読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第14章:霜月で立ち止まる(第1節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第14章:霜月で立ち止まる(第1節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第14章 霜月で立ち止まる

第1節 音の特異な性質について

11月は霜月です。霜が降るにはまだ早いと言いたくなりますが、旧暦における呼び名なので、実際には12月辺りの天気のことを指しているようです。これから一か月後には、もう霜が降る季節なのかと思うと、今の温かい日差しに感謝したくなります。

先日紅葉狩りに行きました。と言っても、まだほとんどの葉は緑色でしたから、ハイキングの方が目的だったと言っても良いかもしれません。

この時期の山は色々な音に溢れています。鳥の鳴き声、小川のせせらぎ、葉が踏みしめられ、擦れる音。ときどき足を止めて、そうした音に耳を澄ませると、静かな場所だと思っていた山の中が、様々な音で満たされていることを思い出すことができます。

奥多摩の景色

「サウンドウォーク」という言葉を知っているでしょうか。音楽学習の領域では、より細かい方法論が確立されていますが、ここではひとまず「音を意識しながら歩く活動」ということにしておきます。これは、歩くという行為を通して、どんな音をどのように聴くのかについて、音の受容者が意識的になることを言います。それによって、普段耳に入ってくるだけの音に対して、能動的な感覚を得ることができると同時に、その場で生起し、消えていくという音特有の「いま、ここ」性を感じることができます。社会学者のゲオルグ・ジンメルが、聴覚=音は瞬間的で確定的なものであると言ったように、音というのは、意識の如何にかかわらず、今この瞬間にのみ確かに存在するものなのです。

水の落ちる音が心地よく響く

私が、あの時間に、あの山の、あの場所に立ち、聴いた音は、その場にしか存在していませんでした。同様に、今この瞬間にしか存在しない音が、確かにここに在ります。次の瞬間にはもう聞こえない音。録音して、もう一度聞くことはできても、それは全く同じ音ではありません。

私のスマホには、あの場で撮った動画が収めております。私はいつでもそれを聞くことができますが、一方で、あの音を聞くことはできません。ただ思い出すほか、もう一度味わうことができない、というのが、音の持つ魅力です。

保存し、何度も追体験できる時代、それでもなお、その場でしか経験することのできないことがまだたくさんあります。音もその一つでしょう。葉が益々色付いてくる季節です。紅葉狩りに出かけた際には、ぜひ「サウンドウォーク」を実践すると同時に、音の「いま、ここ」性を味わってみてはいかがでしょうか。

素晴らしい秋晴れの奥多摩

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

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抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

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ethica編集部

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