(第11話)「旅行の前に欠かせないこと」【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
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(第11話)「旅行の前に欠かせないこと」【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

旅行が好きです。

日常から一歩離れることで、繰り返しの毎日のなかでは得難い体験ができ、新たな人、食べ物、場所との出会いがあるから。ここ最近は遠出をしづらい雰囲気ではありますが、娘と夫、家族で年に数回、近場へ旅行やキャンプに行くのを楽しんでいます。

 

旅行の前に欠かせないこと、それはおうちを片付けておくこと。

 

お土産も加わって、さらにずっしりと重たくなった荷物を持って階段を登り、一息ついて鍵を開ける。扉を開いた先でスッキリと片付いた部屋が迎えてくれると、旅もいいけれどやっぱりおうちは落ち着くなぁとホッとします。

その日のうちに片付けを済ませて、また明日から頑張ろうと、心地よい疲労感とともに眠りにつくまでが旅行の醍醐味。

 

せっかく良い時間を過ごしたのに、帰ってきて目の前に広がっているのが散らかった部屋だとしたら。どっと疲れが押し寄せ、翌日からの日常を、残念な気持ちで迎えることになりかねません。

 

また、万が一、旅行先で何かあって帰れなくなったとしたら。

 

大学生になり、一人旅をするようになって初めて実感した、何でもできる自由さと、いつ何が起こるかわからない怖さ。北海道の山に一人で登り、次第に霧が立ち込め、目の前以外何も見渡せなくなったときに感じた孤独感は今も忘れられません。

 

もしものとき、家族や知人が部屋に入ることになるかもしれない。

事故に巻き込まれた日には、「こちらが〇〇さんの自宅です」なんてニュースで紹介されるかもしれない。

 

普段なら笑い話になるような、そんなシチュエーションをあれやこれやと想像し(現実には起こってほしくないけれど)、”立つ鳥跡を濁さず”の言葉の通り、できるだけ迷惑をかけないように、恥ずかしくないようにと、旅行の前には、必ず片付けといつもより少し念入りに掃除をするようになったのでした。

「いつ、なにが起こるかわからない」。

当たり前だけれど日常ではあまり意識することのないその感覚は、家族と過ごす一日一日、一瞬一瞬すら、かけがえの無いものだと教えてくれます。

 

今過ごしている日々は、「あって当然」のものではなくて、家族揃って食卓を囲んで川の字になって寝て、他愛もない言葉を交わして笑い合えているのは、偶然が重なり合って続いている奇跡のようなものかもしれない。

 

だからこそ、何気ない日々を大切に過ごしたい。そう思うのですが、現実は慌ただしくその気持ちはどこへやら……。些細なことで一喜一憂し、しょうもないことに腹を立て、すべきことで精一杯になりながら駆け抜けていく日々の連続です。

 

旅行はそんな毎日から、「いま」を客観的に見つめ直す機会を与えてくれます。

 

「もう行くでー」

「ごめん、あとここだけ!」

「はよ出よやー」。

 

刻一刻と出発時間が迫り「帰ってきてから片付けたらええやん」と、たまに夫に小言を挟まれ(まぁその通りなんだけど)と思いながらも、帰ってきてドアを開けたときのことを想像すると見過ごさずにはおられず。

 

私にとって旅行前の片付けは、非日常と日常の切り替えを心地よいものにしてくれるもの、そして無事帰って来れたなら、きれいに整った部屋を前に、また心新たに一日一日を大切に過ごしていこうと思える、どうしても欠かせないものなのです。

【連載】キコの「かぞくの栞」を読む>>>

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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