[エシカ編集部 体験企画]ザ・キャピトルホテル 東急「食のキャピトル、サステナブル ~未来へつなぐ一皿を~」
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[エシカ編集部 体験企画]ザ・キャピトルホテル 東急「食のキャピトル、サステナブル ~未来へつなぐ一皿を~」

ザ・キャピトルホテル 東急では過去5回に渡り、食に関するサステナブルな活動の発信とその促進を目的とした美食イベント「サステナブル テーブル」を実施してきました。その6回目となる今年、2025年はキャピトルホテルにとって開業15周年を迎えるアニバーサリーイヤーでもあります。キャピトルホテルが歩んできたサステナビリティへの取り組みの軌跡を振り返りつつ、“15年目の挑戦 ── 変わらぬおいしさ、進化する食のかたち” をキーワードに、初めてプレス向けに開催されたイベントでは、ヴィーガンメニューやフードロス削減などのサステナビリティをテーマにした料理が提供され、日本の食の業界全体での今後の課題や展望についての議論も行われました。その様子をお料理の内容とともに、詳しくご紹介していきます!

Photo=Kentaro Ohtani ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

サステナビリティに配慮したフルコース料理を堪能

アミューズの一皿は有機野菜を使用した、生地までヴィーガン仕様で作られたヴィーガンタルトに、フードロス削減のため通常は廃棄しがちなアスパラガスの下の部分を活用したホワイトアスパラガスのムース。上にはトマトとアメリカンチェリーのムースが乗せられた、夏らしい爽やかなメニューで、あまりの美味しさにこの先のコース料理への期待が高まります。

Photo=Kentaro Ohtani ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

続いては、レストランのサステナビリティアワード「FOOD MADE GOOD 未来のレシピコンテスト」の受賞作品をそれぞれ一口サイズで味わうことができるという注目の一皿。特別に用意されたスープは「小さな幸せ」という意味の「プティボヌールスープ」と名付けられ、メイン料理に使用する宮崎県産の和牛の筋や脂、端材を活用し、日本料理で出汁を取った後の昆布を活用したオリジナル調味料 “昆布パウダー”を旨味エキスとしてスープに再利用した、無駄を出さないサステナブルな一品です。

Photo=Kentaro Ohtani ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

オードブルは愛媛県の「白寿真鯛」を利用したカルパッチョ。名前の通り、他の鯛に比べて身が白いのが特徴です。切り身は分厚く、引き締まっていて細切れ野菜のシャキシャキした食感との相性がとても良い!トマトやソースとの口当たりのバランスも秀逸です。

Photo=Kentaro Ohtani ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

メイン料理は低温調理された江田和牛のサーロイン。ここでは先ほどの “昆布パウダー”が味のアクセントとして使用されていて、どんなジャンルの料理でも相性の良い調味料としての万能さを感じさせてくれました。お肉は柔らかく、下に敷かれた野菜のシートは甘くて歯応えがあり、ジューシーなお肉のまろやかさにぴったりです。周りに添えられたお野菜も有機野菜を使用し、その味と見た目の華やかさでお皿を一層引き立ててくれます。

Photo=Kentaro Ohtani ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

最後のデザートはとうもろこしをテーマにしたユニークな一品。考案したのは安里シェフパティシエです。とうもろこしの芯や皮から煮だした出汁や香りをピューレやムースに使用していて、ムースの中心にはジュニパーベリーのアイス。周りにグレープフルーツのソースやキャラメリゼしたポップコーンにとうもろこしのヒゲまで添えられ、多彩な味と食感が楽しめます。

Photo=Kentaro Ohtani ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

お食事を楽しみつつも、各メニューを担当したシェフより食材ひとつひとつにおける生産者の取り組みや、メニュー開発の背景にあるストーリーなどが紹介されるのも見どころのひとつ。オードブルのお魚料理ではテクノロジーを活用した「白寿真鯛」の養殖に関する事柄、メインディッシュの「江田和牛」に関する循環型農業とその生産事例について、そして国際的な評価基準である「FOOD MADE GOOD スタンダード」の導入によるホテル内の意識改革についても、曽我部総料理長よりお話がありました。

日本の食産業が抱える課題と世界の潮流

今、日本の漁業は、地球温暖化による海水温の上昇や水産資源の乱獲、人口減少に伴う担い手不足など、多くの問題に直面していて、海の砂漠化や漁獲量の減少も深刻化しています。一方で世界を見てみると、水産資源を保護しながら漁獲量を維持する取り組みは進んでおり、例えばノルウェーではテクノロジーを活用した先進的な漁業を実践することに加え、一般市民でも10キロ以上の魚を釣った場合には政府への申請を義務付けるなどの厳格な資源管理規制も行っているのだそうです。

左から、日本サステイナブル・レストラン協会 下田屋毅 代表理事、曽我部俊典 総料理長、杉浦仁シェフ Photo=Kentaro Ohtani ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

ザ・キャピトルホテル 東急ではそうした漁業における課題を見据え、今回のイベントでは日本国内でもテクノロジーを駆使した次世代の養殖を手掛ける愛媛県の白寿真鯛を採用。稚魚ではなく植物由来の餌を使用することで環境への影響を抑える。そして味に関しては、赤外線を利用することでアミノ酸などの旨味成分を分析・数値化して最も美味しい個体を特定する科学的アプローチによる品質を追求するなどをして、環境配慮と美味しさを両立させたメニューを実現させているのです。江田和牛の採用に関しても同様で、化学物質を含まない循環型の飼料や天然水を使用したり、広大な敷地でアニマルウェルフェアに配慮した環境で育てるなどの取り組みを行っている和牛を選択しているのだとか。そして、そうした素材の調達はもちろんのこと、「FOOD MADE GOOD スタンダード」の導入もまた、食産業におけるサステナビリティへの取り組みの一つになります。

「FOOD MADE GOOD スタンダード」の導入

「FOOD MADE GOOD スタンダード」とは、イギリス発祥の非営利団体「サステナブル・レストラン協会(SRA)」が提唱する、外食産業のサステナビリティをグローバルに評価する基準のことで、「調達」・「社会」・「環境」の3つの柱と10の項目で構成されています。具体的に、「調達」では地産地消、持続可能な農漁業の支援、フェアトレード認証の活用、より良い肉の選択、絶滅危惧種を使用しないなど。「社会」では、従業員の尊重、健康的な食の提供、地域コミュニティへの貢献など。「環境」では、エネルギー・水の削減、食品廃棄物の削減、廃棄物管理などが挙げられます。こうした評価はパーセンテージで可視化され、総合評価が50%以上で一つ星、60%以上で二つ星、70%以上で三つ星が付与されるというもの。ザ・キャピトルホテル 東急はこの基準を導入した当初、約250項目に及ぶ基準で自己評価を行ったところ、該当する星は獲得できなかったとのこと。その背景には、従来の「安くて良いもの」を追求する方針がサステナビリティの基準とは必ずしも合致していなかったことにあったと言います。しかしその結果を受け、現場の料理人たちが奮起し取り組みを改善、加速させた結果、一年後にはオールデイダイニング「ORIGAMI」、中国料理「星ヶ岡」と日本料理「水簾(すいれん)」で合わせて六つの星を獲得することに成功します。

シェフが「ハブ」となってサステナビリティへの意識を高めていく

ひたすら安くて良いものを追求する、という意識が蔓延する限りはサステナビリティへの道はまだまだ途上であることは否めません。例えば、サステナブル推進国のトップ3に入るデンマークでは植物由来の食材のみで5万円のコース料理を提供するなど、環境配慮を高い付加価値として成立させている事例もあるのだとか。いきなりジャンプアップするのは難しくても、選択肢の中に少しずつ環境配慮型のものが増えてくれば認知も消費者の意識も徐々に高まってくるはず。シェフには生産者の想いを汲み取って、それを消費者に伝えるストーリーテラーとしての重要な役割を担っていると、一般社団法人 日本サステイナブル・レストラン協会の杉浦シェフは話します。

(左)杉浦仁志シェフ (右)曽我部俊典 総料理長 Photo=Kentaro Ohtani ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

シェフを通じて、料理の源流となる原材料や生産者のことを知り、理解することができれば他人ゴトを各々の自分ゴトに変えることができるかもしれない。食事をすることはそのための気づきの一機会でもあり、私たち消費者一人ひとりがその想いを受けとって選択の基準にしていくこともまた大切なアクションの一つになるのです。

文:神田聖ら(ethica編集部)

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