(第1話)エシカルな生活や消費の意味 【寄稿連載】ビジュアルコミュニケーションから学ぶ ゲッティイメージズジャパン 遠藤由理 
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(第1話)エシカルな生活や消費の意味

visualspace, 1216395589

私が所属するGetty Imagesでは、世界中のクリエーターから提供された写真、ビデオ、イラスト等のクリエイティブ素材、そしてニュース、スポーツ、エンタメ等の報道素材を取り扱っています。このような素材はストックフォトと呼ばれ、広告、TV、映画、書籍、オンラインメディアなど様々な媒体で使用されており、おそらく皆さんも、知らず知らずのうちに日々目にしている可能性が高いと言えます。それゆえGetty Imagesでは、物事がより公平に、正確に世の中に浸透していくことを促し、消費者の行動喚起につながる、ビジュアル制作を行っています。この連載では、Getty Imagesの調査に基づき、より持続可能な社会の実現に結びつくビジュアルに関して考えていきたいと思います。

Kohei_hara 1218359262

Getty Imagesにてコロナ前に行った調査によると、大部分の日本の消費者が、人間の地球の扱い方が、将来に大きな影響を与えると考える一方、具体的にどうしたら地球環境に良い生活ができるのか、「リサイクルをする」以外の具体的な対策が見出せないでいました。ところが、コロナ後に行った最新の調査によると、大部分の消費者が国の環境対策に疑問を感じ、リサイクル方法や、温室効果ガス排出量削減に関して考え直し、より環境に配慮した持続可能なライフスタイルに向けて個人的な努力をしていると回答しました。

また、日本の消費者の72%が、製品やサービスが環境に直接関係していない場合でも、企業はすべての広告やコミュニケーションにおいて環境に配慮すべきだと回答しています。このことから、個人の生活だけでなく、企業やブランドに対しても、持続可能な姿勢を求めていることがよくわかります。それに加え、サプライチェーンのあらゆる段階で人権の尊重や適切な労働慣行を行っているかという点を重視しています。また、商品の購入意思決定時に、総合的に持続可能なアプローチをしている企業に4倍の金額を支払う可能性があると、回答をしている消費者もいます。したがって、持続可能性を正確に取り入れたビジュアルは、私たち消費者の行動喚起に大きな影響を与えると言えます。

Nora Carol Photography, 1322964695

しかしながら、現在、日本の多くの企業やブランドが持続可能性を示すために使用しているビジュアルは、それを正確に捉えているとは言えません。例えば、2020年にGetty Images のトップセラーには、このビジュアルのように、植物を持つ手、煙突から出る煙、シロクマなどといった、お決まりの表現が多く含まれていました。このようなビジュアルを見る際、私たちは環境問題を連想はしますが、これらは人間と関係のない、抽象的なものと映し出され、行動喚起にはつながらないと言えます。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書によると、人間が地球を温暖化させてきたことに疑う余地はなく、向こう数十年の間に二酸化炭素及びその他の温室効果ガスの排出が大幅に減少しない限り、21世紀中に、地球は摂氏1.5度〜2度以上温暖化する、どの国も、対応を遅らせる余裕も、言い訳をしている余裕もない、と警告しています。私たち消費者はさらに持続可能に配慮した生活を送ることが必要不可欠になります。さて、私たちはどのようにしてビジュアルを見る力を鍛え、より環境や社会に配慮した行動につなげることができるのでしょうか。Getty Images において、自然環境の維持やそれに配慮した行動に関するビジュアルを制作する側、そして利用する側、双方の為に作ったチェックポイントをご紹介します。

Carlina Teteris, 1211694479

・持続可能を促すような身近な努力がビジュアル化されているでしょうか?

老若男女を問わずすべての人が、エコバッグやマイボトルを使ったり、使い捨てプラスチック製品を使わないなどの努力が描かれていますか?この小さな努力の積み重ねで地球環境が守れるはず。ちなみに、このビジュアルはほぼゴミを出さない、ゼロウェイストのピクニックになっています。

JGalione, 1327099918

・環境に変化をもたらす解決策がビジュアル化されているでしょうか?

近頃、少しずつですが、バルクショップと言われる、自分で袋や容器を持参して日用品を買えるお店が増え始めました。代替肉の開発、水耕栽培、電力や水力を節約するエコフレンドリーなデザインのオフィス、再生可能エネルギーを活用する生産の現場などを実際に消費者が目にすることにより、行動喚起につながると言えます。

visualspace, 1307714074

・持続可能な社会の実現に向けた最新テクノロジーの普及がビジュアル化されているでしょうか?

例えば、eヘルス(情報テクノロジーを有効活用したヘルスケアサービス)は、患者さんの大きな支えになると同時に、医療従事者の負担をも軽減し、温室効果ガス排出量削減にもつながると言われています。太陽光発電、風力発電、電気自動車など、新しいゼロエミッションに関するイノベーションが実生活にどのように溶け込んでいるか、誰もがその使用方法やメリットを簡単に想像できるように描写されていることも大切です。

フェイクニュースや沢山のコンテンツが溢れかえる現代、人間は、日々目にするビジュアルから知らず知らずのうちに影響を受け、グリーンウォッシュ (見せかけのエコ)に惑わされているかもしれません。地球環境をさらに悪化させないためにも、サステナブル(持続可能性)そしてエシカル(倫理的)な生活や消費の意味を、一人ひとりがビジュアルを通して理解する事が重要です。

寄稿連載「ビジュアルコミュニケーションから学ぶ」全6回にわたってお届けしてまいります。これからどうぞお楽しみに。

【連載】を読む>>>

遠藤由理

ゲッティイメージズジャパン株式会社 クリエイティブインサイト マネージャー

10代後半からアメリカ、スペイン、チェコ、韓国で過ごす。映画制作とデジタルメディアデザインに重点を置いたビジュアルメディアの学歴を持ち、国際映画や日本映画のプロモーション、セールス、買収、配給などの仕事に従事。 2016年からはゲッティイメージズ、ならびに、iStockのクリエイティブチームのメンバーとして、世界中のクリエイティブプロフェッショナルによる利用データ分析と外部データや事例を調査し、来るニーズの見識を基にCreative Insights(広告ビジュアルにおける動向調査レポート)を発信。意欲的な写真家、ビデオグラファー、イラストレーターをサポートし、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
【エシカ独占インタビュー】宇賀なつみ 初エッセイ本『じゆうがたび』刊行記念
独自記事 【 2023/6/19 】 Work & Study
先月、長らく続いていた新型コロナウイルス感染症が5類感染症の位置付けとなったことで、ようやくマスクをはずして外出や旅行に繰り出す人々が増えてきました。旅行や観光業界の中では、近年世界中で注目されているものに「ウェルネスツーリズム」(※)というものがあります。そのトレンドを大々的にピックアップしたイベント、「ウェルネスツ...
インターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン2 第二話の見どころをご紹介
独自記事 【 2022/12/5 】 Work & Study
11月7日(月)より配信がスタートした、SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組『家族で学ぶSDGs』シーズン2!「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演して、身近な話題や気づきから、持続可能なアクションやサステナブルについて考えを深めます。今回は、12月5...
SDGsやエシカルについて学べるインターネット教養番組のシーズン2がスタート!
独自記事 【 2022/11/7 】 Work & Study
持続可能な開発目標(SDGs)が国連サミットで採択された2015年から7年。サステナブルやSDGsといった価値観は耳に馴染んできたものの、まだまだ知らないことがたくさんありそうな奥の深い世界です。エシカでは、「森キミ」ことモデルの森貴美子さんと、環境系エンターテイナーのWoWキツネザルさんが共演するSDGsやエシカルに...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
【あむんが行く!第1話】 TBSのSDGsプロジェクト!「ミツバチ教室」で蜜ろうキャンドルづくりを体験
独自記事 【 2022/3/7 】 Work & Study
ethica編集部員の娘(5歳)が、様々なエシカルな体験を繰り広げていく、新企画「あむんが行く!」 “あむん”という名前の由来は、紀元前1000年頃より、二千年の長きにわたって栄えたマヤ文明のマヤ語からきています。意味は“森の神”。自然と親和性のある名前を持つあむんが、今後様々なエシカルな体験を繰り広げていきます。娘の...
“自分にも環境にもやさしい”インナーウェア「WACOAL ナチュレクチュール」
INFORMATION 【 2022/2/21 】 Fashion
肌に直接身につけるインナーウェアは着心地が大事。加えて、環境に寄り添ったアイテムであれば、なおさら手に取りたくなります。「Wacoal ナチュレクチュール」は“自分にも環境にもやさしい”を目指したインナーウェアラインです。肌ざわりの良さに加えて、環境や社会に配慮した製品へのこだわりが光ります。今回はそんなアイテムの魅力...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
東京マラソンと東レがつくる、新しい未来
独自記事 【 2022/5/2 】 Fashion
2022年3月6日(日)に開催された東京マラソン2021では、サステナブルな取り組みが展開されました。なかでも注目を集めたのが、東レ株式会社(以下、東レ)によるアップサイクルのプロジェクトです。東レのブランド「&+®」の試みとして、大会で使用されたペットボトルを2年後のボランティアウェアにアップサイクルするとい...

次の記事

(第20話)「物と向き合うこと」【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
(第3話)オーガニックエステとコスメの学校を開校 [連載企画]植物調合士・オーガニックビューティセラピスト 坂田まことさん

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます