(第46話)小さな畑をはじめました ー開墾編ー【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
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(第46話)小さな畑をはじめました ー開墾編ー【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

家族にとって初めての畑

縁あって、知り合いが借りている畑の土地の一部を使わせてもらえることになりました。

広さでいうと8畳もないくらいの小さなスペースなのですが、家族にとって初めての畑としてはちょうどいいサイズ感。

 

家から車で10分ほど走った山間のその場所は、昔ながらの畑と田んぼの風景が広がっています。家からそう遠くないところにこんな場所があったのか、と驚いたのは最近のこと。

 

もう夏が始まるという時期だったので、夏野菜に間に合うよう急いで準備をはじめました。

まずは、耕すところから。

しばらく手が入っていなかったので、地面からたくさんの雑草や笹がにょきにょきと顔を出しています。

 

夫と私は、シャベルで土をひっくり返す担当、その横から根っこや草を取りのぞく担当に分かれて、交代しながら作業を進めました。

 

元々田んぼだったため、土は黒々としてみっちりと詰まった粘土質。シャベルでのひとすくいがずっしりと腕と腰にきます。

 

これは絶対に、明日筋肉痛やな……と夫と苦笑いしながら、それでも確実に耕した土地が広がっていき、成果が目に見えて分かることが嬉しくて、飽きっぽい私たちにしては珍しく、黙々と取り組んだのでした。

娘はというと、最初こそ嬉々として「すこっぷかして! みててや、ちからあるで!」と一緒に土を掘り返していたものの、十分もしないうちに6月のムシムシした暑さと蚊の攻撃に心が折れたのか、「もうおしまいしよー」と呟き続けておりました。

 

それでも、家にいる時と違って、自然の中がいいのは、子ども心をくすぐるものにあふれていること。

 

畑の上をひらひら飛ぶ蝶々に、水路からぴょんと飛び上がってくるカエルに、裏山からチョロチョロ流れてくる水に、あぜ道に咲く小さなお花たち。

お花摘みをしていたと思ったら、「みて! つかまえたで!」と小さな青ガエルをチョンと手に乗せている娘の姿に、うんうん、その調子で畑とともにたくましく育ってね〜と思うのでした。

願ってもなかった、小さな畑のある暮らし。

 

この不安定な世の中で、自分たちの手で日々食べるものを作ることができたら、そんなに心強いことはないぞと思っていたここ数年間。

 

描いていた理想に一歩近づいた喜びと、この小さなスペースを耕すだけでもふうふう言っている現実に、理想への道のりの果てしなさを実感しつつ……。

この小さな畑とこれからどんなふうにお付き合いしていけるか、楽しみで仕方のないこのごろです。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

【連載】かぞくの栞(しおり)

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

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私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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季子(キコ)

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