読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第5章:フリータイムの哲学編(第2節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第5章:フリータイムの哲学編(第2節)

ホーチミン市内の様子

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。 

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第5章は「フリータイムの哲学」と題して、全5節にわたりお送りします。東南アジア各国それぞれにフリータイムをめぐる哲学があります。それらを基に、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第5章 フリータイムの哲学

第2節 罰ゲーム

イカゲームの全世界的な流行を感じながら、最近思ったことがあります。イカゲームと大して近い話でもないのですが、最近「罰ゲーム」していないな、と。あの生死をかけた心理戦から、罰ゲームのことを思い出すなんて何ともまぬけだとは思うのですが、罰ゲームについて真剣に考えてみたら面白いかもしれない!と思って、今これを書いています。

確かに、罰ゲームなんてのは大人数が集まってふざけている時ぐらいしかやらないもので、飲み会や歓迎会・送迎会がない昨今はなかなかやる機会がないのも当たり前です。個人的な話をすれば、私は罰ゲームがめっぽう嫌いで(好きな人なんていないか)、いつも生死をかけるつもりで勝負に挑んでいます。そういう意味ではイカゲームと遠からずな関係かもしれません。

ただ一方では嫌いではないタイプの罰ゲームもあって、それは「秘密」を言うタイプのものです。もちろんそれは誰かを傷つけ得る秘密ではなくて、自分に関するとてもパーソナルな秘密です。しかもそれによって(多少自分が恥をかくことはあっても)、その場にいる人との距離が近づくことができるものです。そして、私は不思議とそういう罰ゲームをベトナムで何度も体験しています。

罰ゲームを受ける様子

これは完全に個人的な印象ですし、全員がそうと言いたいわけでもないのですが、ベトナムの若者はとにかく「ノリ」の良い遊び方が好きです。カードゲームで静かな心理戦を繰り広げるというよりかは、リズムゲームで皆お祭り騒ぎするようなことが多いです。そして、そういったゲームには必ずと言っていいほど「罰ゲーム」が付き物で、彼らは純粋な少年少女の目でバカ騒ぎします。

ある時(あれはもう深夜の2時近くだったと記憶していますが)、ベトナムの学生数人と簡単なリズムゲームをやっていました。進行が早く、数分に一回は誰かが罰ゲームを受ける状況だったのですが、その時の罰ゲームが先に言った「自分の秘密を一つずつ言っていく」というものでした。最初はソフトな、ほとんど秘密と言えないようなものから始まり、回を重ねるにつれてよりディープで重いものになっていきます。後半にはいくつもの爆弾が投下され、私も何度か爆弾を投下しましたが、その度に私は少しずつ気持ちが明るくなっていく感覚がしていました。というのも、自己開示というのは信頼を得るとっておきの手段だからです。どんなに見た目が怖い土佐犬でもお腹を見せられたら撫でたくなるのと同じように、自分の秘密や弱みを見せることは相手に「私はあなたを信頼している」というメッセージを送り、それを受け取った他者はそれに応えたいと思うようになります。わたしたちが行っていた罰ゲームはまさにこれを実践していたわけで、お互いの秘密を少しずつ共有していくことで、わたしたちはより密接な関係を築いていたわけです。

もちろんくだらない罰ゲームも

もちろん自己開示にはリスクが伴います。お腹を見せたところで相手にそこを殴られれば致命傷になってしまいます。ところが罰ゲームの中で行われる自己開示というには実に双方向的です。ゲームの得意不得意はあるかもしれませんが、それなりに誰もが自分も自己開示しなくてはならない可能性があります。「私も見せるからあなたも見せてね」あるいは「あなたが見せてくれたから私も見せるね」ということが起きやすいのが、罰ゲームとして自己開示なのです。

コロナ禍でなかなか集まれない時期ではありますが、罰ゲームをただの「恥かかせ」で終わらせないベトナムの罰ゲーム文化を真似して誰かと少しだけ近づいてみると、寒い冬を乗り越えられるかもしれません。今年ももう1か月ほどとなりました。みなさんも12月はできるだけたくさんのウェルビーイングに触れて、幸福な状態で2021年を締めくくってくださいね。では。

ベトナム学生と記念写真

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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