日本の美意識を世界に伝えたい!江戸小紋の染職人・廣瀬雄一さん【伝統継承Innovator】
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
日本の美意識を世界に伝えたい!江戸小紋の染職人・廣瀬雄一さん【伝統継承Innovator】

【伝統継承Innovator】シリーズでは、伝統工芸や伝統芸能を現代に生きる新しい感覚で継承しようとチャレンジしている方々を紹介します。

江戸小紋と呼ばれる着物の柄を知っていますか? 遠くから見ると無地に見えるほど細かい模様が入った柄で、この模様を染めるには非常に高度な技術が必要になります。この高度な染め物の技術を継承し、江戸小紋に込められた美意識を世界に広げていくために、ストールブランド「comment?(コモン)」を立ち上げた、廣瀬染工場四代目の廣瀬雄一さんにお話を伺いました。

江戸小紋の一例

江戸小紋を作るために必要な、高度な技術

小紋は、白い生地の上に型紙をのせ、ヘラで糊を置いていくことで染める部分と染めない部分を分けて柄をつけます。糊がムラになったり柄の継ぎ目がわかってしまったりしないようにするためには、細かい配慮と技術が必要です。

江戸小紋と呼ばれる柄は、小紋のなかでも特に柄が細かく、柄が1ミリ程度のものも。非常に細かい柄のため、よく見てやっと柄が見えてくるほどの細かさです。

両面染め。片面が貝の模様。もう片面は波模様。

「さりげなさ」を極めた日本の美意識を世界に発信していきたい

その「近づいてよくよく見たら柄があった」というさりげなさが、日本人の美意識を反映しているのではないかと、廣瀬さんは言います。

「洋服に慣れてしまうと、洋風のものばかりがおしゃれであるように思いがちです。でも、日本にはもともと非常におしゃれな文化があったんです。江戸小紋のようにさりげない柄ができたのは、おしゃれが贅沢として規制されていたなかで、さりげなくおしゃれを楽しむためです。

この『さりげなさ』を英語で伝えるのは、非常に難しいのです。おそらく、そういった感覚がないのではないでしょうか。でも、江戸小紋の技術では『さりげなさ』のためにものすごい情熱をつぎ込んで、手間ひまをかけてきました。

例えば『両面染め』と呼ばれる染め方。非常に薄い布地の両面に別の色、別の柄を染めるのです。着物は裏地を付けて仕立てることも多く、裏側はほとんど見えないにも関わらず、薄い布の両面に別の色、柄を染めるのです。これには高い技術が必要です。こういったちらっと見えた時にさりげなくおしゃれ心が伝わるようにに、職人は技術を磨いていたのです。こういった美意識を世界に伝えていきたいと思います。」(廣瀬さん)

「本物」を気軽に身にまとうためのストールブランド「comment?」

しかし、こういった美意識に裏打ちされた江戸小紋も、日本人の生活様式が変わり、着物をあまり着なくなれば廃れてしまいます。そこで、廣瀬さんはその技術をストールに転用することを考え、ストールブランド「comment?」を立ち上げ。400年の技術を持つ江戸小紋を気軽に身にまとえるストールを制作しています。

「江戸小紋をテキスタイルとして世界にもっと認識してほしいと思っています。そして、自分たちの技術を知ってほしい。イタリアなどには、小さな町工場が世界で勝負できるブランドがあります。『comment?』もそうなっていければ、と考えています。(廣瀬さん)」

ストールのボリューム感とアレンジのしやすさから、ストール幅は1m。それだけの幅の江戸小紋を染めることができるのは、廣瀬染工場だけと言われるほど、高い技術が必要なのだとか。

また、正絹を身につけるという着物の良さを実感するために、「Comment?」のストールには廣瀬さんがこだわって見つけてきた絹を利用したものもあります。

「着物を着るということは、全身にシルク100%の『本物』を身につけるということなんですよね。こういった『本物を身につける感覚』も、なくしてはならない大切なものだと思うんです。(廣瀬さん)」

イシダイの柄が入ったストール

伝統的な江戸小紋には、現在にも通用するような斬新な柄が存在します。例えばイシダイの柄。ぱっと見、幾何学模様に見えますが、よく見ると魚の形が浮かび上がります。

また廣瀬染工場では、江戸小紋の代表的な鮫模様の上に、別の模様を乗せる「二重鮫」という技法を昔から使っており、その技法も「comment?」のストールに使用。さらに、伝統的な小紋の柄を少し変化させて、猫柄やニンジンの柄など新しい遊び心のある柄も作って国内外から高い評価を受けています。

ウィンドサーフィン中の廣瀬さん

サーフィンで知った「世界に出て行くことの大切さ」

廣瀬さんが、このように世界を意識して生活するようになったのは、廣瀬さんがサーフィンをやっていたことに理由があるそうです。

廣瀬さんは10歳から始めたウインドサーフィンで才能を発揮。シドニーオリンピックの強化選手として活躍するほどの腕前でした。そしてウインドサーフィンで世界のサーファーと競ううちに、「世界の中の自分というものを意識し始めた」と廣瀬さんは言います。

ウィンドサーフィンで世界を目指すか、それとも江戸小紋の染め職人として世界を目指すか。悩んだ末に、廣瀬さんが職人になる道を選んだのは「職人の修業を始めるのは早ければ早いほど良い。大学卒業くらいがタイムリミットである」という先代の話と、子ども時代からの職人への憧れでした。

そして、今、廣瀬さんはNY、パリ、ミラノなどに積極的に出かけて、江戸小紋の魅力を発信し続けています。

古くからの江戸小紋のファンにがっかりされないような形で、伝統的な江戸小紋を昔ながらの方法で新しい色を使って作りつつ、「comment?」で世界を見据えて江戸小紋を広めていく。そんな精力的な廣瀬さんの取り組みに、今後も目が離せません。

<「Comment?」ストールについてもっと知る>
「Comment?」紹介ページ http://gallerynippon.shop-pro.jp/?mode=grp&gid=367570
取材協力、写真提供=廣瀬染工場 廣瀬雄一さん

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)〜
http://www.ethica.jp

FelixSayaka

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
まずは自分の“半径5m”から愛を広げていく。 エシカルウェディング経験者・沼田暁さんが考える社会貢献のかたち (前編)
独自記事 【 2020/3/2 】 Fashion
エシカルや社会貢献活動に関心があり、何か自分にできることをしたい。でも、いざ何かしようとしても「自分が役に立てることなんてあるのだろうか」と躊躇ってしまう人が多いのかもしれません。筆者である私も、そんな悩みが尽きない一人です。 悩める筆者がある“ウェディングドレス”をきっかけに出会ったのが、今回の主人公・沼田 暁(ぬま...
トップブランドの古着を藍染で蘇らせる”サスティナブル・ブランド” Indigo Love Ecoプロジェクト「BOKUWAKUMA」
独自記事 【 2020/2/10 】 Fashion
鮮やかでありながら深みもあり、様々に表情を変える藍色。 実はこれらの衣服は、本当なら捨てられてしまうかもしれなかった古着です。 ご紹介するのはシャネルやギャルソンの古着を藍染でリメイクする沖縄拠点のブランド「BOKUWAKUMA」。藍で染めることによって新たな命が吹き込まれより愛されるアイテムに蘇らせることで、ファッシ...
【ethica編集長対談】「ECOALF」創業者 ハビエル・ゴジェネーチェ氏
独自記事 【 2019/12/23 】 Fashion
スペインのファッションブランド「ECOALF」の日本第1号店が2020年3月、東京・神宮前にオープンすることになり、先日、都内でその発表会が行われました。 「ECOALF」は世界中で脱プラスチックの動きが広がる中、環境を守りながらペットボトルや漁業用の網などといった海洋プラスチックごみを再生して作った機能的な衣類や靴、...
ファッションデザイナー石川俊介さん『背景が見えにくいファッション産業への疑問』
独自記事 【 2019/12/16 】 Fashion
エシカルなコーヒーの調達率 99 % を達成したことにちなみ、9月9日に全国のスターバックス店舗で2015年から行われている「99 キャンペーン」。特に、同キャンペーンが初めて実施された、中目黒の「スターバックス リザーブ®️ロースタリー 東京」では、バリスタによるコーヒーの生産過程についてのマイクパフォーマンスが行わ...
SDGsは「自分の暮らしの中」で向き合う。
sponsored 【 2019/11/25 】 Home
気候変動やグローバル化で深刻化する問題に対応するため、2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標」(SDGs)。貧困や格差の解消、地球環境の保全などをめざし、全ての国連加盟国が2030年までに取り組む行動計画だ。企業は単なる社会貢献ではなく、本業を通じた活動が求められている。ボルネオ島の生物多様性保全やアフリカ・...
「外」からの視点がとらえた、日本の美しさ 【国木田彩良・前編】
独自記事 【 2018/10/4 】 Art & Culture
明治時代の小説家・ジャーナリストの国木田独歩の玄孫であり、現在、モデルとして活躍中の国木田彩良さん。このたび谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』を原案とする短編映画『IN-EI RAISAN(陰翳礼讃)』(高木マレイ監督)の茶人役で、女優に初挑戦しました。10月5日の映画公開を控え、2018年6月に建仁寺塔頭 両足院にて行われた映...
日本の良さを改めて実感!?  豪華舞台を楽しめる「日本博特別公演」の放映が決定!
独自記事 【 2020/6/15 】 Art & Culture
『ethica(エシカ)』6月号のテーマは、「エシカル世代」です。 新型コロナの影響で、ライブでエンターテイメントを楽しむ機会はほとんどなくなっていました。ようやく再開への道筋は見えてきたものの、実際にリアルな場に出かけてイベントなどを楽しめるのは、もう少し先になりそうです。そんな中、「エシカル世代」にも人気の2.5次...
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
「エシカルファッションってなに?」 ピープルツリーの場合
独自記事 【 2019/9/20 】 Fashion
日本とイギリスで展開するフェアトレード専門ブランド「ピープルツリー」。人にも地球にも良いライフスタイルを提唱するエシカルファッションのパイオニアともいえるその活動は、ethica編集部でも創刊以来、大先輩としてその歩みに倣って参りました。 エシカルな気づきをテーマに情報発信を続けてきた私たちethicaは今年6周年を迎...
美しき理系アーティスト、スプツニ子!さんに伺いました!(前編)「質の高い教育をみんなに」
独自記事 【 2019/9/28 】 Art & Culture
9月22日(日)〜29日(日)のSDGs週間(*)にフェイスブック ジャパンが開催している「Facebook Fundraisers for SDGs」で、「質の高い教育をみんなに(SDGsの目標4)」を達成するため、アメリカのNPO団体「Girls Who Code」への募金キャンペーンを立ち上げたスプツニ子!さんに...
一杯のコーヒーから広がる「 99 」への想い 。
独自記事 【 2019/11/12 】 Food
エシカルなコーヒー豆の購買率 99 % を達成したことにちなみ、毎年9月9日に全国のスターバックス店舗で行われる「 99 キャンペーン」 キャンペーン開始から5年目となる今年、中目黒の「スターバックス リザーブ ® ロースタリー 東京 」ではじめての「 99 キャンペーン」イベントが実施されました。 前編につづき「 9...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
The Breakthrough Company GO クリエイティブディレクター 砥川直大さん(前編)
独自記事 【 2020/4/20 】 Fashion
世界中で脱プラスチックの動きが広がる中、ペットボトルや魚網などの海洋プラスチックごみを再生して作った衣類や靴、かばんなどを次々に発表。現在ヨーロッパを中心に大きな注目を集めているスペイン生まれのファッションブランドが「ECOALF」です。この3月、日本第1号店が東京・渋谷にオープンしましたが、開店にあたり「地球の資源を...
蜷川実花×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/7/13 】 Art & Culture
渋谷パルコのPARCO MUSEUM TOKYOで新作個展「東京 TOKYO/MIKA NINAGAWA」を開催した写真家で映画監督の蜷川実花さん。蜷川さんの新作写真集「東京 TOKYO」の刊行を記念して行われたもので、会場には「東京に生まれ育ち、この街しか住んだことがない」という蜷川さんが「大事なものすぎてなんだか手...

次の記事

女の子よ、コロナ禍の今だからこそ声をあげよう!
DIYで古い部屋をオシャレに楽しく! 3つの簡単アイデア

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます