映画「ファッション・リイマジン」 ファッション業界を変革したデザイナーの出会いと挑戦に満ちた物語
INFORMATION
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
映画「ファッション・リイマジン」 ファッション業界を変革したデザイナーの出会いと挑戦に満ちた物語

世界第2位の環境汚染産業と言われるファッション業界。近年では、多くのブランドがサステナブルな衣服の製造に舵を切っていますが、実はその動きが、たった一人のイギリス人デザイナーから始まったことをご存知ですか?彼女の名前は、エイミー・パウニー。2017 年、英国最優秀新人デザイナーに選ばれた若き才能が、10万ポンドの賞金を手に、サステナブルなブランドを立ち上げる旅に出るドキュメンタリー映画『ファッション・リイマジン』が全国の映画館で公開中。彼女の出会いとサステナビリティへの挑戦を追った『ファッション・リイマジン』の魅力をご紹介します!(記者:エシカちゃん)

全国上映中!映画『ファッション・リイマジン』のあらすじ

2019年、とあるブランドが世界中から注目を集める。「No Frills(飾りは要らない)」と名づけられたこのブランド・ラインは、なんとサプライチェーンの全ステップを徹底管理した唯一のサステナブルブランド。瞬く間に注目を浴びたコレクションを制作し、ファッション業界全体に変革をもたらしたのは、ブランドのクリエイティブ・ディレクター、エイミー・パウニーだった。

イギリスのランカシャーにあるオフグリッドの(電気やガスなどのインフラがつながっていない)農場で育った経験を持つ彼女は、2017年にVOGUEの英国最優秀新人デザイナーに選ばれたことをきっかけに、賞金10万ポンドとともに、自身が手掛けるブランドをサステナブルにするための旅に出る。

(左)エイミー・パウニー (右)アナ・ウィンター

服を作るのには、実にさまざまな工程を経る。異なる素材、異なる製造方法が採用されれば、当然いくつもの国を経由することになる。エイミーと商品開発のクロエは、理想の素材に出会うことがいかに難しいかを知ることになる。

それでもブランドの想いに共感してくれる企業に巡り合うことができたエイミーとクロエ。コレクションの発表が3か月後に控えるなか、準備は着々と進められていく。

そこに、製造を担当する会社から一本の電話が。なんと「製造が間に合わないのでここで降りる」と一方的に宣言されてしまう。なんとか説得を試みるクロエ。果たして無事のコレクションを発表することはできるのか?

ハラハラドキドキのサスペンスな展開から目が離せない!

ファッション業界の真実をわかりやすく伝える映像の数々

1枚のコットンシャツを製造するのに、どれほどの水が必要で、どれほどの二酸化炭素が排出されるのか。普段、何気なく生活するなかで決して意識しない、ファッションのトゥルー・コスト(※)に改めて目を向けさせてくれるのが、この映画の魅力です。

例えば、現代の人びとは1980 年代の人びとの3倍以上の服を購入しています。そしてその多くが購入された同じ年に捨てられ、埋め立て地に。

ファッションにまつわる残酷な現状と危機感を、ビビットな映像表現で伝えてくれます。

(※)生産者の負担、環境保護、素材自体の値段

世界中を飛び回り撮影したロードムービー

監督を務めたのは、本作品が⻑編映画デビューとなったベッキー・ハトナー。VOGUE の新⼈賞をきっかけに、デザイナーのエイミーに興味を持ったハトナーは、サステナブルなブランドを作るというエイミーの情熱に突き動かされ、彼女の挑戦に密着したドキュメンタリーを作ることを決意したそう。

まだ見ぬサステナブルな素材を求めて、ウルグアイ、ペルー、トルコ、オーストリアと、世界中を駆け巡るエイミーと商品開発のクロエ、そして監督のハトナー。旅先でさまざまな人びとと出会い、そして別れを経験する彼女たち。

思い通りにはいかないハラハラドキドキの展開ながら、エイミーの努⼒と根性が観る人に不思議と前を向く勇気を与えてくれます。

ファッション業界を変革したブランドの革新性

大型ブランドは通常、年12シーズン、年4回のコレクションを発表します。H&MやZaraといった大衆ブランドに至っては、週単位で新商品が登場することすら。もちろん、サイクルの早さはトレンドの移り変わりに影響を及ぼし、ひいては服の大量生産・廃棄をもたらしています。

そんなか、エイミーは2017年、どのブランドにも先駆けて、自身が手掛けるアパレルブランド「Mother of Pearl」のコレクションを年2回とすることを発表。さらに、彼女は、原材料がオーガニックであるだけでなく、トレーサビリティ(追跡可能性)に優れ、できるだけ少ない国を経由するような製造を構想します。

革新的なのは、エイミーが服作りの順序まで変えてしまったこと。通常は、デザイナーがデザインを考え、それに合う素材を調達するのが一般的ですが、エイミーは原材料の調達からはじめ、その素材で可能なデザインをおこしていくのです。

クリエーションの幅が狭まるという困難にありながらも、彼女の手掛けた「No Frills」のコレクションは、世界中から賞賛を受けます。さらに、エイミーの取り組みはブランドとしての枠を超え、レンタルやアップサイクルなどを行うキャンペーン、イギリスの国営放送BBC、イギリス王室チャールズ皇太子とのコラボまで拡大。世界中を巻き込んだエイミーのエネルギーを垣間見ることができます。

『ファッション・リイマジン』が、衣服の素材は一体どこから来るのかを意識させる内容になっているだけあって、エシカルな商品の選択における羅針盤としても心に響くものがありますね。

劇場情報はこちらから

https://eigakan.org/theaterpage/schedule.php?t=fashionreimagened

 

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第1話)逆張り者
独自記事 【 2025/9/5 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (序章)最初の関門
独自記事 【 2025/8/31 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
持続可能な酪農の実現を支える明治の取り組みと、乳業の歴史
sponsored 【 2025/9/3 】 Food
乳製品やチョコレートなどの食品を取り扱うメーカーである明治(Meiji)。大ヒット商品でもある「明治おいしい牛乳」や「明治ブルガリアヨーグルト」などは冷蔵庫に常備され、マストアイテムになっている…なんて家庭も多いのでは?そんな私たちの日常生活に欠かせない明治グループは、2021 年から「健康にアイデアを」をグループスロ...
【単独取材】料理に懸け30年、永島健志シェフが語る美食哲学
独自記事 【 2025/10/9 】 Food
この取材は、かつて学校が苦手な不良少年だった、永島健志さんが、料理という表現と出会い「世界のベスト・レストラン50」で世界1位を5度獲得したスペインのレストラン「エル・ブリ」で修業し、帰国後に体験型レストラン「81」を立ち上げた貴重な経験を語って頂いたものである。
アラン・デュカス氏が登壇「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2025」 記者発表会レポート
INFORMATION 【 2025/9/15 】 Food
今年で開催15回目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、少し敷居が高いと感じてしまう人もいるフランス料理を、馴染みのない人にも楽しんでもらいたいという思いから誕生したグルメフェスティバルです。期間中(9月20日〜10月20日)は、参加しているレストランにて特別価格で、本格的なフレンチのコース料理を...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第2話)新天地
独自記事 【 2025/9/25 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...

次の記事

宮崎市一ツ葉エリアの環境保全を楽しく考える「ひとつ葉 秋めぐり」エシカル体験イベントを開催 フェニックス・シーガイア・リゾート
【連載】恋するフィンランド! (第3話)映画『アアルト』ヴィルピ・スータリ監督 来日トークイベント[前編]

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます