(第20話)「物と向き合うこと」【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(第20話)「物と向き合うこと」【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

日頃の物との向き合い方

先日、ドキリとすることがありました。

 

娘と一緒におもちゃのお片付けをしていたときに、少し壊れていたおもちゃを見て娘が放った一言。

 

「もうこれ、すてたらいいんちゃう?」

 

娘の口からそんな一言が出たことがショックで、とっさに答えに困りましたが、後から(あ、これ、私がいつも片付けのときに言っているセリフだ……)と気付き、猛省したのでした。

 

必要以上の物は増やさない。

広くはない家だけに、そう心に決めているとはいえ、生活しているとじわじわと物は増えてゆくので、定期的に見直しをおこなっています。

 

収納ごとに一度全部出してみて、無いと絶対に困る物や毎日使っている物はひとまず収納に戻し。

いつか使うかも……と取っておいたものの引き出しに眠らせてしまっていた物や、明らかにもう使わなくなった物は、まだ取っておくかどうか吟味して、不要だと思った物は処分したり、フリマアプリに出品したり。

そのプロセスで、「もうこれ捨てよっか」「これは要らんやろ」などなど、つぶやいたり夫と会話したりしていて、当たり前ですが、そんな大人の姿を娘はよく見ています。

 

本当の思いとしては、物とちゃんと向き合うために、増えすぎた物をいろいろな形で手放しているのだけれど、それらの行動は、娘の目には使い捨てのように「壊れた・いらない物=捨てる」という風に映っていたのかもしれません。

 

安くて便利な物は、本当に世の中にたくさんあふれていて。

SNSなどでもいろいろな情報に触れやすい今、自分の暮らしに本当に必要かどうかじっくりと考える前に、安易に手を伸ばしてしまっていることもあるなぁと感じます。

 

娘がもう少し大きくなってきたら、手放すことも含め、自分に合った物との付き合い方について一緒に考えていけたらと思います。

 

でも今は、今ここにある物を大切にする心を育みたい。

その日から、物のお手入れをする時間を意識して娘と持つようになりました。

 

木製のカトラリーやおもちゃを蜜蝋ワックスで磨く、破れた絵本をセロテープで丁寧に貼る。

汚れたタオルや服を漂白する、服の取れたボタンやほつれを縫い直す。

 

一つひとつは小さなことですが、自分の手を動かすことで、物を長く大切に使う経験を積み重ねていってほしいなぁと心から願います。

 

そのためには、まずは身近な大人が物を大切に扱う姿を見せることから。

 

娘がとっさに放った一言が、自分たちの日頃の物との向き合い方、何気ない言動を振り返る大切な機会となったのでした。

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第1話)逆張り者
独自記事 【 2025/9/5 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (序章)最初の関門
独自記事 【 2025/8/31 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...
持続可能な酪農の実現を支える明治の取り組みと、乳業の歴史
sponsored 【 2025/9/3 】 Food
乳製品やチョコレートなどの食品を取り扱うメーカーである明治(Meiji)。大ヒット商品でもある「明治おいしい牛乳」や「明治ブルガリアヨーグルト」などは冷蔵庫に常備され、マストアイテムになっている…なんて家庭も多いのでは?そんな私たちの日常生活に欠かせない明治グループは、2021 年から「健康にアイデアを」をグループスロ...
【単独取材】料理に懸け30年、永島健志シェフが語る美食哲学
独自記事 【 2025/10/9 】 Food
この取材は、かつて学校が苦手な不良少年だった、永島健志さんが、料理という表現と出会い「世界のベスト・レストラン50」で世界1位を5度獲得したスペインのレストラン「エル・ブリ」で修業し、帰国後に体験型レストラン「81」を立ち上げた貴重な経験を語って頂いたものである。
アラン・デュカス氏が登壇「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク2025」 記者発表会レポート
INFORMATION 【 2025/9/15 】 Food
今年で開催15回目となる「ダイナースクラブ フランス レストランウィーク」は、少し敷居が高いと感じてしまう人もいるフランス料理を、馴染みのない人にも楽しんでもらいたいという思いから誕生したグルメフェスティバルです。期間中(9月20日〜10月20日)は、参加しているレストランにて特別価格で、本格的なフレンチのコース料理を...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【連載】評伝小説「ボルネオ・サラリーマン」 (第2話)新天地
独自記事 【 2025/9/25 】 Work & Study
この物語は、大阪を拠点とする一企業・サラヤが20年にわたり、ボルネオという地で環境保全活動に取り組んできた軌跡を一人のサラリーマン・廣岡竜也の目線から辿った記録である。 人と地球にやさしい「ヤシノミ洗剤」を生み出したサラヤが、環境を破壊しているという誤解を受けたことが発端となり、次々と困難が立ちはだかるも、諦めない者た...

次の記事

読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第3章:食から考える豊かさ編(第1節)
(第1話)エシカルな生活や消費の意味 【寄稿連載】ビジュアルコミュニケーションから学ぶ ゲッティイメージズジャパン 遠藤由理 

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます