資生堂が藻類由来のスキンケア化粧品を初公開
INFORMATION
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
資生堂が藻類由来のスキンケア化粧品を初公開

2025年大阪・関西万博の日本館に、生命美の循環をテーマにした藻類由来のプロトタイプのスキンケア化粧品が初公開されました。人にも地球にも優しい未来の化粧品をご紹介します。(記者:エシカちゃん)

大地や自然をも美しくする化粧品

「至哉坤元 万物資生(いたれるかなこんげん ばんぶつとりてしょうず)」。

中国の古典である四書五経のひとつ『易経』の一節を、社名の由来としている企業があります。

その企業とは、日本を代表する化粧品メーカーの1つ「資生堂」です。

「至哉坤元 万物資生」が意味するのは、「大地の徳はなんとすばらしいものであろうか、全てのものは、ここから生まれる」ということ。あらゆる恵を与えてくれる自然環境への敬意の念を示しています。

資生堂の、「人々に美を届けるだけでなく、大地や自然をも美しくする化粧品でありたい」と願う心が結実した未来の化粧品が、大阪・関西万博にて、初公開されました。

生命美の循環をテーマにしたスキンケア化粧品

資生堂が、大阪・関西万博の日本館にて初公開したのは、生命美の循環をテーマにした藻類由来のプロトタイプのスキンケア化粧品です。

化石資源に変わる未来へのアプローチとして、資生堂は、藻類に着目した研究開発を続けてきました。

化粧品の多くは、滑らかな使い心地や品質の安定性といった、化粧品にとって欠かせない要素を達成する為に、化学資源である石油由来の成分を使用しています。

もちろん、サステナブルな資源への切り替えを目指して、これまで多くの企業や研究者が、脱石油、循環可能な植物由来の原料を使用しようと模索をしてきました。しかしながら、植物由来の成分では化粧品のテクスチャや防腐の面で難が多く、険しい道のりが続います。

そんな難題を抱える化粧品開発に、資生堂は、「美の玉」と名付けられた2つのスキンケア化粧品を提示しました。

美の玉 まがたま

自然への敬意、日本古来の美意識をインスピレーションに開発された、玉の形をした3色のクリーム。手のひらでやさしくつぶすと、クリームのようなエッセンスが溢れ出します。丸い玉の形は、昆布などの褐藻類に含まれるゼリー状の多糖類を、膜形成技術(物体の表面に薄い膜を形成すること)の応用により成型しました。

美の玉 しずく

藻類の美しさを海色の小さなビーズで表現した美容液です。資生堂が開発したリピッドシェルという技術によって、藻類由来のオイルをビーズ状の殻(固型油分シェル)で包みました。「美の玉 しずく」は、生命力に満ちた肌に導く様をイメージして処方開発されたそうです。

資生堂が藻類に着目した理由

植物などの再生可能な有機資源は、木材や生ゴミなど、藻類だけにとどまりません。そんな数ある有機資源の中で、資生堂が特に藻類へ関心を寄せたのは、藻類に下記のようなポテンシャルを認めたが故でした。

藻類が持つポテンシャル

①二酸化炭素を吸収し、タンパク質・脂質・炭水化物などの様々な有機物を生成する。

②砂漠や荒地のような農業利用が難しい土地でも生産可能。かつ陸上植物と比較して培養スピードが速い。

③少量の水で生産できる。

また、藻類を基点にしたサステナブルな新産業を構築するプロジェクト「MATSURI」を主導する「ちとせグループ」に出会ったことも、資生堂の藻類研究を推し進める、大きなきっかけとなりました。2023年には、ちとせグループと研究開発を中心とした戦略協業契約を締結し、藻類を利用した化粧品や容器、更には食品産業に活用できる原料開発までをも視野に入れた、循環型のモノづくりを進めています。

藻類で目指す、未来の地球

藻類は、陸上植物以外で光合成を行う生物の総称です。わかめや昆布の他、小さなものではユーグレナ(ミドリムシ)やミカヅキモなどが藻類の一種にあげられます。

ヘナヘナとして、頼りなげにも感じてしまう藻類ですが、二酸化炭素削減に貢献しながら、有効性が高い多様な有機物を生成し、おまけに厳しい環境下でも育つという、すごい力を秘めています。その力を存分に引き出して、サステナブルな社会のうねりを作っていく為の歩みが、既に日本でも始まっています。地球への課題を前にして、藻類と共に、どんな未来を作りましょうか?

サステナブルへの探究は、先例がない為に、(現在はまだ)時間もお金もかかります。目先の利益に惑わされずに、地球の未来を見詰めて歩みを進める忍耐力が、今、求められているように思います。

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第1話)逆張り者
独自記事 【 2025/9/5 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (序章)最初の関門
独自記事 【 2025/8/31 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
持続可能な酪農の実現を支える明治の取り組みと、乳業の歴史
sponsored 【 2025/9/3 】 Food
乳製品やチョコレートなどの食品を取り扱うメーカーである明治(Meiji)。大ヒット商品でもある「明治おいしい牛乳」や「明治ブルガリアヨーグルト」などは冷蔵庫に常備され、マストアイテムになっている…なんて家庭も多いのでは?そんな私たちの日常生活に欠かせない明治グループは、2021 年から「健康にアイデアを」をグループスロ...
【単独取材】料理に懸け30年、永島健志シェフが語る美食哲学
独自記事 【 2025/10/9 】 Food
この取材は、かつて学校が苦手な不良少年だった、永島健志さんが、料理という表現と出会い「世界のベスト・レストラン50」で世界1位を5度獲得したスペインのレストラン「エル・ブリ」で修業し、帰国後に体験型レストラン「81」を立ち上げた貴重な経験を語って頂いたものである。
アラン・デュカス氏が登壇「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2025」 記者発表会レポート
INFORMATION 【 2025/9/15 】 Food
今年で開催15回目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、少し敷居が高いと感じてしまう人もいるフランス料理を、馴染みのない人にも楽しんでもらいたいという思いから誕生したグルメフェスティバルです。期間中(9月20日〜10月20日)は、参加しているレストランにて特別価格で、本格的なフレンチのコース料理を...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第2話)新天地
独自記事 【 2025/9/25 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...

次の記事

コンセプトは日本の美意識の凝縮。八芳園が文化資産を継承すべく100周年へ向け、2025年10月に大々的にリニューアル! 〜組子職人による制作過程を初公開〜
【ethica Traveler】エシカ編集部が誘う大阪・関西万博の旅 海洋保全編(上巻)モナコ公国

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます