冷蔵庫がいっぱいに。

 

その結果、しなびた人参の切れ端や黄ばんだ葉物など、賞味期限が切れて消費が追いつかなかった食材が冷蔵庫の奥の方に残っていくはめに。

何かを取り出そうと扉を開けるたびに、無駄にしてしまっている罪悪感に襲われ「はぁ……なんとかしなきゃ」と反省する日々でした。

買い過ぎなければいいのはわかっているけれど、何も無い状態がなんだか不安。

そのマインドから抜け出せたのは、なんてことのない「注文のし忘れ」がきっかけでした。

 

予定していた食材が何も届かない!

しまった、すぐ買いに行かなきゃ。

いつもならそう思うところを、ふと「今残っているものだけで、どこまでやれるか試してみよう」と思い立ち、冷凍庫に眠っていた食材からストックしている缶詰や乾物まで総動員して、翌週の宅配まで乗り切ったのでした。

 

翌週、宅配が届く日には、冷蔵庫はすっからかん。

入っているものが少ないと掃除もはかどり、ピカピカの冷蔵庫に届いた食材たちをゆったりと収納でき、こころなしか扱う手つきも丁寧に。

 

思いつきの試みに振り回された家族には申し訳なかったのですが、その日は久しぶりに素材が充実した食卓で、当たり前にごはんが食べられる有り難みもひとしおだったのでした。

十分に無くても、やっていける。

そのことを実感できた経験は私にとってささやかな自信となり、買い物に出かけた時も、つい、あったら便利そうだなと伸ばしかけた手を引っ込めて、本当に必要かどうか、一呼吸おけるようになりました。

 

少しずつ冷蔵庫が整うようになって改めて感じるのは、「十分に無いこと」に不安を感じていたマインドは、他のことにも共通しているなぁということ。

 

自分が心地よく管理できる量ってどれくらいだろう?

いい塩梅なモノとのお付き合い、これからもしばらく試行錯誤が続きそうです。

【連載】キコの「かぞくの栞」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第1話)逆張り者
独自記事 【 2025/9/5 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (序章)最初の関門
独自記事 【 2025/8/31 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
持続可能な酪農の実現を支える明治の取り組みと、乳業の歴史
sponsored 【 2025/9/3 】 Food
乳製品やチョコレートなどの食品を取り扱うメーカーである明治(Meiji)。大ヒット商品でもある「明治おいしい牛乳」や「明治ブルガリアヨーグルト」などは冷蔵庫に常備され、マストアイテムになっている…なんて家庭も多いのでは?そんな私たちの日常生活に欠かせない明治グループは、2021 年から「健康にアイデアを」をグループスロ...
【単独取材】料理に懸け30年、永島健志シェフが語る美食哲学
独自記事 【 2025/10/9 】 Food
この取材は、かつて学校が苦手な不良少年だった、永島健志さんが、料理という表現と出会い「世界のベスト・レストラン50」で世界1位を5度獲得したスペインのレストラン「エル・ブリ」で修業し、帰国後に体験型レストラン「81」を立ち上げた貴重な経験を語って頂いたものである。
アラン・デュカス氏が登壇「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2025」 記者発表会レポート
INFORMATION 【 2025/9/15 】 Food
今年で開催15回目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、少し敷居が高いと感じてしまう人もいるフランス料理を、馴染みのない人にも楽しんでもらいたいという思いから誕生したグルメフェスティバルです。期間中(9月20日〜10月20日)は、参加しているレストランにて特別価格で、本格的なフレンチのコース料理を...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第2話)新天地
独自記事 【 2025/9/25 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...

次の記事

読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第1章:ネパールと人々のつながり編(第3節) 「読者」と「ethica編集部」の交流の場(オンラインオフ会)連動企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」
ニューヨーク近代美術館(MoMA)のデザインストアでも人気のアイテム「プルタブ・シリーズ」について『Love&sense』代表の高津玉枝さんをインタビュー

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます