読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第1章:ネパールと人々のつながり編(第4節) 「読者」と「ethica編集部」の交流の場(オンラインオフ会)連動企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第1章:ネパールと人々のつながり編(第4節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第一章は「ネパールと人々のつながり」と題して、全四節にわたりお送りします。ネパールでの人とのつながりをヒントに、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第1章 ネパールと人々のつながり

第4節 不思議な学校

私は中学校、高校が苦手でした。勉強が嫌いだったというわけではないのですが、どうも学校特有の上下関係文化が私には合わなかったのです。

先輩にはあまり可愛がられず、後輩からは話しかけられない。先輩や後輩と遊びに行く友人を見て、陰で心底羨ましがっていました。

ただ、これは何も私だけの問題ではないような気がします。なぜなら、日本の学校制度は異なる学年間の交流を全く想定していないからです。もちろん、「部活動」はありますが、それはあくまで課外活動であって、また学年間交流を目的とした活動でもありません。

学校特有の厳しい上下関係文化は、むしろこの交流の乏しさから来ているのではないかとも思えてきます。つまり、知らない相手とコミュニケーションを取るのには、ある種の鋳型が必要で、それが「否応なしの尊敬」や「敬語」なのではないか、ということです。

ところが私がネパールの学校で見たものはこれとは全く違うものでした。私はネパールに少なからず学校の、そしてウェルビーイングの未来を見た気がします。

ネパール第二の都市、ポカラは観光客に人気のスポットです。湖を中心にしたこのリゾート地には、ネパール大学ランキングで常に上位にランクインするポカラ大学もあります。

そこで私が訪れたのが、全寮制の小中学校です。この学校は地方の村を中心に優秀な生徒が集まる学校で、英語での教育が活発です。

到着するなり、教室いっぱいの生徒たちが出迎え、伝統的な踊りや歌を披露してくれました。私たちは日本文化の紹介や、「幸せ」に関するアクティビティ、ディベートを行いました。

給食も子供たちと一緒にごちそうになり、学校の雰囲気もつかめてきた頃、私はとあることに気付きました。年齢層がバラバラの子供たちが仲良く遊んでいるのです。年長の子が年少の子の髪を結ってあげたり、あるいは年少の子が年長の子をからかって遊んだりしていました。

「学校」と言えば、同じ学年の人としか関わらないものだとばかり考えていた私は大変驚き、近くの職員の方に「学年は分かれていないのですか?」と聞きました。すると、学年は分かれているが、年長者が年少者の面倒を見るように教えている、とのこと。

なるほど、この学校は子供たちが子供たちだけで小さな社会を形成して、学校生活を営んでいるということでした。年少者が騒げば、年長者が注意する。それは日本のような鋳型の上下関係ではなく、小さな社会での社会関係なのです。

集団内での多様性は、それぞれが集団内での自身の立ち位置を把握し、お互いの立ち位置を尊重するということを根底にしています。私がネパールの学校で見た光景は正に、子供たち自身が自分の役割と他者の役割をきちんと認識している状態です。

こうした多様性は、社会それ自身が自律的に回っていく、つまり持続可能な社会の在り方を可能にします。もちろん、ウェルビーイングもそうした持続性と不可分に結びついていることは言うまでもないでしょう。

世代間の交流、異なる社会階層間の交流なども、子供たちの交流の延長にあるでしょう。そのように、私たちが「ヨコ」だけでなく「タテ」の繋がりも積極的に志向していくことで、社会全体のウェルビーイングも向上するのではないでしょうか。

これを読んだあなたが今日から少しだけ「タテ」の交流を行えば、社会はより流動的に、そして多様性を増していくかもしれません。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話

題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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