【連載】恋するフィンランド! (第3話)映画『アアルト』ヴィルピ・スータリ監督 来日トークイベント[前編]
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【連載】恋するフィンランド! (第3話)映画『アアルト』ヴィルピ・スータリ監督 来日トークイベント[前編]

「森と湖の国」そして「世界一幸福な国」フィンランド。近年の世界幸福度ランキングでは5年連続で一位に輝く、北欧・フィンランドは、サステナブルな国として高く評価されています。デザイン大国としても人気が高く、そのシンプルで機能的、かつ有機的で温かみのあるデザインの家具や日用品は、昔から現在に至るまで多くの人々に愛されています。

ethicaでは、そんなフィンランドからウェルビーイングな北欧ライフスタイルを学ぼうという「恋するフィンランド!」企画が進行中。

今回は(第2話)でご紹介したドキュメンタリー映画『アアルト』(20231013日~公開)のヴィルピ・スータリ監督が来日して開催されたトークイベントを取材。撮影の裏話や、映画の制作秘話など貴重なお話を伺ってきました。

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(第5話)映画『アアルト』ヴィルピ・スータリ監督 来日トークイベント[後編]

(第6話)映画『アアルト』ヴィルピ・スータリ監督 来日トークイベント[最終編]

 

フィンツアーの主導で開催された監督来日トークイベント

今回のイベントは北欧旅行に特化した旅行会社「北欧旅行フィンツアー」の主催の元、直営の北欧コンセプトショップ「Hyvää Matkaa!」の一角で開催されました。イベントの進行は株式会社フィンコーポレーション代表取締役社長の美甘小竹(みかも しの)さんが行います。

フィンツアー代表の美甘(みかも)さん

イベントは美甘さんとスータリ監督の対談形式で進められ、フィンツアーによる「映画『アアルト』を巡る旅」のツアーのご紹介や、監督のサイン入りポスターが当選するくじ引きイベントも行われました。

ヴィルピ・スータリ監督のトークイベント

監督: 『アアルト』を監督しましたヴィルピスータリと申します。私はフィンランドで30年ほどドキュメンタリーを作っておりまして、ドキュメンタリーの製作者として経験が豊富だと自負しております。

この映画は3年前に完成しましたが、日本での上演がズレて、今の時期に(公開と)なりました。今晩ここに来られたこと、日本各地で上映されると言うことを非常に嬉しく思っております。

映画『アアルト』のヴィルピ・スータリ監督

 日本の観客の皆様がこの映画を見て、より『アアルト』についての理解を深めていただき、インスピレーションを受けていただければ幸いです。

映画の中では、フィンランドを主に、たくさんのアアルトの建物やデザインが出てきます。そして建築についての話ではありますが、アルヴァ・アアルトとはどう言う人だったのか、そしてその最初の奥さんアイノは、二番目の奥さんのエリッサはどう言う人だったのか、と言う人物像についても描かれております。つまりこの映画は建築、そして非常に親密なラブストーリーの映画でもあるのです。

――ありがとうございます。すごく楽しみで今日のトークイベントに際して私も事前に勉強させていただいて、アアルトがただの建築家というだけではなく、彼の妻のアイノがいたからあのような建築ができたのだなとか、人間的なドラマがすごく面白くて、見ていてとても惹き込まれました。そんな思いも込めて、今日は(アアルトを巡る旅の)ツアーの発表などもさせていただきたいと思います。

映画を構想してから完成まで、どれくらいの時間がかかるものなのでしょうか。

監督: アアルトという映画に関しては2年間フルタイムでリサーチをして、全体で4年かかりました。アアルトはフィンランドではとても有名な存在ですので、皆がアアルトの建築やデザインに関して何かしらの意見を持っています。なので、リサーチを丁寧に行う必要がありました。私の今のキャリアだからこそできたとも思っています。それほどリサーチにも時間がかかるプロセスではありました。そして私自身、リサーチを進めながら、得るものやインスピレーションを受けることが非常に多かったです。(調べていくうちに)アイノと言う人物を発見し、それがとても興味深いものでした。

この映画の中では、アルヴァとアイノの間で交わされたラブレターが出てきますが、とても希少で価値のあるものだと思っています。そのラブレターを見ていると、クリエイティブなカップルがどのように一緒に仕事をしていたのか、互いにどのような想いを相手に抱いていたのか、その内面に入り込むことができます。知名度がある人たちなのですが、その裏にある人間性が垣間見える内容だったと思います。

――映画を見ていると、アイノの存在がとても大きく彼女がいなかったら全然違ったものになっていたのだろうと感じました。人間的なドラマが大変感じられて、アアルトを単に建築という観点だけではなく、人間ドラマの映画としても観ることができ、その辺りがすごく面白かったです。

次に、監督が訪れた色々な場所を皆さんに紹介していきたいと思います。

監督: この2つの写真は私の故郷であるロバニエミと言う町にある図書館で、ここがあったからこそこの映画を撮ろうと思った大きな理由の1つです。私の故郷は北極圏に入るくらいの、ラップランドの首都(※)のようなところのとても小さな町です。

過去、第二次世界大戦でフィンランドはソ連と戦っていたわけですが、最初はドイツと同盟を組んでいました。そこを離脱するときに、ドイツ軍が町を焼き切ってしまったのです。焼け野原になったそこに、アアルトと他の建築家たちが救世主としてやってきて新しい都市計画のもと色々な建物を建てたといった歴史がありました。

ですので、私の生まれ育った小さな町にはアアルトの建築がいくつもあって、その1つがこの図書館です。ここは私が午後のほとんどを過ごしていた場所で、冬になるとこのエリアはマイナス30度ととても寒いのですが、この図書館に入ると歓迎してくれるような暖かさがあり、とても美しい家具と美しい照明があって、私のお気に入りの場所でした。この時の思い出が私の中にずっとあって、それもあってこの映画を撮りたいと思っていました。

――素敵なお話です。日本ではロバニエミと言うとサンタクロースの故郷で有名ですね。

監督: サンタクロースは個人的によく知っています!

次の写真はサンタクロースの風景ですが、こういう風景が私の故郷です。

――サンタクロースのオフィスがロバニエミにあり、何度か行ったことがあるので、お話を聞いて懐かしく嬉しくなりました。素敵な図書館で勉強に集中できる、環境ってとっても大事なんだな、と思います。

(中編に続く)

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私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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